いつかは表彰台の頂点に―世界トップクラスに差を見せつけられた日本勢 ジャパンカップの現実と課題

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 宇都宮市で10月19日に開催された「2014ジャパンカップサイクルロードレース」では、世界トップクラスの実力を誇るUCIプロチーム勢が上位を占める一方、日本人選手の最高位は別府史之(トレック ファクトリーレーシング)の14位に終わった。沿道を埋め尽くしたファンは、なじみのチームや選手に声援を送り続けたが、日本勢は地の利を生かせず、地力の差を見せ付けられるように終盤で後退した。世界のトップライダーにチャレンジした日本人選手の走りを追った。 (レポート 福光俊介)

大きな歓声を背に受けて力走した別府史之。最終局面では思い通りの走りができなかったという大きな歓声を背に受けて力走した別府史之。最終局面では思い通りの走りができなかったという

新城、別府はチームのエースとして参戦

 今大会には早くから、ヨーロッパで活躍する新城幸也(チーム ヨーロッパカー)と別府が出場の意思を表明。シーズン後半最大の目標に据えるとし、チームもそれぞれ2人をエースに指名した。宇都宮入り後も明るい表情が見られ、新城はレース前日の18日、「調整は順調だった。狙っていく」と屈託のない笑顔で話してくれた。

 迎えたレース当日。ボルテージの上がる会場内に驚きの発表が響き渡った。長年にわたり日本のロードレース界を引っ張ってきた宮澤崇史(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)が現役引退を発表したのだ。前日のジャパンカップクリテリウムでは日本人最高位の8位と好調さを見せていただけに、ジャパンカップ本戦を走った後にプロとしてのキャリアを終える決断を、多くのファンが惜しんだ。しかし宮澤本人は、普段のレース前と同様に、集中した姿勢を崩さずスタートラインへと向かった。

レース前、ステージ上で現役引退を表明する宮澤崇史レース前、ステージ上で現役引退を表明する宮澤崇史
現役最後のレースのスタートを待つ宮澤崇史現役最後のレースのスタートを待つ宮澤崇史

逃げて魅せた阿部と山本 山岳賞を獲得

 レースは1周目に4人の逃げ集団が形成され、日本勢では阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)と山本元喜(ヴィーニファンティーニ・NIPPO)が加わった。最大で約5分30秒のリード。その間、2人は3周おきに設けられる山岳賞を狙った。結果、1回目は阿部が、3回目は山本が獲得。レース9周目の古賀志林道頂上をトップで通過した山本は、その後に力尽きてバイクを降り、「1回目も2回目も山岳賞を狙ったが失敗に終わっていた。3回目は何としても取りたくて、そこですべての力を使った」と振り返った。

逃げ集団に加わった阿部嵩之(右、宇都宮ブリッツェン)と山本元喜(左、ヴィーニファンティーニ・NIPPO)逃げ集団に加わった阿部嵩之(右、宇都宮ブリッツェン)と山本元喜(左、ヴィーニファンティーニ・NIPPO)
全力のアタックで山岳賞を獲得した山本元喜全力のアタックで山岳賞を獲得した山本元喜

 一方、阿部は逃げ集団が3人となった後も力強い牽引を続けたが、ガーミン・シャープやチーム スカイが主導権を握るメーン集団の動きには太刀打ちできず、終盤に吸収されてしまった。それからは、集団に待機していた有力選手たちの出番。やはり期待は別府と新城だ。

 しかし、中盤まで余裕を持って走っていた日本勢だったが、ゴールが近づくにつれてスピードアップするガーミン・シャープやチーム スカイのペースに1人、また1人と脱落していく。注目された別府と新城も、最終周回でのハイペースに苦しんだ。結果、別府がベストアジアライダーとなる14位(日本人最高位)でトップから48秒遅れ、新城は56秒遅れの26位に終わった。

勝利も狙える展開だったが、悔しい結果に終わった新城幸也勝利も狙える展開だったが、悔しい結果に終わった新城幸也

別府「声援に感動」 新城「あそこまで差をつけられるとは」

レース後の記者会見で、「途切れることのない声援に感動した」と語った別府史之レース後の記者会見で、「途切れることのない声援に感動した」と語った別府史之

 レース後の記者会見で、「順位的には悔しい」と切り出した別府。それでも、「沿道の声援が途切れることなく、走りながらずっと感動していた。作戦的には、ジュリアン(・アレドンド)が先に仕掛け、その後自分が追いついて展開する予定だったが上手くいかなかった」という。何よりシーズン終盤にレースを楽しむことができたとし、表情は明るかった。

「100%出したけれど…」と悔しがる新城幸也「100%出したけれど…」と悔しがる新城幸也

 対照的に、悔しさを露わにしたのは新城。ゴール後チームテントに戻るなり倒れ込んだ。しばらく立ち上がることができず、失意と同時に精根尽き果てた様子が見られた。その後、記者団の取材に応じ、「フランスでのレースや、ツアー・オブ・北京を走ってきた選手とレースペースに差が出てしまった。100%出したけれど最後の周回であそこまで差をつけられるとは」と時折涙ぐみながら悔しがった。

