ヒルクライムチャレンジシリーズ2014 第4回高梁吹屋ふるさと村大会町中がヒルクライム一色! 岡山県高梁市“ヒルチャレ”は住民にも欠かせない年中行事

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 岡山県中部に位置する高梁(たかはし)市で10月5日、自転車イベント「ヒルクライムチャレンジシリーズ2014 高梁吹屋ふるさと村大会」が開催された。全国各地で行なわれている“ヒルチャレ”シリーズの中でも、高梁吹屋ふるさと村大会は当初から開催を継続しており、4回目を迎えた今大会にはおよそ800人がエントリーした。ヒルクライムレースの模様をはじめ、城下町・高梁の魅力や、街を挙げて大会を盛り上げる様子を取材した。

国の重要伝統的建造物群保存地区とされる吹屋の町並みを横目に走る「高梁吹屋ふるさと村大会」国の重要伝統的建造物群保存地区とされる吹屋の町並みを横目に走る「高梁吹屋ふるさと村大会」

歓迎ムードは前日から

きれいに手入れされた花の道にのぼり旗がたなびくきれいに手入れされた花の道にのぼり旗がたなびく

 大会のコースは、高梁の街から標高差398mの「吹屋ふるさと村」を目指すロングコース15kmと、ショートコース10km。生活道路となっている国道を止めて行なわれる。また両コースともに、市内にあるメイン会場から山の麓に設置されたスタートラインまで、11.5kmというとても長いパレード走行区間が設けられているのが特徴だ。高梁市の近藤隆則市長によれば、このパレード走行区間は「市民のみなさんにイベントを知ってもらういい機会」という。

 記者は大会前日、ヒルクライムのコースや高梁の街の様子を取材するため、クルマで家々が立ち並ぶ市街地から高梁川沿いに抜け、里山の集落を横目に吹屋まで向かう道を走り抜けた。すると、もう市民へ周知する必要はないと思えるくらいに、大会を盛り上げる手旗やのぼり旗、横断幕などがあちらこちらに飾られ、歓迎ぶりがひと目で見て取れた。それに加えて沿道には、日本列島へ接近していた台風18号が怖気づくくらいにたくさんのカラフルなてるてる坊主。また、前年大会の写真を大きく引き伸ばしたパネルなど、趣向を凝らした装飾には、驚きとともに感動を覚えた。

近藤隆則・高梁市市長もポロシャツ姿でイベントを盛り上げた近藤隆則・高梁市市長もポロシャツ姿でイベントを盛り上げた
晴れを祈願するてるてる坊主がコース沿いに並んだ晴れを祈願するてるてる坊主がコース沿いに並んだ
コース沿いには住民が撮影した2013年大会の写真が展示されていた場所もあったコース沿いには住民が撮影した2013年大会の写真が展示されていた場所もあった
町内会の各世帯で育てた花の鉢を並べていた女性町内会の各世帯で育てた花の鉢を並べていた女性

 コスモスなど秋の花も美しく、記者もサイクリングしたい気分に誘われていると、ショートコースのゴール付近へ花を飾り付けている女性に遭遇した。聞けば、この大会のために周囲の町内会230世帯でそれぞれ育ててきた花の鉢なのだという。女性は「せっかくのゴールを、にぎやかにお迎えしたい。これからもぜひ来てね」と、高梁を訪れるサイクリストたちに温かいメッセージを送った。

ゴール地点は国指定の歴史地区

備中松山城前にたたずむ高梁市職員の池田百恵さん(左)と大久保有理さん備中松山城前にたたずむ高梁市職員の池田百恵さん(左)と大久保有理さん

 高梁市は、岡山空港からクルマで約1時間、電車ならJR「岡山駅」から伯備線特急で「備中高梁駅」までおよそ35分。周囲をぐるりと山に囲まれた盆地で、夏は暑く冬は寒いうえ、「冬はなかなかカラッと晴れない」(市職員)という。雲がわきやすい地形は、標高430mの小松山山頂に築かれた「備中松山城」をしばしば雲海の上に押し上げ、幻想的な風景をつくり出す。備中松山城には「途中までクルマで行ける」と聞いて訪ねてみると、木々の間から市街地をみごとに一望することができた。

 続いて今大会のゴール地点となる吹屋地区を訪れた。ベンガラ色と島根・石州瓦を用いて赤銅色に統一された町並みが美しい。同エリアは現在、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。かつての屋敷は雑貨店やカフェなどに姿を変えて、訪れる人を迎え入れている。吹屋地区に入ってすぐの「紅や」は、たくさんの雑貨の中に自転車が吊るされているのが印象的なカフェ。ロングコースのラスト160m、ひときわつらい上り坂を観戦するにはうってつけだ。この日は軒先に、大会オリジナルデザインのポロシャツや手旗が飾り付けられていた。

