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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<79>ジロ・デ・イタリア2015全ルート発表 現代的かつバランス重視の21ステージ

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 2014年のロードレースシーズンも残すところあとわずか。同時に、翌シーズンに向けた動きが活発になる時期でもあります。3大会あるグランツールの中で、まず先陣を切ってコースを発表したのはジロ・デ・イタリア。98回目となる2015年大会の全容が明らかになり、選手や関係者の反応も気になるところです。そこで今回は、ルート詳細や選手たちのコメントをチェックしていきます。

ジロ・デ・イタリア2015コースプレゼンテーションに出席した(左から)カデル・エヴァンス、アルベルト・コンタドール、ミハウ・クフィアトコフスキージロ・デ・イタリア2015コースプレゼンテーションに出席した(左から)カデル・エヴァンス、アルベルト・コンタドール、ミハウ・クフィアトコフスキー

距離が短く負担の少ない構成

今年の山岳賞を獲得したジュリアン・アレドンド(左)と総合2位のリゴベルト・ウラン今年の山岳賞を獲得したジュリアン・アレドンド(左)と総合2位のリゴベルト・ウラン

 ジロのコースプレゼンテーションは10月6日、ミラノで開催された。ジロ・デ・ロンバルディアの翌日に行われるのが恒例で、レースを終えた有力選手たちがミラノへと移動しプレゼンテーションに臨む。今回は、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、今年総合2位となったリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファルマ・クイックステップ)といったビッグネームが参集。2015年2月で現役を引退すると表明したカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)も出席した。

 早速、全21ステージを見ていきたい。

■ジロ・デ・イタリア2015(星の数は難易度)

5月9日 第1ステージ サン・ロレンツォ・アル・マーレ~サンレモ 17.6kmチームタイムトライアル ★★★
5月10日 第2ステージ アルベンガ~ジェノア 173km ★★
5月11日 第3ステージ ラパッロ~セストリ・レバンテ 136km ★★★
5月12日 第4ステージ キアーヴァリ~ラ・スペツィア 150km ★★★★
5月13日 第5ステージ ラ・スペツィア~アベトーネ 152km ★★★
5月14日 第6ステージ モンテカティーニ・テルメ~カスティリオーネ・デッラ・ペスカーイア 181km ★
5月15日 第7ステージ グロッセート~フィウッジ 263km ★★
5月16日 第8ステージ フィウッジ~カンピテッロ・マテーゼ 188km ★★★★
5月17日 第9ステージ べネヴェント~サン・ジョルジョ・デル・サンニオ 212km ★★★★
5月18日 休息日
5月19日 第10ステージ チヴィタノーヴァ・マルケ~フォルリ 195km ★
5月20日 第11ステージ フォルリ~イモラ(イモラサーキット)147km ★★★
5月21日 第12ステージ イモラ~ヴィチェンツァ(モンテベリコ)190km ★★★
5月22日 第13ステージ モンテッキオ・マッジョーレ~イェーゾロ 153km ★
5月23日 第14ステージ トレヴィーゾ~ヴァルドッビアーデネ 59.2km個人タイムトライアル ★★★★★
5月24日 第15ステージ マロースティカ~マドンナ・ディ・カンピリオ 165km ★★★★
5月25日 休息日
5月26日 第16ステージ ピンツォーロ~アプリーカ 175km ★★★★★
5月27日 第17ステージ ティラーノ~ルガーノ 136km ★
5月28日 第18ステージ メリデ~ヴェルバーニア 172km ★★★
5月29日 第19ステージ グラヴェッローナ・トーチェ~チェルヴィナイア 236km ★★★★★
5月30日 第20ステージ サン・ヴァンサン~セストリエーレ 196km ★★★★
5月31日 第21ステージ トリノ~ミラノ 185km ★
総距離 3481.8km
個人タイムトライアルステージ 1
チームタイムトライアルステージ 1
スプリントステージ 7
中級山岳ステージ 5(うち頂上ゴール3)
上級山岳ステージ 4(すべて頂上ゴール)

 大会は2015年5月9日、イタリア北部の小さな街サン・ロレンツォ・アル・マーレで開幕。毎年3月のミラノ~サンレモで勝負どころとなる、チプレッサからほど近い位置にあたる。大会第1週は、イタリア西側のティレニア海に沿って南下。早々に山岳ステージが待ち受けており、中級山岳は第3ステージ、上級山岳は第5ステージから登場する。

第11ステージ、59.2kmの長距離タイムトライアル ©RCS SPORT第11ステージ、59.2kmの長距離タイムトライアル ©RCS SPORT

 第2週目はイタリア東側へと移動し、アドリア海に沿って北上。第11ステージでは、モータースポーツでおなじみのイモラサーキットにゴールする。大会中盤で大きな注目を集めるのが第14ステージ。59.2kmの個人タイムトライアルだ。個人総合争いにおいても正念場を迎えることになる。

