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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<80>自転車の街・宇都宮で繰り広げられるワールドクラスの戦い 2014ジャパンカップ総展望

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 2014年のUCIワールドツアーは10月10~14日のツアー・オブ・北京で終了し、ヨーロッパ各地のレースも大詰めを迎えています。日本の自転車界でもこの時期はビッグなレースやイベントが目白押しですが、その先陣を切って行われるのが2014ジャパンカップサイクルロードレース。今回はジャパンカップのコースや注目の出場選手を分析し、日本で繰り広げられるワールドクラスの戦いを展望します。

海外のビッグネームが多数来日し、宇都宮が街を挙げて盛り上げるジャパンカップ<早坂洋祐撮影>海外のビッグネームが多数来日し、宇都宮が街を挙げて盛り上げるジャパンカップ<早坂洋祐撮影>

目抜き通りで行われるクリテリウムは高速バトル必至!

 大会は10月19日(日)のロードレースに先立ち、11日(土)と12日(日)に2014ジャパンカップシクロクロスが行われた。宇都宮市中心部に位置する宇都宮城址公園で開催され、最上位クラスのカテゴリー1では小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)が優勝し、初代王者に。年々人気を増すシクロクロスによって、今年も宇都宮にジャパンカップの到来を告げた。

 15日(水)からは、メーン会場の1つであるオリオンスクエアで各種イベントがスタート。そして、選手たちによる顔見せやパフォーマンスが見られるチームプレゼンテーションは17日(金)午後7時から。ここでボルテージが一気に上がることになる。

 ロードレースイベントの幕開けは、18日(土)午前のオープンレース。アマチュア選手たちが本気のバトルを繰り広げる。そして同日午後3時50分スタートの2014ジャパンカップクリテリウムで、いよいよ世界のトップ・プロ選手たちがバイクに乗って登場する。翌日のメーンレース出場を控える選手が、宇都宮市大通りに集結。県都の目抜き通りに設けられる1周1.55kmの周回コースを23周(うちパレード走行3周)する35.65kmのスピード勝負に挑む。

減速を余儀なくされるジャパンカップクリテリウムの折り返し地点減速を余儀なくされるジャパンカップクリテリウムの折り返し地点

 クリテリウムでは、集団内でのポジショニングが勝負を大きく左右する。コース内2カ所のコーナーは、いずれもUターンで、通過のたびに減速を余儀なくされる。そこからの再加速が求められ、集団前方に位置する選手ほどスムーズな走りができるのだ。レース自体はUCI(国際自転車競技連合)未公認だが、例年、どの選手もモチベーションは高く、出場選手の中にはこのクリテリウムに賭けているスプリンターも少なくない。特にヨーロッパから来日したUCIプロチーム勢は、スキンスーツ(空気抵抗が少なくエアロ効果の高い、上下一体型となったサイクルジャージ)で臨むこともあるほどだ。

名うての選手たちがアタックした古賀志林道 ラスト1周まで目が離せない勝負の行方は?

 メーンのロードレースは19日(日)午前10時スタート。UCI1.HCクラスに位置付けられ、ワンデーレースとしてはアジア最高位となっている。

 前日までの宇都宮市中心部から、宇都宮市森林公園へと場所を移し、アップダウンに富んだコースが使用される。そのコンセプトは「本場ツール・ド・フランスの山岳ステージに勝るとも劣らない名コース」。1996年のワールドカップ開催時に設定された14.1kmの周回コースを10周し、ラスト1周は10.3kmのショートコースからゴールへと向かう。

ジャパンカップの勝負どころ、古賀志林道の上り<早坂洋祐撮影>ジャパンカップの勝負どころ、古賀志林道の上り<早坂洋祐撮影>

 レースのポイントは、スタート地点から始まる古賀志林道の上り。2kmで高低差185mを一気に駆け上がる。これまで数多くの名選手がここでアタックし、ファンを熱狂させてきた。レース終盤にかけては、有力チームのアシスト陣が揺さぶりをかけ、展開によってはエースたちが動きを見せるはずだ。また、3周ごとに山岳賞が設定されており、日本人選手たちを中心に逃げグループ内での賞争いが見られるだろう。

 上りを終えると、約3kmにわたるテクニカルなダウンヒル。来場者立入禁止区域となっており、直接観戦することはできないが、選手たちはハイスピードで下っていく。雨が降れば、濡れた路面で落車の危険性も。そうした中で、リスクを負って勝負に出る選手がいるかもしれない。

