工具はともだち<57>“魂を入れる”熱処理 加熱と急冷によって硬く、粘りのある工具に

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 あっという間に衣替えの季節になってきましたね。朝晩は涼しくて、熱間鍛造などの加工現場も、多少は快適になりました。この季節になると大きなイベントも多くなり、読者の皆さまと直接お話ができる機会も増えるので、楽しく過ごせる休日が楽しみです。ところで、前回記事の最後でレアアイテムのステッカーを持っていないと書いたら、気を遣ったスタッフが1枚だけ…小さなステッカーをくれました。感謝です。

工具がきれいに仕上がる光景は感動モノ

今回紹介するのは、工具に“魂を入れる”熱処理の工程今回紹介するのは、工具に“魂を入れる”熱処理の工程

 ではでは、前回からの続きです。単純な形をした工具類ですが、実はかなりシビアに、そして手間をかけて作られています。今回は、皆さんにお届けする製品にさらに近づけ、安全な工具をお届けするための大切な工程(我々の間では“魂を入れる”とも呼んでいます)をご紹介します。

 これまでの加工で、ボルト・ナットと接する口径部を、想定通りの大きさに加工することができました。ただ、機械を使って加工をしているので、刃物でカットした部分の金属が鋭角だったり、抜き方向にむいてカエリが発生したりしている場合があります。

 そのまま手で触ってしまうとケガをしてしまう可能性もあるので、その部分をなめらかに仕上げなければなりません。例えばスパナの場合、頭部分の側面や平面部にサンドペーパーをあてて、なめらかにしていきます。10数年前、私が初めてこの工程を見たときに、モノづくりのすごさに感動したことを今でも覚えています。コンベアに乗って流れていく工具が、どんどんきれいに仕上がっていく光景は、皆さんにもぜひご覧いただきたいくらいです。

 さて、寸法どおり、そして狙った仕上げレベルまで加工された工具類。そのまま使っても大丈夫かな…と思えますが、まだまだです。スポーツで言えば、試合ができる人数が集まった状態に過ぎません。ボルト・ナットをしっかりと緩めたり、締めたりできる工具になるためには、ほどよい硬さと衝撃にも耐えうる粘りが必要になります。

④熱処理

 そこで、熱を加えることで工具に“魂”を入れていきます。製品に硬さを与えるために、加熱し、急冷します。「焼き入れ」と呼ばれる工程で、必要な硬さに仕上げていきます。鉄は、熱を加えれば硬くはなりますが、反面、もろさもあるため、粘りを与える必要が出てきます。そのため急冷後に再度、低温(といっても約400℃程度ありますが…)で熱を加えます。その工程は「焼き戻し」と呼ばれています。焼き入れと焼き戻しを行うことによって、硬くて粘りのある上質な工具が出来上がっていきます。

 工具は、叩いて形を作り、熱い中でトレーニングを加えることで、強く美しく仕上がっていきます。スポーツと同じで、チームを作っただけでは試合に勝てないように、さまざまな訓練を繰り返すことによって、強くなる必要があります。次回は、さらに美しく仕上げる工程、そして皆さんにお届けできるまでをご案内します。

◇         ◇

 メンテナンスの秋(?)ですので、KTCはイベントに出展して、皆さんに少しでも工具に触れていただける機会を作っていきます。さらにビッグなセールも11月から開催します。お手頃価格で手に入れるチャンスですので、ぜひご検討くださいね。

小池覚(こいけ・さとる)

KTC(京都機械工具)へ入社後、販売企画や商品開発に携わる。学生時代から二輪、四輪が趣味で、整備経験が豊富。自転車は実は始めたばかりだが、工具のプロとして、サイクリストにも整備の“いろは”を伝えることに燃えている。

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