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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<82>さいたまクリテリウムでニバリにインタビュー 人気No.1は女子の支持でキッテルが“圧勝”

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 10月18~19日の「ジャパンカップサイクルロードレース」、25日の「2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」と2週連続で、日本を舞台に世界レベルのサイクルロードレースイベントが開催されました。最高の盛り上がりを見せ、来場者やテレビで観戦した人たちは心から楽しんだことでしょう。さて、今回はさいたまクリテリウムを彩った2人のビッグネーム、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)とマルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ)にスポットを当てます。彼らの言葉や行動から、来シーズンの活躍に思いを馳せてみてください。

ニバリらツール・ド・フランスの4賞が活躍し、キッテルが優勝を飾った「2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」(平澤尚威撮影)ニバリらツール・ド・フランスの4賞が活躍し、キッテルが優勝を飾った「2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」(平澤尚威撮影)

ツール連覇を狙うニバリ 「チャンスがあれば石畳で攻める」

 ツール・ド・フランスの関連イベントとして行われる「さいたまクリテリウム」では、ツールの英雄たちがさいたまに集うだけでなく、4賞に輝いた選手たちが栄光のリーダージャージを着てその走りを披露することが大きな魅力だ。今年、ツールを制覇したヴィンチェンツォ・ニバリは、さいたまで燦然と輝くイエローのジャージ、マイヨジョーヌをまとってレースに臨んだ。

全身マイヨジョーヌカラーで登場したニバリ(米山一輝撮影)全身マイヨジョーヌカラーで登場したニバリ(米山一輝撮影)

 ツールでは18日間マイヨジョーヌ着用という、近年では見られないほどの“完全王者”ぶりを発揮。史上6人目の全グランツール総合優勝達成者となった。7月のツール当時と、今回のさいたまクリテリウムとでは、彼のいでたちにちょっとした違いがあったことにお気付きだろうか? ツール期間中は、優勝が確実となった最終ステージ以外、チーム本来のブルーのビブショーツを着用していた。一方、さいたまでは全身が黄色のマイヨジョーヌカラー。改めて、王者として来日したことを印象付けるポイントの1つだと言えそうだ。

 そんなニバリに、さいたまクリテリウム前日にインタビューすることができた。その中では、ツール総合優勝後の生活や、10月22日にパリで発表された2015年のツールのコースへの印象、そこでライバルになるであろう選手について、包み隠すことなく話してくれた。

――ツール・ド・フランス総合優勝おめでとうございます。ツール以降はどのような生活を送っていましたか?

ニバリ「ありがとう。ツール後は、思っていたよりも休みが少なかった。9月に開催された世界選手権を目標としていたこともあり、あまり休むことなく練習を再開したよ」

初来日したニバリ(平澤尚威撮影)初来日したニバリ(平澤尚威撮影)

――日本の印象はいかがですか?

ニバリ「初めて日本に来て、見るものすべてが新鮮だね。文化の違いはもちろんだけれど、何より実感しているのは“おもてなしの心”。温かな歓迎をしてくれて、本当にうれしい」

――ツール2015のコースの印象はいかがですか?

ニバリ「全21ステージを見渡して感じているのは、2014年大会のコースに近いかな…という点。第1週はオランダ、ベルギー、フランス北部を走るわけですが、やはり風がポイントになるだろう。本当に気が抜けないステージが続く。けがやトラブルに注意をして、第3週を迎えたいと思っている。最後の1週間が最大の勝負となるのは間違いない。ヒルクライム(上級山岳ステージ)が7つあるだけに、どこかでアタックしなければならない」

ツール・ド・フランス2015のコースレイアウト (©ASO)ツール・ド・フランス2015のコースレイアウト (©ASO)

――今年のツールでは、パヴェ(石畳)での走りが印象的でした。来年への期待も膨らみますね

ニバリ「ヒルクライムは周到な準備が必要だが、それ以上に注意をしなければならないのがパヴェだと言える。緊張感を持って走ることが大事だし、そのための準備もしなければならない。もちろん、ツール本番でチャンスがあれば攻めるよ! これはパヴェに限った話ではなくて、毎日頭をクリアにしてレースに臨まなければならないのがツール・ド・フランスなんだ」

――2015年のツール、ずばりライバルは誰になるでしょうか?

