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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<81>「オレの話を聞いてくれ!」 ジャパンカップで見た海外トップ選手の素顔

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 10月18、19日、日本のサイクルロードレース界はジャパンカップ一色となりました。選手たちの意欲はもちろんですが、何よりファンの盛り上がりと後押しこそが大会に花を添えたと言えるでしょう。来日した選手たちは皆、日本のファンや大会の雰囲気に満足して帰国の途に就いたようです。さて、今回はさまざまにレポートされているレース内外の話題とは別に、来日した外国人選手たちの素顔に迫る、ちょっとした裏話を展開していきます。

ジャパンカップに出場した海外トップ選手たちは、ファンに囲まれた日本での滞在を楽しんだ<砂田弓弦撮影>ジャパンカップに出場した海外トップ選手たちは、ファンに囲まれた日本での滞在を楽しんだ<砂田弓弦撮影>

イタリア人選手は正直者!?

 今年のジャパンカップでは、レース取材はもとより選手たちの声を聞くことにも主眼を置いた。取材アポイントを取っていたわけではないので、ほんのわずかなタイミングで一言二言のやり取りになるが、その中から有益なコメントを見出せたらと思っていた。ジャパンカップ・チームプレゼンテーションが行われた10月17日はステージ裏で、翌18日はクリテリウムを直後に控えた昼頃に海外チームが宿泊するホテルで選手を待った。

 プレゼンテーションを終えて筆者に声をかけてきたのは、ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)だ。「この前のレースで勝ったよ!」。そう、彼は10月12日にイタリアで行われたGPブルーノ・ベゲッリ(UCI1.1)でプロ初勝利を挙げたのだ。どうやらそれをアピールしたかったらしい。初のグランツールだったブエルタ・ア・エスパーニャでは、複合賞のコンビナーダ(ホワイトジャージ)を数日間着用。ポディウムでは緊張した表情が話題になったが、実際は笑顔に愛嬌のある好青年だ。

プロ初勝利を筆者に報告したコンティ(左から2人目)。ジャパンカップでも6位と好走を見せた。一方で「調子が悪い」と打ち明けたのはヴァッケール(右から2人目)<福光俊介撮影>プロ初勝利を筆者に報告したコンティ(左から2人目)。ジャパンカップでも6位と好走を見せた。一方で「調子が悪い」と打ち明けたのはヴァッケール(右から2人目)<福光俊介撮影>

 コンティは5月のツアー・オブ・ジャパンでも来日。筆者がブルーノ・ヴィッチーノ監督やフィリッポ・ポッツァート(イタリア)へのインタビューのため、チームに出入りをしていたことを覚えていてくれたらしい。肝心のジャパンカップでは優勝争いに絡み、6位に入った。

 同じくランプレ勢では、アンドレア・ヴァッケール(イタリア)の表情がどうも優れない。「調子が悪い。本当に悪い。もう疲れてるんだよね」。シーズン通して走ってきたのだ、長旅も影響しているのだろう。「調子は良いよ!」と話す海外勢が多いなか、ヴァッケールのように不調をアピールする選手も珍しい。なかにはフェイクの場合もあるだろうが、彼は本当に疲れていたようだ。

ヴォンホフは“逆”取材申請 さらにウエア洗濯の依頼まで

 選手宿泊先のホテルでのこと、イアン・ボスウェル(アメリカ、チーム スカイ)と話す筆者の背後からつけてくる足音…。振り返るとそこにはスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)の姿が。ほんの数センチの距離に立たれると、180cm・70kgの体も大男に見える(筆者は身長175cmなのだが)。「あとはよろしく!」と去ったボスウェルに代わって、ヴォンホフのアピールタイムの開始だ。

ヴォンホフ(以下ヴォン)「おいおい、オレには何も聞いてくれないのかい?」
筆者「ごめん! オマエのこと忘れていたよ(もちろんジョーク)」
ヴォン「だろ! オレも自分のこと忘れていたもんな!」
2人「アハハハハハ…」
筆者「で、どうなの、調子は?」
ヴォン「順調だよ。クリテリウムは良い走りができると思う」

レース内外問わず茶目っ気たっぷりのヴォンホフ。筆者と冗談を言い合った後のクリテリウムでは2位。レースでは集中力を発揮する<福光俊介撮影>レース内外問わず茶目っ気たっぷりのヴォンホフ。筆者と冗談を言い合った後のクリテリウムでは2位。レースでは集中力を発揮する<福光俊介撮影>

 本当にこんなノリ。クリテリウムでは2位と、2連覇こそならなかったが言葉通りの走りを見せた。彼はファンサービスにも長けていて、毎年ジャパンカップでは大人気だ。ちなみに、この会話の数分後に再び会うと「洗濯してくれない?」の一言。もちろん断った(笑)。

 そういえば、「レース後にオレの部屋に来いよ、話をしようぜ!」と言ってくれていたのだけれど、結局行くことができなかった、ごめん! 彼のことだから、いろんな人に同じことを言っているような気はするけれど…。

カンチェッラーラ、けがは大丈夫?