備中松山城からは高梁の市街地を一望できた備中松山城からは高梁の市街地を一望できた
いまは廃校となり県指定重要文化財となった旧吹屋小学校。体育館は大会当日、ゴールをした参加者らの更衣室として利用されたいまは廃校となり県指定重要文化財となった旧吹屋小学校。体育館は大会当日、ゴールをした参加者らの更衣室として利用された
生活道を止めて行なわれた「高梁吹屋ふるさと村大会」。ゴールの吹屋地区にはコスモスが咲き乱れていた生活道を止めて行なわれた「高梁吹屋ふるさと村大会」。ゴールの吹屋地区にはコスモスが咲き乱れていた

 紅やでは、しっかりとした風味ながら渋みが少なくスッと飲める「高梁紅茶」を味わった。この日、取材に同行いただいた高梁市秘書政策課広報担当の池田百恵さん、同じく健康福祉部保険課で保健師を務める大久保有理さんとともに、ホッと一息。実はふたりとも昨年の大会に出場していて、今回もエントリー済み。翌日に参戦を控えたサイクリストだ。

2年連続大会に参戦する池田百恵さんの携帯待受画面はまさにサイクリスト2年連続大会に参戦する池田百恵さんの携帯待受画面はまさにサイクリスト

 「気がつくといつも高梁のPR方法を考えています。職業病ですね」と笑う池田さん、自転車を始めるまでは「なんでみんな自転車に乗って遠くへ行ったり山に上ったりするんだろう」と疑問に思っていたという。後にこのイベントを主催する側に立ち、スポーツとしての自転車が身近な存在になると、イベント会場に限らずどこでも誰とでも親しくなれるサイクリングの魅力に気づかされた。池田さんは自転車をつうじて「人脈を広げるのが楽しい」と話してくれた。

 一方、大久保さんは「スタッフとして大会を手伝いながら、参加者の皆さんのやたら楽しそうな様子を見て『やりたい!』という思いが止められなくなった」と振り返った。2年越しの願いが叶ってようやく参加した昨年大会では、完走はしたものの、運悪くハチに刺されてしまったという。今年はビンディングペダルとシューズを新調して挑むのだと、輝く笑顔で教えてくれた。

吹屋地区の入口近くにあるカフェ&アートショップ「紅や」の内観吹屋地区の入口近くにあるカフェ&アートショップ「紅や」の内観
カフェ&アートショップ「紅や」では、コーヒーや高梁紅茶を楽しむことができるカフェ&アートショップ「紅や」では、コーヒーや高梁紅茶を楽しむことができる

22カテゴリーに集った老若男女

初めてのイベントにひとりで挑んだ山本亜樹さん初めてのイベントにひとりで挑んだ山本亜樹さん

 大会当日、てるてる坊主たちががんばってくれたおかげか、台風の気配は感じられなかった。緑の芝が美しい山陽オカムラグラウンドには、続々とサイクリストが集まってきた。友人同士で参加した地元の西平優樹さんと岡山市の原孝志さんはそれぞれ、「手を振って応援し返すつもり。楽しみます!」「2週間酒断ちしてコンディションを整えた」と準備万端だ。

 高梁吹屋ふるさと村大会は、ヒルチャレシリーズの中でも女性の参加者が比較的多いという。少し緊張した表情でゼッケンを取り付けていた山本亜樹さんは、大阪からひとりで参加。高梁が地元の祖母から大会のことを聞き、参加を決めたという。「大会もヒルクライムも初めて。なるべく早く帰ってこられるようにしたい」とコメントした。

友人同士で参加した西平優樹さん(左)と原孝志さん友人同士で参加した西平優樹さん(左)と原孝志さん
「高梁吹屋ふるさと村大会」を支えるスタッフのみなさん「高梁吹屋ふるさと村大会」を支えるスタッフのみなさん
スタート会場で預けた荷物はゴール会場で受け取ることができるしくみスタート会場で預けた荷物はゴール会場で受け取ることができるしくみ
地元「野外活動スポーツ少年団」から参加する福川侑くんは「表彰台乗ります」と気合充分地元「野外活動スポーツ少年団」から参加する福川侑くんは「表彰台乗ります」と気合充分

 出走カテゴリーは、ロードバイク・マウンテンバイクの車種別以外に、チーム・個人、コース別、男女・年代別と22に分類されている。年代別では、上は61歳以上で下は小学3年生(ショートコース)と幅広い層の参加者が集まり、7時過ぎに順次パレード走行のスタートが切られた。

 記者はスタート前、「間もなく選手が通過します」とアナウンスしながら参加者たちの前を行く広報車に乗り込んだ。まだ朝7時だというのに、沿道には軒先に椅子を出したり道路の脇に立ったりしながら多くの地元の人たちが選手を待ち受けていた。手に手に持つ小旗は、市の職員が作って各町内会経由で配られたものだという。