 第3週は、そのほとんどがイタリアアルプスでの山岳ステージ。なかでも、第19ステージのチェルヴィナイア、第20ステージのセストリエーレ頂上ゴールは、前週第15ステージのマドンナ・ディ・カンピリオと並んで、総合争いを動かすステージとなるはずだ。

第19ステージは、難易度5つ星の山岳ステージだ ©RCS SPORT第19ステージは、難易度5つ星の山岳ステージだ ©RCS SPORT
標高2178mのチーマ・コッピ(最高標高地点)が設定された第20ステージ ©RCS SPORT標高2178mのチーマ・コッピ(最高標高地点)が設定された第20ステージ ©RCS SPORT

 最後はジロの華ともいえるミラノでのスプリントステージ。サン・ロレンツォ・アル・マーレのスタートラインについた選手たちのうち、何人が5月31日のミラノに到達しているだろうか。そして、バラ色のマリアローザに身を包む王者は誰になるのか、楽しみは尽きない。

ジロ・デ・イタリア2015ルートマップ。全体的に移動距離の少ない構成になっている ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2015ルートマップ。全体的に移動距離の少ない構成になっている ©RCS SPORT

 傾向としては、ほとんどのステージでレース距離が200km以下に抑えられている点が挙げられる。ジロらしく山岳は厳しく、長距離の個人タイムトライアルもあるが、各ステージの平均距離は165kmと短めに設定されているあたりは、選手の負担を減らすうえで重要なポイントといえるだろう。

 選手の負担の面では、ステージ間の移動距離がこの20年間で最短であることも見逃せない。一晩の移動で最も長いのは第9ステージゴール地サン・ジョルジョ・デル・サンニオから、第10ステージスタート地チヴィタノーヴァ・マルケまでの約300kmだが、次に長いのは最終ステージ前の50km程度の移動。これにより、レース後の長距離移動を何度も強いられる、といった余計な負担は回避できる。選手はもちろん、チームスタッフ、大会ならびに報道関係者にとっても恵みのステージ構成と言えそうだ。

 数々登場する山岳に関しても、近年に多く見られた標高2000メートル台後半の山々は登場しない。今回のチーマ・コッピ(最高標高地点)は、第20ステージのコッレ・デッレ・フィネストレの標高2178m地点。

 この発表にあたり、レースディレクターのマウロ・ヴェーニ氏は「難しいジロではあるが、バランスのとれた構成となっている」とコメントした。また、主催者のRCSスポルト社は「このルートのフィロソフィ(哲学)は、(ステージ間)移動の短さと現代のサイクリングとの連動性を高めるアプローチにあり、バランスを重視している」と発表。2015年のジロは、壮大な戦いのセオリーを守りつつ、運営面のコンパクト化や効率化を打ち出したと見て良さそうだ。

「ジロはいつもイタリアの美しさを表現」

プレゼンテーションでは有力選手たちがコースについての感想を語ったプレゼンテーションでは有力選手たちがコースについての感想を語った

 コースプレゼンテーション後半では、ジロ2014年大会で活躍した選手や、次回大会の主役候補たちがステージに上がり、トークを繰り広げた。一様に明るい表情で、発表されたコースへの好印象をうかがわせた。

 2015年シーズンはジロとツール・ド・フランスの“ダブルツール”制覇が目標と公言しているコンタドールは、改めてジロを目指すとアピール。「このコースは気に入っている。アグレッシブなライダーに向いていて、その意味で私にピッタリだ」と語った。続けて、「上りの厳しさもそうだが、ツールやブエルタとジロが大きく異なる点として、寒さや雪といった天候面が挙げられる」と述べ、近年のジロで勝負を左右している要素に目を向けている。

来季はチームメートになるイヴァン・バッソ(左)とアルベルト・コンタドール(中央)。今年総合3位だったファビオ・アールは、ヴィンチェンツォ・ニバリとの共闘に期待がかかる来季はチームメートになるイヴァン・バッソ(左)とアルベルト・コンタドール(中央)。今年総合3位だったファビオ・アールは、ヴィンチェンツォ・ニバリとの共闘に期待がかかる

 来シーズンからティンコフ・サクソ入りし、ジロではコンタドールのアシスト役となることが濃厚なイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)は、「ジロはいつもイタリアの美しさを表現している。過去2回の優勝もあって、ジロには大きな感情を抱いている。何より、(ステージ間)移動の負担を軽減するなど、ライダーの取り組みを最優先したヴェーニ氏には感謝している」と、レース以外の部分での充実度にも満足している様子。

 今年総合3位と大きく飛躍したファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)は、苦手のタイムトライアルをどうクリアするか。それでも、「よくトレーニングに出かけるセストリエーレをはじめ、多くのステージに好印象を持っている」と述べる。期待されるのは、チームメイトで今年のツールを制したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)との共闘。現段階ではアールがエース、ニバリはツール2連覇に向けた調整を兼ねての出場となり、主にアールのアシストとなる公算が大きいようだ。