 トレーニング中の落車負傷により、大会直前に欠場が発表されたファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)。けがを押して来日し、レース観戦や各種アフターパーティー出席と忙しい時間を送った。

ジャパンカップレース中に宇都宮市森林公園に来場したカンチェッラーラ<福光俊介撮影>ジャパンカップレース中に宇都宮市森林公園に来場したカンチェッラーラ<福光俊介撮影>
カンチェッラーラの首にはテーピングが貼られていた<福光俊介撮影>カンチェッラーラの首にはテーピングが貼られていた<福光俊介撮影>

 レース会場のメーンステージ裏で少しだけ話を聞いてみた。「日本に来られて良かった」と、無事来日できたことに安心した様子。けがの具合を問うと「う~ん、まあまあかな」と、煮え切らない返答。その度合いまでは説明してもらうことはできなかった。ただ、首にはしっかりとテーピングが貼られていた。

 レース中は、1周のみだったがチームカーに乗り込み戦況をチェックしたようだ。

来季の巻き返しを誓うマルカートとモゼール

 「ジャパンカップサイクルロードレース」が終わった19日夜は、キャノンデールのアフターパーティーへと出向いた。イベント取材とあわせ、選手たちにもコメントを寄せてもらった。

 なかでも、チームのエースとして走り、本場ヨーロッパでも評価の高いマルコ・マルカートとモレノ・モゼール(ともにイタリア)にとっては、今年は苦しいシーズンだった。改めて2014年を振り返ってもらい、来季への抱負を語ってもらった。

ジャパンカップクリテリウムで逃げたマルカート。来季は移籍先で立て直しを目指す<福光俊介撮影>ジャパンカップクリテリウムで逃げたマルカート。来季は移籍先で立て直しを目指す<福光俊介撮影>

――2014シーズンが終わりましたね

 マルカート「終わってホッとしているよ。これからしばらくは休養だよ。バカンス、バカンス、バカンスさ!」

 モゼール「長いシーズンだったね」

――今年はどんなシーズンでしたか?

 マルカート「正直良いシーズンだったとは言えないかな。トレーニング中の落車トラブルや、体調不良もあって、思うような結果は残せなかった。何とかツール・ド・フランスには間に合わせたような感じだったんだ」

 モゼール「全然ダメ。何がダメだったか、理由なんて挙げられないほどだよ」

――マルカート選手は前日のクリテリウムで逃げて良いアピールをしていましたね

 マルカート「シーズン後半に少しずつ調子が上がってきて、昨日のような良い走りができた。来年につなげたい」

「今シーズンは全然ダメだった」と振り返ったモゼール<福光俊介撮影>「今シーズンは全然ダメだった」と振り返ったモゼール<福光俊介撮影>

――モゼール選手はロードレース優勝まであと一歩だった

 モゼール「本当に勝ちたかった。惜しかったね」

――チームはガーミン・シャープと合併しますが、来シーズンの所属チームと目標を教えてください

 マルカート「来年はベルギー籍のプロコンチネンタルチーム、ワンティ・グループゴーベルで走ることになった。本当はUCIプロチーム(2015年からUCIワールドチームに改称)との契約を望んでいたのだけれど、それは叶わなかった。ただ、今度のチームはボクの得意とするクラシックレースに集中できる環境だから、とても満足しているよ。ミラノ~サンレモやパリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュなどで活躍したい。2年前に勝ったパリ~トゥールでも再び優勝したいね」

 モゼール「移籍はしない。来年のことは、しっかり休んでから考えることにするよ」

2014ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム展望

 ジャパンカップでの盛り上がりもほどほどに、25日には「2014ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム presented by ベルーナ」が開催される。さいたま新都心に設けられたコースを、ツール・ド・フランスで活躍した選手たちが駆け抜ける。

「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」はコーナーの多いテクニカルなコース「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」はコーナーの多いテクニカルなコース

 1周約3.1kmの周回コースは、コーナーが連続するテクニカルさが特徴。第1回大会だった昨年からコースが変わり、さいたまスーパーアリーナ内を通過するのも見ものだ。ゴール地点1km手前で山岳賞ポイントが設定されるほか、ゴール前は約500mのロングストレート。劇的なスプリントシーンが見られる可能性も高そうだ。