沿道で応援する高梁市の人たち沿道で応援する高梁市の人たち

カメラ越しにはライダーたちの熱気

ロングコースのラスト160mは特にキツイ上りが待ち受けているロングコースのラスト160mは特にキツイ上りが待ち受けている

 ゴールの目前のラストクライムでは、トップライダーをはじめ全員が最後の力を振り絞る形相で駆け上がってきた。カメラを構えていると、スタート以降に降った雨でウェアやバイクは濡れていても、上気した顔や呼吸から熱気が伝わってきた。

 ゴール会場では、高梁では年中食べられるという名物「シシ汁」が振る舞われた。イノシシ肉だけでなくサツマイモ、こんにゃく、ハクサイなどの具がたっぷり入った汁は、甘めに仕上げた手作りの合わせ味噌とベストマッチ。大鍋いっぱいのシシ汁は、1200人分と参加者数に対して多めの分量だ。大会スタッフは「おかわりもしてくださいよー」と呼びかけ、ご馳走は応援に駆けつけた家族や仲間にもいき渡った。

吹屋地区の町並みを通り抜けていく参加者ら吹屋地区の町並みを通り抜けていく参加者ら

 広島から来た真嶋伸一郎さんは、「3位でした」と少し浮かない表情。実は真嶋さんは昨年、ロードバイク部門のトップカテゴリーにおいて28分10秒の記録で1位を獲得したディフェンディングチャンピオンだったのだ。「今年はやりすぎて身体を痛めてしまったので、無事に走れてよかった」と振り返りつつ、「来年はリベンジします」と次への目標を見据えた。

シシ汁は大鍋で1200人分が用意されたシシ汁は大鍋で1200人分が用意された
ディフェンディングチャンピオンの真嶋伸一郎さん(右)は今年は3位。「来年リベンジします」ディフェンディングチャンピオンの真嶋伸一郎さん(右)は今年は3位。「来年リベンジします」

 下山待ちの時間、風が強くなり、サイクルウェア姿でない記者でも身体が冷えていく。ライダーたちは、預けた荷物を受け取って着替えたとしても、下りでまた雨では濡れてしまうだろう…。最後尾の回収車を迎えて下山準備の声がかかると、会場からはほっとした雰囲気が伝わってきた。

B級グルメや名産品がメイン会場でスタンバイ

下山してメイン会場へ戻ってきたライダーを手旗を振って迎える下山してメイン会場へ戻ってきたライダーを手旗を振って迎える

 市内のメイン会場へ戻ると、すでにいくつもの飲食・物販ブースがスタンバイ。スパイシーなカレー味にトマトのフレッシュな酸味が合うB級グルメ「インディアントマト焼きそば」をはじめ、地元「備中牛」の串焼きやバーガー、名産品の「ピオーネ」といったぶどうが販売された。

 モモのフレッシュジュースをおいしそうに飲んでいた地元の林千尋さんと倉敷市の藤村真奈さんは、ともに人気自転車アニメ『弱虫ペダル』が自転車を始めたきっかけ。「初めてのイベント参加。試走を含めていっしょに走り込んだ。最後の坂がきつかったけど楽しめた。来年も参加したい」と声をそろえた。

アニメ『弱虫ペダル』がきっかけで自転車を始めた林千尋さん(右)と藤村真奈さん。ゼッケン部分にキャラクターのキーホルダーを飾って走ったアニメ『弱虫ペダル』がきっかけで自転車を始めた林千尋さん(右)と藤村真奈さん。ゼッケン部分にキャラクターのキーホルダーを飾って走った
地元名産のトマトが乗ったB級グルメ「インディアントマト焼きそば」地元名産のトマトが乗ったB級グルメ「インディアントマト焼きそば」
完走証を参加者に手渡すスタッフら完走証を参加者に手渡すスタッフら
「ここに並んでいるだけでも66歳、58歳、70歳」と完走証を見せてくれた男性チーム「ここに並んでいるだけでも66歳、58歳、70歳」と完走証を見せてくれた男性チーム

 また揃いの真っ赤なウェアで楽しそうに話していた男性たちは、「昨年結成30年を祝ったばかりの会社のチーム」と往年のサイクリストだ。メンバーのひとり森茂樹さんは、「ここに並んでいるだけでも66歳、58歳、70歳。80歳まで走るよ!」と元気いっぱいに語った。

◇         ◇

 大会前夜、記者が夕飯をとっていると飲食店に入ってくる人だれもが「あしたはヒルクライムどこで見る?」「朝から雨の予報でかわいそう」などと岡山弁で“ヒルクライムトーク”を繰り広げていた。記者が東京から取材で訪れたことがわかると、自転車のこと、高梁のこと…と話に花が咲く。沿道の応援の多さは事前に聞きおよんでいると記者が告げると、「暇なだけだよ」と笑うのだが、自転車乗りとして涙が出るほどありがたい。2011年の開催から参加者を伸ばしているヒルクライムは、地元の人たちにとっても大切な一大イベントとなった。

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