title banner

布袋田沙織のパワートレーニングで速くなる!<3>パワートレーニングに役立つオンライン指導 シンプルで適切なメニューを実施

  • 一覧

 自転車を漕ぐ力を測定するパワーメーター「パワータップ」を活用し始めて、早いもので3カ月が経ちました。この時期はいろいろな場所でレースやイベントがあり、大忙しの人も多いのではないでしょうか。私もマウンテンバイク(MTB)の国内最高レベルのシリーズ戦「ジャパンシリーズ」をはじめ、あちこちへ飛び回っています。

Jシリーズ富士見パノラマ大会。大型台風が来ているということで当日の朝まで開催されるか心配でしたが、5周回から4周回に変更になって、無事に開催されました。スタート直後に他の選手と接触して落車。その際に外れたチェーンを直して再スタート! しかしすでにお一人様…スタートから我慢のレースになりましたJシリーズ富士見パノラマ大会。大型台風が来ているということで当日の朝まで開催されるか心配でしたが、5周回から4周回に変更になって、無事に開催されました。スタート直後に他の選手と接触して落車。その際に外れたチェーンを直して再スタート! しかしすでにお一人様…スタートから我慢のレースになりました

 長距離移動が多いので、目的地に着いたら脚と体をほぐすためにのんびりライドに出掛けるのも、大切なレース準備。その後はコース試走、レース本番、そしてウォームダウンと運動が続きますが、実はそのすべてでパワーメーターを活用しています。

「推進力」を測るパワータップ

 歪みゲージによって出力を測定するパワーメーターには、いくつかの計測方式がありますが、大きく分けると後輪ハブで計測する方式(パワータップ)と、フロントギア周りで計測する方式(チェーンリング式やペダル式など)の2種類になります。

言うまでもなく、自転車が前に進むのは後輪が回転するから。『推進力』を一番近くで計測するパワータップの数値を向上させないことには、速く走ることはできません言うまでもなく、自転車が前に進むのは後輪が回転するから。『推進力』を一番近くで計測するパワータップの数値を向上させないことには、速く走ることはできません

 前回のコラムで、パワーデータを計測する精度の大切さについて書きましたが、それには、自転車のどの部分でパワーを計測するかも重要なのです。「どこのって…ペダルを踏む力でしょ?」 いえ、厳密に言うとフロントギア周りで計測するのはペダルを踏むパワー。一方、後輪ハブで計測するのは、自転車の『推進力』なのです。

 ペダルにどれだけ力を込めても、それがホイールへ、そして路面へと伝わらなければ自転車は進みませんよね。でも粗悪な安物や、メンテナンスが不十分で駆動損失の大きな自転車に乗っていると、ライダーがせっかく出したパワーが後輪に到達するまでの過程で1W、また1W…とロスされていくんです。ペダリングフォームだってそう。大きなパワーを出せるフォームと、効率よくパワーを後輪に伝えて自転車を前に進めるフォームとは似て非なるもの。

 カギはホイール(タイヤ)が地面を蹴る力、『推進力』。そしてそれを最も近くで計測しているのが後輪ハブ、つまりパワータップの方式なのです。パワータップが大きな出力を検知する漕ぎ方ができてこそ、自転車はより速く、より遠くへ進むということです。

ハデな落車が不可避なオフロード競技では繊細なパワーメーターだと破損が心配…。パワータップならたとえフレームやホイールが壊れても、パワータップまで壊れることはほぼないでしょうハデな落車が不可避なオフロード競技では繊細なパワーメーターだと破損が心配…。パワータップならたとえフレームやホイールが壊れても、パワータップまで壊れることはほぼないでしょう

 あと、特にMTBクロカン競技でパワータップがいいと思うのは、周囲にスポークやリム、バイクフレームがあり、万一(私の場合は「百一」くらいですが)クラッシュしても一番壊れにくいところに鎮座しているということですね。実はペダル式やクランク式も含めてパワーメーターを物色していた時、トレイルでペダルやクランクを頻繁に木の根っこや岩にぶつけてしまう自分のスキルレベルを直視し、あまり気を使わないパワータップにしたのでした。