 3年ぶりのジャパンカップ参戦については「たくさん応援してもらって嬉しかった。チームメートも(観客数に)『すごいなぁ』と喜んでくれていた。また来年どこかでみなさんの期待に応えるような走りをしたい」とコメントし、ようやく笑顔を見せた。

西谷「プロチームが本気だった」 増田 「若い選手の底上げを」

 日本勢はトップ10入りを逃し、UCIプロチーム勢との力の差が歴然となった。この日、22位に終わった西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)は、「プロチームが本気だった。プロツアーのレースで走っているようでした」と、半ば呆れたような表情で語った。「これが本場のレースですって感じですね。どうだこの野郎!…参りましたって感じで。でもこれだけ本気で来られると、やりがいはあります。結果は出なかったけど、楽しかったです」

「プロチームが本気だった」と振り返る西谷泰治「プロチームが本気だった」と振り返る西谷泰治

 西谷によると、UCIプロチームの全チームがやる気で、ポジションを譲らなかったという。「レース後半は段階的にペースがどんどん上がってきて、集団の後ろは苦しくなった。しかしプロチームが多くて、以前は取れていた前の位置が取れなかった。後ろでポジション争いをしていて、気が付いたら前の方でアタックが掛かっている状態だった」

増田成幸はダニエル・マーティン(左)らトップ選手との戦いから収穫を得た増田成幸はダニエル・マーティン(左)らトップ選手との戦いから収穫を得た

 トップから48秒遅れの15位となった増田成幸(宇都宮ブリッツェン)は、敗因をこう分析する。「UCIプロチームが集団牽引を開始すると、コンチネンタルチームの選手たちは前に出してもらえなくなってしまう。後ろに位置せざるを得ず、そうなると周回終盤の上りで脚を使う形になる。良いポジションをキープすることももちろんだが、個の力をアップさせることが重要」。

レース後、晴れやかな表情で取材に応じる増田成幸レース後、晴れやかな表情で取材に応じる増田成幸

 しかし、来シーズンに向けての方向性が見えたことが収穫だとも。「冬場はしばらく休んでからトレーニングを再開する。そこでは、自分はもとより、若い選手の底上げも狙いたい」と前向きだ。地元チームとしての悲願でもあるポディウム登壇、さらには優勝に向けて、リスタートの日々が待ち受ける。

◇         ◇

 「最高の結果」とはならなかった日本人選手たちだが、年々増加する沿道の盛り上がりとともに、世界のトップライダーに対して積極的な姿勢も多く見受けられるようになった。ファンの後押しを受け、日本人選手たちが表彰台の最上段に立つときが来ることを待ちたい。

先頭集団からは遅れたものの、リラックスした表情で最終周回を走る宮澤崇史先頭集団からは遅れたものの、リラックスした表情で最終周回を走る宮澤崇史
お互いをたたえあう清水都貴と西谷泰治お互いをたたえあう清水都貴と西谷泰治

■2014ジャパンカップサイクルロードレース 日本人選手の結果(完走分)
14 別府史之(トレック ファクトリーレーシング) +48秒
15 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +48秒
22 西谷泰治(愛三工業レーシングチーム) +56秒
23 初山翔(ブリヂストン・アンカー サイクリングチーム) +56秒
24 内間康平(ブリヂストン・アンカー サイクリングチーム) +56秒
26 新城幸也(チーム ヨーロッパカー) +56秒
30 早川朋宏(愛三工業レーシングチーム) +1分2秒
31 清水都貴(ブリヂストン・アンカー サイクリングチーム) +2分1秒
38 土井雪広(チームUKYO) +4分37秒
39 畑中勇介(シマノレーシングチーム) +5分5秒
41 宮澤崇史(ヴィーニファンティーニ・NIPPO) +5分46秒
44 岡篤志(日本ナショナルチーム) +5分48秒
47 盛一大(愛三工業レーシングチーム) +5分51秒
49 野中竜馬(シマノレーシングチーム) +5分51秒
50 平塚吉光(愛三工業レーシングチーム) +5分51秒
51 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) +5分51秒
55 山本隼(チームUKYO) +5分59秒
58 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム) +6分36秒
59 内野直也(日本ナショナルチーム) +6分36秒
60 鈴木真理(宇都宮ブリッツェン) +6分36秒
61 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) +6分57秒
62 堀孝明(宇都宮ブリッツェン) +9分45秒
63 入部正太朗(シマノレーシングチーム) +9分48秒
64 石橋学(ヴィーニファンティーニ・NIPPO) +10分40秒
65 木村圭祐(シマノレーシングチーム) +11分52秒

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