産経ニュースwest【関西の議論】より大阪・岬―淡路・洲本間の連絡船が16年ぶり復活へ サイクリング客の需要も見込む

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 戦前から運航を続けてきたものの、平成11年の明石海峡大橋開通の影響で廃止された、大阪府岬町・深日港と兵庫県・淡路島の洲本港を結ぶ連絡船。それを岬町が来年秋にも復活させる方針を明らかにした。背景には関西国際空港の好調な利用があり、淡路島へのサイクリング客の需要も見込むという。これまでも時代の荒波に翻弄されてきた連絡船。全国的にも珍しい、一度は廃止された航路の復活に乗り出した地元の強気な“皮算用”とは―。(産経新聞 吉村剛史)

平成11年の廃止直前まで運航していた高速船(池田良穂教授提供)平成11年の廃止直前まで運航していた高速船(池田良穂教授提供)

有望な競争力を持つ航路

 「昨今はサイクリング・ブーム。船には自転車も積めるようにしたい」

深日-洲本を結ぶ連絡船航路復活の見通しについて発表する田代堯・岬町長(左)と池田良穂・大阪府立大大学院教授 =9月22日、関西国際空港深日-洲本を結ぶ連絡船航路復活の見通しについて発表する田代堯・岬町長(左)と池田良穂・大阪府立大大学院教授 =9月22日、関西国際空港

 9月22日、連絡船復活の方針を明らかにした岬町の田代堯町長は、こう自信たっぷりに語り、期待に胸を膨らませた。町が同時に発表した連絡船の需要予測調査の結果によると、片道運賃を1000円前後に設定すれば「十分な黒字」が見込めるという。

 「最初は『(復活しても)どうかな』と疑問に思ったが、結果として、かなり有望な競争力を持つ航路であることが分かった」

 こう語るのは、町から調査の委託を受けた府立大大学院工学研究科の池田良穂教授(船舶工学)だ。調査は今年5月から約3カ月、「犠牲量モデル」と呼ばれる方式で実施した。「犠牲量」とは、連絡船を利用した場合の利用者のコストを意味する。

 連絡船は、所要時間が短く、運賃が安いほど利用率は上がる。そのため調査では、大阪府内を地区ごとに分け、それぞれの地区から洲本までの所要時間と運賃を算出して比較してみた。

予想外の「理想的黒字」

 具体的には兵庫県の観光客動態調査から推定し、大阪府内と洲本の間の往復は年間約28万人と設定した。移動ルートには、電車とバスで明石海峡大橋を渡る陸上ルートや、明石―淡路・岩屋間を高速船(淡路ジェノバライン)で移動する海上ルートがある。

かつて淡路島の洲本港まで結んでいたフェリー =大阪府岬町の深日港(同町提供)かつて淡路島の洲本港まで結んでいたフェリー =大阪府岬町の深日港(同町提供)

 そこで、この海上ルートと、今回復活させる連絡船ルートを比較した。すると、約2億円の小型高速船(19トン、旅客定員63人)を購入して使用した場合、片道約35分で1日7往復運航できる。片道運賃1000円の設定では、大阪・難波以南から洲本までの利用者を100%を獲得できることが判明した。

 さらに年間の利用客数は往復約19万人で、利益率も43%と「理想的な黒字」が期待できる結果に。仮に運賃を高めの1300円に設定しても、年間の利用客数は往復13万人。利益利率は23%と黒字を確保できる見通しだ。

 以前運航していた時代には片道運賃を1980円に設定。所要時間は約30分だった。

 「(運賃などは)船の規模や職員数から設定していたが、当時は利用者に割高と感じられていたようだ」と町の担当者。当時廃止された理由を振り返る一方、今回の調査結果については「予想外の黒字見通し」と驚きを隠さない。

淡路島一周サイクリングツアーの足に

 「今回は大阪府内だけを対象に調査したが、実際には、これ以上の効果が見込まれるはず」と池田教授は言い切る。岬町は人口約1万6000人にすぎないが、南には人口約36万人の和歌山市が隣接する。「今後の調査では、これも勘案すべきだ」と池田教授。

 さらに追い風なのが、格安航空会社(LCC)の相次ぐ就航や円安などで利用者が増えている関西国際空港の存在だ。新関西国際空港会社によると、8月の国内線と国際線の旅客数は計187万人(前年同期比106%)。35カ月連続で前年を上回った。特に8月で過去最高だった外国人旅客(56万人、前年同期比134%)の伸びは顕著だ。

平成11年の廃止直前まで運航していた高速船 =大阪府岬町の深日港(岬町提供)平成11年の廃止直前まで運航していた高速船 =大阪府岬町の深日港(岬町提供)

 今回、連絡船を導入する深日港は、関西国際空港につながる南海電鉄の深日港駅にも隣接しており、池田教授は「訪日外国人を対象に、関西国際空港から電車と船で淡路島を訪れるツアーが実現するかも」と導入効果を期待する。

 深日港に車を預けて連絡船によるクルーズを楽しむ「ドライブ&クルーズ」や、連絡船に自転車を積んで淡路島に渡り、島を一周するサイクリングツアーなども、すでに町は検討を始めている。

 政府は2020年の東京オリンピック開催までに訪日外国人客数を年間2000万人に増やす目標も立てているため、町の担当者は「伸びしろは十分にある」と強気の姿勢だ。

災害時の物流拠点にも

 町の担当者は、観光への波及効果を強調する一方、「災害時の効用にも期待したい」と指摘する。平成7年の阪神大震災では実際、陸路が寸断された神戸市などへの物資輸送に、深日港で就航していたフェリーなどが活躍した実績がある。

 「岬町は位置的に津波被害が比較的軽微と予想されており、南海トラフ巨大地震などの災害時には救援拠点、物流拠点になりうる」と町の担当者。このような数々のメリットを踏まえ、田代町長は運営会社を公設民営方式にすることも視野に、今後トップセールスを展開し、船会社に協力を呼びかける方針だ。

 ただし、現時点ではコスト削減のため、導入する連絡船は以前よりも小規模になる見通しで、池田教授は「荒天時には欠航が多くなり、揺れの大きさが観光客に好まれないというマイナス面も予想される」とも指摘する。

 町の“皮算用”通りに黒字を生み出すことができるのか。連絡船復活の挑戦が始まる。

産経ニュースwestより)

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