Jシリーズ富士見パノラマ大会。スタートでは大きく出遅れましたが、序盤から飛ばしすぎてしまういつもの展開にならないよう、独りでスタートしたことも前向きにとらえてペース配分に気を使いながら進みます。登りセクションでは必ずチェーンが落ちてしまい、ここぞというところで押して上がります。それでも、気持ちを切らさないように集中Jシリーズ富士見パノラマ大会。スタートでは大きく出遅れましたが、序盤から飛ばしすぎてしまういつもの展開にならないよう、独りでスタートしたことも前向きにとらえてペース配分に気を使いながら進みます。登りセクションでは必ずチェーンが落ちてしまい、ここぞというところで押して上がります。それでも、気持ちを切らさないように集中

どこにいてもオンラインでコーチが指導

レース歴25年の中田コーチ(左)とハンター・アレン氏。中田さんはPCGで勤務する傍ら、現地のレースにも積極的に参加されていますレース歴25年の中田コーチ(左)とハンター・アレン氏。中田さんはPCGで勤務する傍ら、現地のレースにも積極的に参加されています

 FTPテスト結果を基にメニューを組んで行うパワートレーニング。私は、アメリカにオフィスを構えながら、インターネットを通じて世界中のサイクリストにコーチングを提供しているPeaks Coaching Group(PCG)の指導を受けて取り組んでいます。

 PCGはは自転車トレーニングの第一人者、ハンター・アレン氏が始めた会社です。アレン氏が執筆した『パワー・トレーニング・バイブル』は日本を始め、世界各国の言語に翻訳され、その名の通り、競技志向のサイクリストにとって必読の書になっています(もちろん私も熟読中!)。

 PCG社員で日本人コーチの中田さんがデータ分析からメニュー作成、Skypeを利用してのカウンセリングまですべて面倒を見てくれるので、安心して練習に集中することができます。

TrainingPeaks(トレーニングピークス)でコーチとデータを共有。カレンダーには予定のほか、練習後の感想や疑問点なども入力でき、単なるデータ交換だけでない、コーチとの密接なコミュニケーションツールになりますTrainingPeaks(トレーニングピークス)でコーチとデータを共有。カレンダーには予定のほか、練習後の感想や疑問点なども入力でき、単なるデータ交換だけでない、コーチとの密接なコミュニケーションツールになります

 練習データはオンラインのデータ管理アプリ『TrainingPeaks(TP)』にアップロードし、中田コーチと共有します。そして中田コーチも練習メニューをTPにアップしてくれます。これはタイムトライアルジャパンを翌週末に控えた際の実際のトレーニングメニューです。なかなかビッシリと指示が書かれていますね(汗)。

 実際には仕事などで練習の時間が取れない日もままあるのですが、データを提出する以上、練習をやったかどうかはおろか、手を抜いた練習になっていないかどうか(指定された強度を維持できたか)まで中田コーチに筒抜け…。ひとりで走っていても、常に見られている緊張感を持って練習が行えます。

タイムトライアルジャパンを間近に控えた頃のトレーニングメニュー。この通りにこなせない時もありますが、なぜできなかったのかを正直に伝え、本番までにトレーニングの遅れを最小限にとどめるようメニューを調整してもらったりしますタイムトライアルジャパンを間近に控えた頃のトレーニングメニュー。この通りにこなせない時もありますが、なぜできなかったのかを正直に伝え、本番までにトレーニングの遅れを最小限にとどめるようメニューを調整してもらったりします

 パワートレーニングは基本的には、伸ばしたい能力(スプリント力だったり持久力だったり)をピンポイントで繰り返し鍛える、インターバルトレーニングです。上のメニューを見ると、練習強度(どれくらいの力でペダルを回せばいいか)は「ゾーン」で指定されていますね。それではゾーンとは何かを見ていきましょう。

