パイオニア「ポタナビ」開発物語<下>“ゆるさ”が売り、顧客の声を反映

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<上>「使って面白い」技術にこだわり

ポタナビの開発者ら。(左から)サイクル事業推進室事業開発課の碓井純一課長、新規事業開発課の小島祐介主事、同室事業開発課企画チームの宮崎和典さん=川崎市幸区のパイオニア本社ポタナビの開発者ら。(左から)サイクル事業推進室事業開発課の碓井純一課長、新規事業開発課の小島祐介主事、同室事業開発課企画チームの宮崎和典さん=川崎市幸区のパイオニア本社

 ポタナビの開発に立ち向かったのは5人の技術者だ。パイオニアは2009年2月、テレビ事業から完全撤退を発表しており、テレビ技術者だった5人も、職場を失った。

 リストラに伴い、多くの仲間が会社を去っていった。それでも、5人が会社に残ったのは「パイオニア」という会社が好きだったからだという。「パイオニアらしい製品を生み出したかった」とサイクルスポーツ事業推進室の碓井純一課長はいう。

 5人の共通点は趣味が自転車ということだ。「それなら、この共通点を生かそう」と、自転車向けの製品開発に取り組んだ。開発を進めれば進めるほど、自転車の奥深さが分かってきたという。ある人は「子供と一緒に乗ることが多い」といい、別の人は「スポーツで使えないと」という。5人いたら5通りの自転車の楽しみ方があった。新規事業開発課主事の小島祐介さんは「多様な要求を満たす商品を作らなければいけない」と意気込んだ。

 一方、「新規事業の立ち上げは開発と営業の両輪が機能しない」と営業を担当した同室の宮崎和典さんはいい、日本の自転車市場の特徴を徹底的に分析した。

2.4インチの液晶画面で地図などを表示する。ハンドル操作の邪魔にもならない(パイオニア提供)2.4インチの液晶画面で地図などを表示する。ハンドル操作の邪魔にもならない(パイオニア提供)

 こうしてできあがったのが自転車の自由度を生かしたポタナビだった。細かい指示をしないナビや消費カロリーを示すユーモラスなアニメーションなど“ゆるさ”を売りにした。ゆるさを支えるには、きめ細かくユーザーの声に反応しなければならない。開発チームは5人から十数人に増員された。今は毎日のように寄せられるユーザーからの要望に対応するため、バージョンアップソフトを開発する日々が続く。「顧客の反応が直接聞こえる商品にできあがってやりがいも大きい」(碓井課長)。「去っていった仲間にも『元気でやっているぞ』と伝わるんじゃないかな」と開発チームは、新しい事業を生み出した手応えを感じている。

≪MARKET≫ 今年度7.7%増、7年連続の成長予想

 サイクルスポーツ用品市場は、健康や環境といった近年関心が高まるキーワードを追い風に、2011年には6年連続のプラス成長となっている。

 矢野経済研究所によると、11年度は前年度比8.7%増の343億円。12年度の予想でも7.7%増の370億円と高い成長率を見込む。

 市場を牽引(けんいん)するのはオフロード用自転車のマウンテンバイクをベースに、平地用のタイヤを装備した「クロスバイク」。自転車での散策や通勤に適しており、1台当たり5万~10万円程度、スポーツバイクの入門車として人気が高い。スポーツバイクに乗るサイクリストの数は、国内で約300万人と推定されており、「ママチャリ」などの一般的な自転車からの切り替え需要もある。

 スポーツバイクなどの軽快車の普及に伴い、走行距離や速度などを計測するサイクルコンピューターの需要も拡大するとみられている。

 現在、サイクルコンピューターは海外メーカーの輸入品が大部分を占めているが、パイオニアは国内メーカーならではのサポート力で、国内市場でのシェア獲得を目指す。初年度の販売見込みは10万台、その後は自転車文化が根付いている欧米など海外展開も視野に入れる。15年度までに100万台を販売したい考えだ。

 ◇

≪FROM WRITER≫

 大学時代に自転車旅行を始めて以来、自転車好きに拍車がかかり、今では長距離用の自転車や折りたたみ自転車を含めて4台所有している。うち1台は、今年初め、西アフリカのギニア共和国滞在中に現地で購入し、アフリカの大地を数百キロともに走った思い出の1台だ。

 ある週末、昔の仲間と一緒にポタナビ片手に、静岡県をサイクリングしてみた。昨年、夏休みを利用して東京-京都間を走破した際には通り過ぎてしまった場所だ。

 見知らぬ街を走るときは、雰囲気や勘などを頼りに名物を探し当てようとするのだが、「通りをひとつ入っておけば出会えたのに」と、出会いの機会を逸して後悔することもある。

 しかし、今回は、ポタナビのおかげで、沼津市の生シラス、焼津市のマグロなど、海の幸を堪能することができた。

 自転車旅行は自分の力でペダルをこがないと前に進むことはできず、体に負担がかかるのは否めない。でも、見知らぬ土地の楽しさを教えてくれるポタナビがあれば、ときには辛い道のりも乗り切れる気がする。(高木克聡)

SankeiBizより)

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