特殊な自転車で繰り広げる室内競技迫力ある戦いと華麗な演技 サイクルサッカーとサイクルフィギュアの魅力

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 サッカーのようにボールを蹴り、フィギュアスケートのように華麗な演技を披露する。室内自転車競技のサイクルサッカーとサイクルフィギュアは、自転車競技の中でも異質な存在だ。そんな室内自転車競技の魅力を探るべく、9月20、21日に大阪府吹田市の関西大学千里山キャンパスで開催されたドイツ・U19チームとの交流試合「ジャパンカップ」を取材した。(文・写真 中尾亮弘)

サイクルサッカーの迫力あるボールの奪い合いサイクルサッカーの迫力あるボールの奪い合い

体育館で競技を行う特殊な自転車

ドイツ選手によるサイクルフィギュアの演技ドイツ選手によるサイクルフィギュアの演技

 体育館のフロアに敷かれたボードやサッカーゴール、あるいは審査員席を見ると、フットサルか体操競技かと思えるだろう。しかし選手は自転車に乗ってボールを操り、さらに体操選手と同じ競技ウェアを着て自転車の上で逆立ちを始めた。このような不思議な光景が見られる室内自転車競技は、国際自転車競技連合(UCI)が定めるれっきとした公式競技だ。

 サイクルサッカーは2人ペアで、ハンドルさばきやバイクコントロールによって巧みにボールを操り、ゴールへシュートする。またゴール前ではペナルティーエリアで選手のどちらかがキーパーとなりボールを捕るなど、サッカーと同じようなルールで行われる。

 サイクルフィギュアは自転車の上での演技が評価される。選手が最大30種類の技を審判員に提出して演技を行い、減点評価で他の選手との優劣を決める。1人での演技の他にペア、団体といった構成もある。

サイクルサッカーの特殊な自転車サイクルサッカーの特殊な自転車

 自転車もそれぞれ特殊な作りとなっており、変速のない固定ギアで、ブレーキもない。サドルはサイクルサッカーはなんと後輪の上にあり、ハンドルはブルホーン状のバーを上に向けた状態だ。サイクルフィギュアもドロップハンドルは逆さまで、フォークはオフセットのないストレート形状となっている。これはハンドルを180°回転させても直進できるようにするためだ。

専用の自転車を操ってボールを扱う専用の自転車を操ってボールを扱う

驚くような技を連発したドイツU19チーム

 国内では日本室内自転車競技連盟(JFIC)が日本自転車競技連盟(JCF)加盟団体としてこの競技の運営・普及にあたっている。今大会「ジャパンカップ」はドイツのU19チームからサッカーは3組6人、フィギュアは選手6人とコーチ2人が来日した。ジュニア世代とはいえ室内自転車競技では世界でもっとも強いドイツの技術が見られる絶好の機会となった。

ドイツU19チームとの交流試合ドイツU19チームとの交流試合

 サイクルサッカーは試合時間の7分の間に攻守が激しく入れ替わる。ドリブルからパス、シュートという一連の動きはまさしくサッカーで、とても迫力のある試合展開が見られる。2人のチームなので攻撃の際はゴールが開いてしまうため、相手にスキを見せると点を入れられるという、気が抜けない戦いとなる。

 大会の結果はVfH 東京 1(木下直也・松田鋼)が優勝、準優勝に蔵前(藤田洋介・時倉宗大)。3位にRV Edelweis Bonlanden(マイク・ビューラー、セドリック・ヴォルファー)となった。

自転車の上で逆立ちもできる自転車の上で逆立ちもできる

 サイクルフィギュアは今回の大会ではエキシビションのため試合形式では行われなかった。とはいえ、ドイツから来た選手たちが繰り広げたのは、自転車の上での逆立ちや2人での肩車といった、驚くような演技の連続だった。また、滋賀にあるサイクルフィギュア育成団体「ブルーレイクエンジェル」のデモンストレーションや、ドイツとの交流演技も披露され、会場は華やかな雰囲気となった。

世界の強豪入りを目指す日本チーム

 ヨーロッパでは、室内自転車競技は100年以上の歴史をもつ。サッカー・フィギュアともドイツが世界選手権を常に制している。サッカーはドイツに続いてスイス、オーストリア、チェコ、ベルギー、フランスがAグループに入り、下位にあたるBグループに日本がいる。日本は過去、2008年にAグループ5位の実績を上げたものの、現在はAグループへの入れ替え戦出場を目指してフランスと争っている。

 フィギュアもドイツを筆頭にオーストリア、チェコのヨーロッパ勢、近年はアジアで香港、マカオが強くなり、日本がそれに続く。

選手は体の一部のように自転車を乗りこなす選手は体の一部のように自転車を乗りこなす

 国際大会における日本チームの成績も紹介しておこう。8月23日に大分県で行われたサイクルサッカーワールドカップでは、オーストリア・フランスに続いて3位となった。翌日のアジア室内自転車競技選手権大会では、村上裕亮・岡島紘次(RSV大阪)が香港・マレーシアを下して優勝。フィギュアは女子シングルU15に出場した中学3年生の近藤菜月が2位、同1年生の上嶋美音は3位になった。エリートは男子シングルの芦田史朗と女子シングルの佐藤凪沙がそれぞれ3位となった。