ニバリ「誰が出場するのかこれから分かることになるけれど、恐らくアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)とナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)は、手ごわい存在になると思う」

――クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)の存在はいかがですか?

ニバリ「ツールに出場するならば、間違いなくライバルになるだろう」

 ニバリにとってタイムトライアルは、不得手としているわけではないものの、かといってスペシャリストほどの力を持っているわけではない。それゆえ、個人タイムトライアルの距離が第1ステージの14kmだけに抑えられた点は、プラスに働くことだろう。一方で、チームTTを得意とするアスタナ プロチームとしては、第9ステージ(28km)で最大限にニバリをサポートできるはずだ。

 また、パヴェについては今年のツールで見事に走りこなし、本人としても手ごたえをつかんだようだ。このインタビュー後に出席した大会前夜イベントにおいて、将来のパリ~ルーベ、ツール・デ・フランドル挑戦に言及。ツール2015第4ステージでは、さらにグレードアップした彼の走りが見られるかもしれない。

 来シーズンは、ジロ・デ・イタリアとツールへの出場を予定している。現状では、ジロはツールに向けた調整として臨むとし、ファビオ・アール(イタリア)のアシストを務める。ツールでは、その構図が逆になるというのが既定路線のようだ。ただ、一部ではジロとツールの両方で総合優勝する“ダブルツール”に意欲的だとの憶測も聞かれる。今後の動向に注目していきたい。

 クライマーとしてだけではなく、あらゆるコースに適応し、“真のオールラウンダー”への歩みを進めるニバリ。一冬越えての進化に期待しよう。

キッテルを見て女子高生が黄色い歓声

 今回の「さいたまクリテリウム」ではレース、関連イベントを含め、ファンの心を最もつかんだのはマルセル・キッテルだったと言えそうだ。レースではスプリンター同士の争いで僅差の勝利だったが、ファンからの支持においては“圧勝”だ。

 クリテリウム前日、海外招待選手を対象に行われた文化交流会でのこと。選手たちは武蔵一宮氷川神社での参拝したのち、さいたま市産業文化センターで書道と茶道を体験した。県立与野高校書道部がパフォーマンスを披露し、同校茶道部がお茶のおもてなし。ここで女子生徒たちのハートを鷲掴みにしてしまったのがキッテルだった、というわけ。

キッテルの周りに女子高生が集まり興奮の渦に(平澤尚威撮影)キッテルの周りに女子高生が集まり興奮の渦に(平澤尚威撮影)

 会場に到着し、バスから降りてきた選手たちを見るや、目を輝かせた女子高生たち。しかし、2台目のバスが到着した直後、空気が一変した。響き渡る「キャー!」の声。キッテルのお出ましだ。

 交流会後には生徒たちに囲まれ、身動きが取れなくなるほどの人気を得たキッテル。レース本番ではしっかりと結果を残し、彼女たちもさぞかし嬉しかったことだろう。甘いマスクで、長身で、筋骨隆々で、ヘアスタイルも決まっていて、いつもにこやかで、優しくて…何とも憎い男だ(笑)。

 悔しかったので、筆者がキッテルに勝てるところは何かと考えに考えあぐね、ようやく見つけ出した答えは「正座ができる時間」くらいだった。こんなことで張り合っても仕方がないうえ、キッテルとの“差”を痛感させられるだけだったが……。でも、キッテルは筆者に向かって確かにこう言ったのだ。「正座スタイルは脚が超痛い!」と。