トレーニング以外にも便利な「ゾーン」

パワーを7段階に分けたゾーン表。レースでよく必要とされるレベル3以上だけでなく、強度の低いレベル1や2で漕ぐことも大切なトレーニングになりますパワーを7段階に分けたゾーン表。レースでよく必要とされるレベル3以上だけでなく、強度の低いレベル1や2で漕ぐことも大切なトレーニングになります

 ゾーン表は、トレーニングの強度をパワーに基づいて7段階で表したもので、これら各ゾーン内でインターバルトレーニングを行います。これがいわゆる「ゾーントレーニング」というものです。たとえば1時間で走れる距離を伸ばしたいなら、LTゾーン(表の黄色の行)で指定されている157W前後で走ることで、60分間持続できる能力を高めることができるのです。

 各ゾーンのワット数を決定するのはFTP値です。このゾーン表は私の現在のFTP値をベースにゾーン分けされているので、この表に沿ったパワーでトレーニングを積み、1カ月後に能力向上の度合いを確認するために、再度FTPテストを行います。来月もらうゾーン表では指定出力が上がっているようにしたい! これもモチベーションになります。

 普段の練習以外でもこのゾーン表は役に立ってくれます。例えば、レース後などにアクティブリカバリーをしている方も多いと思いますが、その際に明確な数字を持って行っていますか? ランニングの感覚で、おしゃべりできるレベルで走ればリカバリーになると思っていませんか?

パワーを見ないで行うウォームアップやウォームダウンは、かえって悪影響を及ぼしている場合も!パワーを見ないで行うウォームアップやウォームダウンは、かえって悪影響を及ぼしている場合も!

 私の場合、リカバリー効果を得るには90W以下の強度でこぐことになります。ちょっとでも鼻息を荒くするとすぐに越えてしまう、90Wというのはそれくらい軽い強度です。

 体感だけを頼りにやったり、自分よりも強い人のペースに合わせたりすると、リカバリーのつもりが実はエンデュランスゾーンに突入していて、ずっと疲れは抜けぬまま…なんてことにも。パワーメーターとゾーン表があれば、ウォームアップで疲労してしまったり、ウォームダウンで疲労を取り除くことができなかったりというミスを回避することができます。

 今では私もすっかり数値を確認する習慣がつきました。数字を見るだけで眠くなってしまうのは学生時代から変わりませんが、なぜだかパワートレーニングの数字には目が冴えてくるのです。好きなことになると夢中になれちゃうものですね(笑)

機材の数百グラムの重量差は単なる言い訳

Jシリーズ富士見パノラマ大会。路面は濡れているので木の根っこなど滑りやすい箇所は特に注意をしながら、キレイなペダリングとミスのないようなライドを心がけます。前に行きたい気持ちで思いっきり踏み込んでもロスをするだけなので慎重に、慎重にJシリーズ富士見パノラマ大会。路面は濡れているので木の根っこなど滑りやすい箇所は特に注意をしながら、キレイなペダリングとミスのないようなライドを心がけます。前に行きたい気持ちで思いっきり踏み込んでもロスをするだけなので慎重に、慎重に

 パワータップ導入当初、普段の練習はパワータップホイールで、レースはより軽量なノーマルハブのホイールでと使い分けていましたが、中田コーチに「大丈夫、大丈夫! 100gや200gそこそこの重量差でレース順位がどうこうなることなんて、まずない。負ける原因は自分に力が足りないというだけのことだから」と有り難い励まし(?)のお言葉をいただき、それ以降はレース・練習に関係なく、一貫してパワータップを履いて走るようになりました。確かに「ボトルに200mlの水が残ってたから負けちゃった!」って言うのと同じレベルで、言い訳以外の何物でもないですよね。

 それに人間は、レースではいつも以上の力が出せるみたいで、パワートレーニングを理解している人たちは、口を揃えて「レース時のデータほど貴重なものはない」と言います。そう、限界を超えて得られたデータからは、より多くの情報が得られるのです。そして「失敗は成功の母」と言いますが、何もかも上手くいったレースよりも、実は成績が振るわなかったレースのデータのほうが、克服すべき課題が見つかりやすく、より有用なのだとか。あああ、そんなデータなら沢山持ってます~! なんてラッキーな私(フクザツ…)

