バイクインプレッション2014「FUJI TRANSONIC2.7」 上位モデル譲りの空力性能で高速走行を楽しめる1台
耳なじみの良い「フジ」はアメリカの実力派バイクブランドだ。街で映える個性豊かなバイクから、レーサーが使用する高性能モデルまで手掛け、UCIプロコンチネンタルチームの「チーム ネットアップ・エンデューラ」にレースマシンを供給している。新機種として登場した「トランソニック」は、まさにレース現場のフィードバックを得て開発された注目のモデル。今回は、ハイエンドモデルの「トランソニックSL」と同形状で、素材を変更した中級グレード「トランソニック2.7」に試乗した。
「FUJI TRANSONIC2.7」(フジ トランソニック2.7)
価格:240,000円(完成車、税抜)
サイズ:46cm、49cm、52cm、54cm、56cm
カラー:カーボン/レッド
問い合わせ先:アキボウ http://www.fujibikes.jp/
スペック
フレーム:C5 ハイモジュラスカーボン
フォーク:FC-440 カーボン
変速機:シマノ・105(F)&(R)
ギヤ:オーバル・コンセプト520 50×34T、11-28T(11s)
ホイール:オーバル・327 エアロ アロイ クリンチャー
重量:7.9kg(完成車実測値)



インプレッション BY 松尾修作・米山一輝

米山 空力性能を追求したロードバイクは各社が力を入れている、近年最も層の厚いジャンルだ。そこにフジが投入したのがこの「トランソニック」。今夏のツール・ド・フランスで実戦投入されていたね。フジはトラックバイクにも定評のあるブランドなので、期待できる1台でしょう。
松尾 それが乗り味もまさにトラックバイクのようでした。しっとりとしたカーボン繊維が細かい振動をいなすのは良くわかるものの、踏んだ剛性感は結構高めです。縦の剛性がかなり高いですね。ちょっと疲れそうな印象も受けました。
米山 採用されるカーボンは上位機種の「トランソニックSL」は高強度のC10、この「トランソニック2.7」はコストパフォーマンスに優れるC5と異なるのに、中級グレードのこちらでも“がっしり”だったね。平坦の高速巡航が得意です!という印象。
松尾 はい。縦剛性の高さが際立っていました。また、実際はそうではないのに、BBハイトが乗っていて高く感じました。腰高感がある構成、設計なのかもしれません。
米山 でも、スタビリティは高かった。スピードに乗せるとピタッと走ってくる。
松尾 そうですね、高速巡航から更に加速するときは良いです。それから、SST時代からフジのハンドリングは好きですが、この新機種も好印象でした。とくに下りの安定感は抜群で、バイクは振られないので安心です。

米山 加速は軽い味付けではないけれど、どっしりといける。快適性について特筆すべきことはある?
松尾 素材自体はパリっとしていない分、振動吸収性は思いのほか良かったと思います。あとはやはり、エアロ性能を狙ったフレーム設計ですので、下りでスプリントをしてみたら剛性の高さと相まって、エアロ効果を感じながら気分良く走れました。ただ、30km/h以上からの加速は良いものの、速度が出ていない時の踏み込みは縦剛性の高さが仇となってちょっと疲れそうです。捻るようなダンシングも疲れを感じると思います。
米山 そうだね。高いスピード域で力強く走るのが楽しいバイク。
松尾 ええ、距離の短いレースやサーキット等の高速走行ができるシーンに向いていると思いました。

TEXT BY 齋藤むつみ / PHOTO BY 佐藤正巳