 周回の後半は、萩の道と鶴カントリークラブのアップダウン。最終周回ではカットされる部分であり、勝負どころにはならないとみられるが、終盤を見据えて上手くクリアしたいゾーンでもある。ここでの消耗は何としても避けたい。

多くのファンがつめかける古賀志林道の頂上<早坂洋祐撮影>多くのファンがつめかける古賀志林道の頂上<早坂洋祐撮影>

 予想されるレースの流れは、序盤から中盤にかけて日本人選手を中心とした逃げ集団が先行することだろう。力のあるUCIプロチーム勢は後半からメーン集団をコントロールしてペースを上げてくるはずだ。活性化した集団は、古賀志林道などでのアタックを経て、最終周回での攻防を迎える。なお、ラスト1周の古賀志林道頂上からゴールまでは約8km。単独での逃げ切りか、小集団によるスプリントで優勝者が決まることが多い。勝つためには、クライマー並みの登坂力、強力なアタックを繰り出すパンチ力、そしてスプリント力と3拍子そろっていることが重要となる。

宇都宮から世界へ シーズンのラストを飾るタイトル争い

 世界的にも大会への注目度が増し、ビッグネームからの人気が高いジャパンカップ。サイクルロードレースシーズンの終わりが近づいている中で、年間最後のタイトル獲得に燃える選手たちが多く参戦する。何より、「ジャパンカップに出場した選手は、その後ワールドクラスのライダーになる」とのジンクスが囁かれるほど、大きく羽ばたいた選手が数多いことも見逃せない。

2012、13年もそろって出場した(左2人目から)ダニエル・マーティン、スティール・ヴォンホフ、ネイサン・ハース(ジャパンカップクリテリウム2013)<砂田弓弦撮影>2012、13年もそろって出場した(左2人目から)ダニエル・マーティン、スティール・ヴォンホフ、ネイサン・ハース(ジャパンカップクリテリウム2013)<砂田弓弦撮影>

 今回の出場選手のうち、ジャパンカップから飛躍した最たる例として挙げられるのが、ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)。今大会は3年連続4度目の出場となる。初出場だった2010年にはラスト3周を独走する圧勝劇。以降、グランツールやクラシックレースでいくつもの勝利を挙げてきた。

 特に今月に入ってからは、5日に開催されたジロ・デ・ロンバルディアで優勝し、14日まで開かれたツアー・オブ・北京でも総合2位。第4ステージでは山頂ゴールを制すなど絶好調をキープしており、ジャパンカップ2度目の優勝に向けて準備万端だ。チームは、2011年優勝のネイサン・ハース、昨年のクリテリウム優勝のスティール・ヴォンホフ(ともにオーストラリア)と、この大会に相性抜群の選手たちを送り込む。

昨年は3位に入ったダミアーノ・クネゴ(左)。3回目の優勝を狙う<早坂洋祐撮影>昨年は3位に入ったダミアーノ・クネゴ(左)。3回目の優勝を狙う<早坂洋祐撮影>

 来シーズン、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザへの移籍が決定し、日本とのつながりも深いダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)は6年ぶり3回目の優勝を狙う。7度目の出場とあり、コースを熟知している点も強みだ。現チームで最後の勝利をつかむことができるか。チームメートのヴァレリオ・コンティ(イタリア)は、5月のツアー・オブ・ジャパンでも来日。10月12日のGPブルーノ・ベゲッリ(UCI1.HC)では念願のプロ初優勝を挙げており、今大会の優勝候補に名乗りを挙げている。

 「上れるスプリンター」をそろえたのはチーム スカイ。エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)、ベン・スウィフト(イギリス)は、クライマー並みの登坂力を誇る。特にボアッソンハーゲンはツアー・オブ・北京でステージ3位と6位が1度ずつ。好調時の走りに近付いており、宇都宮で完全復活をアピールしたい。

 別府史之(トレック ファクトリーレーシング)、新城幸也(チーム ヨーロッパカー)は、それぞれエースとして凱旋レースに臨む。トレックは、ファビアン・カンチェッラーラ(スイス)、ジュリアン・アレドンド(コロンビア)といったビッグネームが別府を盛り立てる。展開次第では彼らがレースをリードすることもあるだろう。新城は、早くからジャパンカップをシーズン後半のターゲットに据えており、その走りに期待がかかる。過去最高成績は2007年の5位だ。