ツール2015 マイヨジョーヌのデザインが発表

 ツール・ド・フランス関連のトピックスをもう1つお届けしたい。22日に2015年大会のコースが発表されたが、時を同じくして同大会のマイヨジョーヌデザインが明らかになった。

 引き続き、ジャージサプライヤーはル・コック・スポルティフ社が担当する。2013年からは大会のイメージとなるイラストをジャージ腹部にプリントしている。コルシカ島での開幕となった2013年は、同地の旗にも描かれるムーア人。イギリス・ヨークシャーでの開幕となった2014年は、同地のシンボルである白バラが記された。

発表された2015年のマイヨジョーヌ。凱旋門が腹部にデザインされている発表された2015年のマイヨジョーヌ。凱旋門が腹部にデザインされている

 そして、2015年は凱旋門。1975年大会から慣例となった、パリ・シャンゼリゼ通りを周回する最終ステージが40周年を迎えることから、その記念として採用された。

 年々進化を遂げる機能性は、空力特性に優れている。着用する選手の体型に合わせてフィットする構造で、袖には継ぎ目がないほか、首下がメッシュ素材の通気口となっているなど、さまざまな工夫が施される。

 マイヨジョーヌと凱旋門。ツールのシンボルが1つになった勝者の証を、パリ・シャンゼリゼ通りで着るのは誰か。今から楽しみは尽きない。

今週の爆走ライダー-アルノー・デマール(フランス、エフデジ ポワン エフエル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

2011年のロード世界選手権U23を制したアルノー・デマール(前列左)。アドリアン・プティ(同右)とワンツーフィニッシュを飾り、新時代の到来を期待させた(砂田弓弦撮影)2011年のロード世界選手権U23を制したアルノー・デマール(前列左)。アドリアン・プティ(同右)とワンツーフィニッシュを飾り、新時代の到来を期待させた(砂田弓弦撮影)

 2011年、デンマーク・コペンハーゲンで行われたロード世界選手権。当時20歳のデマールはアンダー23ロードレースに出場し、アドリアン・プティ(フランス、現コフィディス ソリュシオンクレディ)と組んだ最終局面で大きく羽ばたいた。結果は、デマールが優勝、プティが2位。新世代の到来を待ちわびたフランス自転車界に、旗手が現れた瞬間だった。

 満を持してプロデビューを果たした2012年から、歴戦のつわものたちを次々と撃破。ジロで初グランツールに臨み、ロンドン五輪にも出場。以降、大きなトラブルもなく、順調に成長過程を歩む。今年は悲願のフランスチャンピオンに輝き、ツールにも出場を果たした。

 自らを「スプリンタールーラー」と評する。聞きなれない言葉だが、彼いわく「スプリントもできて、逃げにも乗ることができる」選手のことを言うのだとか。ピュアスプリンターと同等のスピードを持ち、数人の逃げでもレースを展開させることができる。そればかりか、北のクラシックなどの悪路でも強さを発揮する。最近は登坂力も向上させている。いよいよ万能型スプリンターとして大成するときが近づいていると言えそうだ。

2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに出場したアルノー・デマール。フランスチャンピオンジャージ姿で、日本のファンに走りを披露した(砂田弓弦撮影)2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに出場したアルノー・デマール。フランスチャンピオンジャージ姿で、日本のファンに走りを披露した(砂田弓弦撮影)

 1歳年上のナセル・ブアニ(フランス)とは酷似した脚質ゆえ、自身はもちろん、首脳陣もその棲み分けに苦労した。ともに着々と実力をつけたことは、嬉しい誤算を通り越し、悩みの種となってしまった。選択に迫られた今年、チームが選んだのはデマールだった。種々の理由が考えられるが、何より彼との信頼関係が築かれていることが大きかった。

 さいたまクリテリウムで無事シーズンを終え、しばしの休息を経て来シーズンへの準備が始まる。単独エーススプリンターとして迎える2015年は、「スプリンタールーラー」としての真価が問われる1年となる。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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