 マイヨ・アルカンシエルを着るミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、オメガファルマ・クイックステップ)は、ジロ出場について未定だとしながらも、「出場するならばチームタイムトライアルで勝ちたい」とコメント。チームのお家芸であるチームTTでは、優勝候補の一角となることだろう。

 今回のコース設定には、「ジロにビッグネームを呼び込みたい」との主催者の意思が表れているとも言われている。前述の移動距離の短縮をはじめ、バランス重視のステージ構成、長距離個人TTなど、総合系ライダーにとって魅力ある大会にするためにさまざまなアプローチを施したようだ。今後、ジロとツール、ジロとブエルタといった具合に、“ダブルツール”獲得を目指す有力選手が次々に現れるかもしれない。

ジロ・デ・ロンバルディアはマーティンが優勝

 「落ち葉のクラシック」ジロ・デ・ロンバルディアは5日、イタリア・コモからベルガモまでの260kmで行われ、残り600mでのアタックを成功させたダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が初優勝。クラシックレースの中でも特に歴史と権威があるとされる「モニュメント」では、2013年リエージュ~バストーニュ~リエージュに続く勝利となった。

タイミングよく飛び出しジロ・デ・ロンバルディアを制したダニエル・マーティンタイミングよく飛び出しジロ・デ・ロンバルディアを制したダニエル・マーティン

 今年から新コースとなり、クラシックハンターや上れるスプリンター向きのレースに。主要な登坂区間は5カ所あり、ラスト5kmで迎える約1.2kmの上りで決定的な動きがあるものと見られていた。

上りではフィリップ・ジルベールらがアタックを仕掛けた上りではフィリップ・ジルベールらがアタックを仕掛けた

 予想通り、その上りで有力選手たちが動く。ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)がアタックを成功させると、上り途中の石畳区間も力強くクリア。後方からはフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)らが追随し、頂上を目前にウェレンスに合流した。

 9人に絞られた優勝争い。サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシングチーム)が得意の下りで加速をするも、ライバルを引き離すには至らず。先頭集団は1つのままラスト1kmのフラムルージュをくぐると、一瞬ペースが緩んだタイミングでマーティンがアタック。他選手はお見合いとなり、逃げ切りを許してしまった。

 優勝したマーティンは、「昨年のこの大会では、最終コーナーで落車しチャンスを失った。それから苦労の連続だった」と、不運続きだったこれまでを振り返った。今シーズンはリエージュの最終コーナー、ジロのチームTT、そしてブエルタとたびたび落車。前回のロンバルディアで落としたツキを、1年後の同大会でつかみ直すという、マーティンの意志の強さを表した優勝でもあった。

 なお、2位にはバルベルデ、3位はルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)と続いた。

表彰台に上ったアレハンドロ・バルベルデ、ダニエル・マーティン、ルイ・コスタ表彰台に上ったアレハンドロ・バルベルデ、ダニエル・マーティン、ルイ・コスタ
マイヨアルカンシエルを着てレースに臨んだミハウ・クフィアトコフスキーマイヨアルカンシエルを着てレースに臨んだミハウ・クフィアトコフスキー

今週の爆走ライダー-ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 人材が豊富なベルギー勢だが、近年はエースクラスや将来のエース候補が乏しいとされてきた。しかし、ここへきて次世代のタレントが誕生した。ティム・ウェレンス、待ちに待ったエース候補の到来だ。

 2012年7月にプロデビュー。シーズン途中でのプロ契約は、もちろん才能を買われてのもの。同年のツアー・オブ・北京で総合10位に入り、鮮烈なキャリアのスタートを飾った。

 ブレイクは2014年にやってきた。グランツールデビューとなったジロでは大会序盤、マリアローザに手が届きそうな位置を走り続けた。8月のエネコ・ツアーでは第6ステージで逃げ切りに成功。ベルギーやオランダの選手たちが重要視するレースで総合優勝を果たした。先日のロンバルディアでも、あわや逃げ切りかと思わせる走りで見せ場を作り、4位と健闘している。

ジロ・デ・ロンバルディアでは最後の上りでアタックし、大きな見せ場を作ったティム・ウェレンスジロ・デ・ロンバルディアでは最後の上りでアタックし、大きな見せ場を作ったティム・ウェレンス

 持ち味は登坂力と一瞬のアタック。逃げでレースを展開することも得意だが、最近はチームのエースを任されることも増えた。当面の目標はアルデンヌクラシックとなるようだ。

 それでも、将来的にはグランツールで総合争いをしたいという。なぜなら、身近に大きな目標がいるから。父・ヨハン氏は1981年ツール総合117位、1984年パリ~ルーベ34位の実績。伯父・ポール氏にいたっては、1978年の総合6位をはじめツール8回出場(ステージ通算2勝)、同年のツール・ド・スイスでは総合優勝している名選手なのだ。

 自転車一家に育った彼だが、まだ23歳と若い。父や伯父を越え、さらなる高みを目指すには十分な時間がある。類まれな才能と、無限の可能性が彼の走りには宿っているのである。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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