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海とそよ風の湘南デイズ<5>自転車競技と歯医者? スポーツ医歯学の研究者として「さいたまクリテリウム」の救護所へ

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 10月25日に開催された「ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム」にボランティアとして参加してきました。フェイスブックの自転車コミュニティの投稿で、ボランティアを募集するらしいとの内容を目にし思わずサイトへ行くと、クリーンスタッフやチラシ配布など、いくつか項目がありました。歯科医師の私は、通訳か医師ボランティアで迷ったのですが、「スポーツ医歯学」の研究を始めたところだったので、「せっかくなら」と医師ボランティアに応募しました。

同じ救護所チームの皆さんと。黄色いジャケットの方々は看護師さんたちです同じ救護所チームの皆さんと。黄色いジャケットの方々は看護師さんたちです

白衣を着たままクリテリウム観戦

スポーツ医歯学のドクターとしてボランティア参加。さいたまスーパーアリーナ前にてスポーツ医歯学のドクターとしてボランティア参加。さいたまスーパーアリーナ前にて

 大会当日の業務は、早朝から始まります。神奈川県の自宅からさいたま新都心までは2時間以上かかるため、夜明け前には家を出ました。前日は帰宅が遅かったため、あまり寝られない中での早起き。朝が苦手すぎる私にとっては、この日一番頑張ったところかもしれません。

 スポーツ外傷に大きな興味を抱き、やる気満々だった私ですが、当日、若干の誤算がありました。医師ボランティアの内容が、選手や出場者のケアではなく、何万人と訪れる来場者の対応だったということです。

看護師の皆さんといっしょに記念撮影看護師の皆さんといっしょに記念撮影
道案内も仕事のひとつ道案内も仕事のひとつ
自転車仲間との再会はやはり嬉しい!自転車仲間との再会はやはり嬉しい!
サイクルフェスタにも大勢の人。こちらはアルコールの飲みすぎによる酩酊者続出だったとかサイクルフェスタにも大勢の人。こちらはアルコールの飲みすぎによる酩酊者続出だったとか

 各エリアの救護所に一人ずつドクターを配置し、そこに4人くらいの看護師さんたち、そして消防の方々とチームを作り待機をしました。私はケガなどには対応できるのですが、身体の病気など内科的なことは、基本的なことしかわかりません。ただひたすら身近に何も起こらないことを祈りました。

 実際には、体調不良を訴えられた方の対応に当たりましたが、患者さんのお話を聞いて問診を取るくらいで、あとは看護師さんたちが迅速に対応してくれました。幸いにして大きな問題なく終了。「先生は現場にいてくれるだけでいいんですよ」と看護師さんが優しくおっしゃったこの言葉が、鋭く胸に突き刺さりました。

 相当頼りない先生だったと思いますが、みなさんよく付き合ってくださったと思います。初見の医療者たちと消防士さんで構成されたチームも、素敵なメンバーぞろいで本当に勉強になりました。居心地がよかったので、そのまま診療所を開業したいくらいでした。

救護室目の前の沿道には大勢の人が熱い応援を送っていました救護室目の前の沿道には大勢の人が熱い応援を送っていました
一流選手を目の前に興奮は最高潮!一流選手を目の前に興奮は最高潮!

 こうやってみると、救護所ではかなり忙しそうな雰囲気を感じられるかもしれませんが、これまたケガ人もなく幸いにして相当ヒマでした。自転車(愛車「デニーロ」)の話をしたり、白衣を着たままクリテリウム観戦に足を運び、沿道でジャンプして一眼レフカメラで撮影したり、ツール・ド・フランスののぼり旗と写真を撮りたくて挙動不審な動きをしたり…自転車ロードレースファンとしても、イベントを満喫できました。

1本の歯の資産価値は数千万円!?

マッドサイエンティストがトラブルを起こしているのではありません、談笑中の風景ですマッドサイエンティストがトラブルを起こしているのではありません、談笑中の風景です

 「そもそも自転車レースに歯医者って必要なの?」なんて思われるかもしれませんが、こういった場所に歯科医が参加していることは大きな意味があると私は思っています。

 論文を調べると、自転車で落車や事故を起こしたときに顎をぶつけて顎骨を骨折したり、歯を折ったりするケースが確実に存在します。ヘルメットを適切に装着しているか、自転車がどれだけ普及しているかなどの条件にも左右されますが、世界的に見て日本はその割合も若干多いことがわかっています。

 また、1本の歯の資産価値は数百万どころか数千万円もするとまで言われていますから、それを失うのは選手・チームの将来にとっても不利益をもたらします。

 落車での歯のケガは割とレアケースですが、歯の残し方は診断も手技も特殊なので、歯医者がいないと適切に対応できない内容です。

 最近では、競技中にマウスピースを入れることも注目され始めています。ケガ予防のためはもちろん、かみ合わせが整うと力が出やすくなったり、バランスがとりやすくなったり、良いことがたくさんあるのです。

「ついスポーツ医歯学について熱く語ってしまいます」と塩田菜々さん「ついスポーツ医歯学について熱く語ってしまいます」と塩田菜々さん
救護所では論文を読む時間もありました救護所では論文を読む時間もありました

 私は、「選手の状況を判断し、少しでも歯の寿命、さらには競技力を延ばせる医師がそばにいれば、より良いのではないか」と考えています。2020年の東京オリンピックを前にし、それを早くいろんな形で世に伝えたくて、現在所属する「スポーツ医歯学」研究室の門を叩いたのです。

◇         ◇

 …スポーツ医歯学について熱く語ってしまうのが私のクセ。救護所は“ヒマなのが一番”とわかっていても、研究者としての血が騒いでしまいますね! でも“マッドサイエンティスト”ではありませんよ。みなさんの健康が一番です!

塩田菜々塩田菜々(シオタ・ナナ)

湘南生まれ、湘南育ち。2012年よりロードバイクに乗り始め、翌年には「バイシクルライド東京」「GREAT EARTH 富良野ライド」「ワイズカップ彩湖4時間エンデューロ」といったサイクリングイベントのほか、「大磯ロングビーチ・ファミリートライアスロン」へ出場。2014年には「横浜トライアスロン」スプリントディスタンス・エイジ部門を完走。愛車は「デ・ローザ R848」(愛称デニーロ)。歯科医師として日々の臨床に携わりながら、大学院でスポーツ医歯学研究にも従事している。特技は英会話。好きなものは愛犬とおいしいパン、嫌いなものは採血と激坂。

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