Jシリーズ富士見パノラマ大会。後半にあるフォークロスセクションはとっても楽しい! ここを走れる事もモチベーションにつながったかな。エリート男子はここで技を決めたりと、観戦するのも楽しいセクションです。結果は12位で完走。レース後は涙を流すほど、途中で諦めてしまった自分が腹立たしかった。これもまた経験! 悔しさを糧にするのは自分なのだと言い聞かせて前に進みます! 応援ありがとうございます!Jシリーズ富士見パノラマ大会。後半にあるフォークロスセクションはとっても楽しい! ここを走れる事もモチベーションにつながったかな。エリート男子はここで技を決めたりと、観戦するのも楽しいセクションです。結果は12位で完走。レース後は涙を流すほど、途中で諦めてしまった自分が腹立たしかった。これもまた経験! 悔しさを糧にするのは自分なのだと言い聞かせて前に進みます! 応援ありがとうございます!

パワートレーニングって実はシンプル!

 パワートレーニングって敷居が高いイメージがありますが、そんなことはないんです。私も初めは難しいというイメージがありましたが、意外にもそんなことなかった(笑)。

 それでも、最短ルートで速くなるためには、やはり裏付けのあるトレーニングメニューを、目的やその人のレベルに合わせて組む事が重要です。また、細かな解析をしたり、目標に向かって正しいトレーニングかを相談できる人がいるのは心強いです。実際、私も自分に合ったインターバルトレーニングがどのようなものか、ネットや本の情報ではなかなか答えに辿り着かなかったです。

 パワートレーニングは誰でも挑戦できるので、“難しい”という思い込みで自分の可能性を狭める事のないように…さぁ、シーズンオフはしっかりトレーニングに励みましょう!

布袋田沙織 布袋田沙織(ほていだ・さおり)

大学を卒業後、IT企業に務め2010年に独立。2012年に表参道にてパーソナルスタジオmiao(ミャオ)を開始。モデル、アナウンサー、スポーツ選手、一般の方々にトレーニングを指導。MTBは2013年より始め、初年度で表彰台を獲得。グローブ・スポーツコミュニケーションズ契約ライダー、バイシクルアドバイザー、ボディメイクトレーナー、パーソナルスタジオmiao 代表。ブログ:http://ameblo.jp/saoringo825/

【PowerTap Column<3>】「木を見ず、森を見る」を心掛ける

ホイールの重量を考える時は、質量分布に注目したい。走行時に最も影響が大きいのが外周部の質量だホイールの重量を考える時は、質量分布に注目したい。走行時に最も影響が大きいのが外周部の質量だ

 パワータップというと「重たい」というイメージを持っている人が多いが、それも一昔前の話。現行のロード用G3は320g台でデュラエース(7900)のハブとは60gそこそこしか違わないし、実はアルテグラよりも軽い。

 そもそも軽いホイールが欲しい人は、漕ぎ出しや登りでの軽快さを求めているはず。であれば、ハブのように回転体の中心ではなく、リムやタイヤといった外周重量を下げることを考えるべきなのに、残念ながらホイールカタログに記載されている全体重量で判断している人が多い。

パワータップとノーマルハブのシルエットの比較。パワータップがいかにラージ&ワイドフランジであるかが分かるパワータップとノーマルハブのシルエットの比較。パワータップがいかにラージ&ワイドフランジであるかが分かる

 仮にハブ重量に着目するにしても、パワータップとデュラエースの重量差がそのままホイール全体の重量差となるわけではない。大径フランジを持つパワータップの場合、スポーク長が短くなり、スポーク重量が減らせるからだ。また、パワータップはフランジ幅も広く、横剛性の高いホイールに仕上げることができることも付け加えておく。

 ハブ重量だけにとらわれてしまって、全体としてのメリットを見逃さないようにしたいものである。

(文 スポーツサイクル&ホイール ガソリンアレイ 店主 中村龍矢)

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

布袋田沙織のパワートレーニングで速くなる!

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載