 大会はまず、午後1時から2組に分かれてのポイントレース(8周)を実施。コース上に設定されたポイントラインを通過した際の順位に基づき得点が与えられ、ゴール後の総得点で順位が決定するシステムだ。そして、メーンレースのクリテリウムは午後3時スタート。20周回で争われるエキサイティングなレースとなる。

 出場は、海外から8チーム32人(1チーム4人)、ツール・ド・フランス ジャパンチーム2人、国内参加8チーム31人(1チームを除き各4人)、計65選手がスタートラインに立つ。

4賞のうち(左から)マイヨジョーヌのニバリ、マイヨヴェールのサガン、マイヨアポアのマイカが来日する<砂田弓弦撮影>4賞のうち(左から)マイヨジョーヌのニバリ、マイヨヴェールのサガン、マイヨアポアのマイカが来日する<砂田弓弦撮影>

 ツール関連クリテリウムだけあって、4賞のうち3人が参戦。総合優勝のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)はマイヨジョーヌで、ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール)はポイント賞のマイヨヴェール、ラファウ・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)は山岳賞のマイヨアポアを着て臨む。

 前回優勝のクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)も再来日。スプリンターのマルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ)、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、アルノー・デマール(フランス、エフデジ ポワン エフエル)らは、そのスピードを日本のファンに披露するか。アンダー23世界チャンピオンのスヴェンエリック・ビストロム(ノルウェー)は、チーム カチューシャの一員として出場。マイヨ・アルカンシエルの着用があるのかにも注目だ。

マイヨジョーヌを着てさいたまを走ったクリストファー・フルーム(中央)が今年も参戦する<柄沢亜希撮影>マイヨジョーヌを着てさいたまを走ったクリストファー・フルーム(中央)が今年も参戦する<柄沢亜希撮影>

 日本勢では、別府史之(トレック ファクトリーレーシング)、新城幸也(チーム ヨーロッパカー)が、ツール・ド・フランス ジャパンチームのメンバーとして出走。ジャパンカップに続く凱旋レースとなる。

 また、今シーズンをもって現役を退く選手のうち何人かは、このレースでの走りが見納めとなる。ジャパンカップを終えて引退を発表した西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、盛一大(愛三工業レーシングチーム)の最後の勇姿を見届けよう。

 会場は、午前10時に観覧エリアがオープンとなり、同11時20分のオープニングセレモニーをはじめに各種イベントが実施される。正午からは、さいたまスーパーアリーナコミュニティアリーナ内で選手紹介とオープニング走行が行われる。

今週の爆走ライダー-エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チーム スカイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

2011年のツール・ド・フランスではステージ2勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン<砂田弓弦撮影>2011年のツール・ド・フランスではステージ2勝を飾ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン<砂田弓弦撮影>

 2008年に華々しくプロデビューを飾り、2009年にはヘント~ウェヴェルヘムやジロ・デ・イタリアでの勝利など、センセーショナルな活躍を見せた。クラシック、山岳、スプリント、タイムトライアル…どれをとってもハイクオリティな走りから、“エディ・メルクスの再来”と言われて久しい。

 しかし、ここ数年はレース中の落車負傷、慢性的な膝やアキレス腱の痛みに悩まされ続けた。ツール・ド・フランスを制したブラッドリー・ウィギンスやクリストファー・フルーム(ともにイギリス)らのエースクラスや、チーム首脳陣からの信頼も揺らぎかねない厳しい時期を過ごした。

 チーム創設時から歩み続けた現チームでの活動に終止符を打つ。その最後のレースとなったジャパンカップで2位。優勝までほんのわずかの差だった。「ジャパンカップで活躍した選手は、その後ワールドクラスのライダーになる」とのジンクスにあやかるとなれば、“完全復活”はもうすぐそこだ。

ジャパンカップに初めて出場したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン。2位に入る活躍で、日本のファンの心をつかんだ<砂田弓弦撮影>ジャパンカップに初めて出場したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン。2位に入る活躍で、日本のファンの心をつかんだ<砂田弓弦撮影>

 来シーズンからは、MTN・クベカで走る。南アフリカ発のプロコンチネンタルチームにとっては、破格ともいえるエース待遇を提示したという。「エースとして走ることのできるチーム」を望んでいた彼にとっても、満足できる環境での再スタートとなりそうだ。

 ジャパンカップ・クリテリウムでは、優勝したチームメートのクリストファー・サットン(オーストラリア)のもとへ向かったものの、報道陣の勢いに圧倒され輪に入れず苦笑いをしていた彼。そんな憎めないところと、ノルウェー人気質ともいえるレース中の気迫とのギャップもまた魅力だ。日本で見せたレース内外での顔。トップシーンを盛り上げる選手がまた1人、我々にとって身近な存在となった。

(文 福光俊介)

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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