 日本の競技者人口は200人といわれ、主に大学生と社会人が主体となって活動している。また前述のサイクルフィギュアクラブ、ブルーレイクエンジェルは、全日本選手権10連覇を達成し初代アジアチャンピオンでもある堀井和美さんが代表・ヘッドコーチを務め、若年層からの育成に努めている。

滋賀のブルーレイクエンジェルとの交流練習も行われた滋賀のブルーレイクエンジェルとの交流練習も行われた

幼少期に始めることは「とても重要」

 あまり目にする機会の少ない室内自転車競技ではあるが、魅力はどんなところなのか? サイクルフィギュア選手のルーカス・コール君に聞いてみた。

ドイツ選手による圧巻の演技の数々が披露されたドイツ選手による圧巻の演技の数々が披露された

 「ドイツでは日本よりも室内自転車競技が広まっています。僕が所属するクラブには15人のサイクルフィギュアの選手が所属していて、バーゲンベルグ州だともっと多い。サイクルフィギュアはすごくアクロバティックなところが魅力で、それぞれの技に、それにあった練習方法があります。練習して着実にできるようになるのが面白い」

 また、世界の中ではドイツが一番強いのかと尋ねると、こんな風に答えてくれた。

 「そうです! 日本はサイクルフィギュアの選手が増えていて、上手くなっているのを見ると私としてはうれしい。また、とても礼儀正しいのがいいですね」

ドイツ選手から指導を受けるドイツ選手から指導を受ける
ブルーレイクエンジェルのメンバーの演技、日本のサイクルフィギュアの将来を担うブルーレイクエンジェルのメンバーの演技、日本のサイクルフィギュアの将来を担う

 コーチのマルコ・ロスマンさんは、ドイツで盛んな室内競技の状況や、日本の進歩について次のように語った。

 「ドイツの室内自転車競技の人口は5500人。そのうちサッカーは2500人で、ドイツ以外だとヨーロッパでの選手の数は500人くらいます。サイクルサッカーは攻守の入れ替わりが激しくて、いつでもゴールが生まれる、手に汗握るゲームです。まっすぐ行ったり、その場でターンをしたり、斜めになってもジャンプして足を着かないようにしたりとバランスが重要です。ドイツでは6歳くらいからサイクルサッカーを始めますが、最初の1年をしっかり練習すればボールを操れるようになります」

肩車で動くペアでの演技肩車で動くペアでの演技

 「15年前に来日したときは、そんなにレベルが高くなくて、ドイツジュニアが来たら問題なく勝てていました。これまで5回来日しましたが、今は日本はレベルが高くなってきて、勝つことが難しくなってきました。レベルが上がっていてうれしい。日本は昔、大学に所属しているクラブばかりだったから、小さい頃から始める人は少なかった。今はブルーレイクエンジェルのように小さい頃から始める人が多くなったので、期待がもてます。これはとても重要なことで、競技者が活動する構造が大学から地域へと変わりつつあることを意味します。日本に来ることはドイツジュニアの選手にも良い経験になります。また日本はオープンマインドで、『おもてなし』の心があるのがうれしいです」

ドイツU19のサイクルサッカー選手と関西大学自転車競技部の皆さんドイツU19のサイクルサッカー選手と関西大学自転車競技部の皆さん
ドイツU19のサイクルフィギュア選手とブルーレイクエンジェルの皆さんドイツU19のサイクルフィギュア選手とブルーレイクエンジェルの皆さん

12月の全日本室内選手権で「魅力を伝えたい」

 最後に日本室内自転車競技連盟の佐藤康彦さんにも国内における競技の現状や、競技の魅力を語っていただいた。

 「サイクルサッカーは過去2回、世界のAグループに入れました。今は入れ替え戦を行って、Bグループで1位にならないと上に上がれません。Bグループで優勝してAグループの下位に勝って、Aグループの世界の強豪と戦いたい。一方、フィギュアは滋賀県の子供たちがたくさんやり始めていて、あと3年ほどすれば世界選手権で上位に入れるレベルに来ている。そういう子供たちが続いていけば、底上げができると思います」

 「国際舞台としては、世界選手権、アジア選手権があります。サッカーはクラブ対抗のワールドカップが8戦、ポイントの高いチームがワールドカップチャンピオンをかけたファイナルに出場できます。ファイナルには10チームが出られて日本も参加していますが、日本は10位が最高です。日本では世界選手権の派遣選考会が7月にあり、今日のジャパンカップ、12月の全日本選手権の3つが全国レベルの大会です」

自転車にはこれだけ人が乗れる!自転車にはこれだけ人が乗れる!

 「特に、12月の全日本選手権はぜひ見に来てほしいです。サイクルサッカーは、これだけ迫力のある自転車でのボールプレイを見られる機会はなかなかありません。またサイクルフィギュアも、レベルの高い演技を間近で観戦できます。これまで日本ではなかなか魅力が伝わっていなかったので、ぜひ伝えたいのです」

 第45回全日本室内自転車競技選手権大会は12月20、21日に大阪市にあるBODYMAKERコロシアムにて開催される。

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