ジャパンカップをシーズン後半の目標に据える新城幸也<砂田弓弦撮影>ジャパンカップをシーズン後半の目標に据える新城幸也<砂田弓弦撮影>
ファビアン・カンチェッラーラらのアシストを受けエースとして臨む別府史之<砂田弓弦撮影>ファビアン・カンチェッラーラらのアシストを受けエースとして臨む別府史之<砂田弓弦撮影>

 実績豊富なモレノ・モゼールやマルコ・マルカート(ともにイタリア)らキャノンデール勢、ブエルタ・ア・エスパーニャではアシストとして高い評価を受けたミケル・ヴァルグレンアンデルセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)らも、優勝候補として押さえておきたい選手たちだ。

 迎え撃つ日本勢は、2011年2位の西谷泰治(愛三工業レーシング)や、清水都貴、内間康平(ともにブリヂストンアンカー サイクリングチーム)らが優勝争いに加われるかどうか、期待がかかる。地元・宇都宮ブリッツェンは、増田成幸がエースを務めるだろう。日本チャンピオンの佐野淳哉(那須ブラーゼン)は、日本ナショナルチームとして参戦する。

ファビアン・カンチェッラーラは日本のファンの前で勝利なるか<砂田弓弦撮影>ファビアン・カンチェッラーラは日本のファンの前で勝利なるか<砂田弓弦撮影>

 前日のクリテリウムは、前回優勝のヴォンホフのほか、クリテリウムスペシャリストでもあるクリストファー・サットン(オーストラリア、チーム スカイ)が優勝候補の最右翼。カンチェッラーラの独走が見られるかも楽しみの1つだ。クリテリウムのみ参戦の窪木一茂(チームUKYO)、黒枝士揮(ヴィーニファンティーニ・NIPPO)は、ヨーロッパ勢に匹敵するスピードの持ち主。特別に結成される「クリテリウムスペシャルチーム」で参戦する、アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファルマ・クイックステップ)が優勝をさらっていく可能性も大いにあるだろう。

●2014ジャパンカップサイクルロードレース出場チーム
・ディビジョン1(UCIプロチーム)7チーム
ガーミン・シャープ
キャノンデール
ランプレ・メリダ
チーム ヨーロッパカー
チーム スカイ
ティンコフ・サクソ
トレック ファクトリーレーシング

・ディビジョン2(UCIプロコンチネンタルチーム)2チーム
ドラパック プロフェッショナルサイクリング
チーム ノヴォノルディスク

・ディヴィジョン3(UCIコンチネンタルチーム)6チーム
愛三工業レーシング
ブリヂストンアンカー サイクリングチーム
宇都宮ブリッツェン
シマノレーシング
チームUKYO
ヴィーニファンティーニ・NIPPO

・ナショナルチーム 1チーム
日本ナショナルチーム

・クリテリウムスペシャルチーム 1チーム

今週の爆走ライダー-タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 2009年から勝利を量産し、2010年にジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャで合わせてステージ4勝をマーク。2011年にはツール・ド・フランスでステージ1勝を挙げ、全グランツールでの優勝経験者となった。当時はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)、アンドレ・グライペル(ドイツ)と並び、大型スプリンターとしての地位を固めつつあった。

2011年のツール・ド・フランス第3ステージで勝利を飾ったタイラー・ファラー<砂田弓弦撮影>2011年のツール・ド・フランス第3ステージで勝利を飾ったタイラー・ファラー<砂田弓弦撮影>

 しかし2012年以降、けがや体調不良もあって下降線をたどった。昨シーズン終了後、一度はチームとの契約満了を言い渡されるなど、苦しい時期を過ごした。

 今シーズンも未勝利のままだったが、ツアー・オブ・北京で待望の初勝利。ポイント賞も獲得した。かつてのスプリントが戻ったとは言い難いが、それでも良い形で今年を終えたことは、来季につながることだろう。

 来年からはMTN・クベカで走る。キャノンデールと合併する現チームと歩むことは叶わなかったが、ゼネラルマネージャーのジョナサン・ヴォーターズ氏は、エーススプリンターとして7年間走り続けた彼を「功労者」として評価した。

 移籍先は、UCIワールドチーム入りを目指す過程にあり、ファラーにはその切り札として期待されている。自身のスプリントと同時に、エーススプリンターとなるであろうテオ・ボス(オランダ)の発射台が新チームで用意されるポストだ。

 移籍に際して「サイクルスポーツのグローバル化の重要性を感じ、チームのプロジェクトに共感した」と語ったファラー。これまでの苦楽からのリスタートは、アフリカ大陸で歩み始める。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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