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栗村修の“輪”生相談<32>19歳男性「一週間の1時間半で最も効率よく体力を維持する練習方法を教えてください」

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現在大学受験を失敗して1浪目の男性です。勉強が忙しくて自転車に乗る時間があまり取れません。一週間に1時間半がやっとなところです。

 そこで、その一週間の1時間半で最も効率よく体力を維持する練習方法を教えてください。ちなみにレース経験はありませんが、大学に入学できたらレースに出場してみたいと思っています。

(19歳男性)

 結論から言いますと、週に1時間半のトレーニングでも十分に、体力を維持どころか強化できると思います。もちろん、やれることとやれないことはありますが…。

 昔は、距離と時間を乗ってナンボ、という考えが主流でした。しかし、近年は考えが変わり、トレーニング時間は減少の傾向にあります。毎日ひたすら乗り込め!という時代じゃないんですね。もちろん、距離や時間を費やすことによってのみ得られるメリットというのもあるのですが。

 じゃあ、どうすればいいかですが、その前にまず、トレーニングの基本概念を確認したいと思います。

トレーニングは“体の破壊”トレーニングは“体の破壊”

 著書などでも繰り返し述べてきたことですが、トレーニングとは、体の破壊です。いったん破壊された体が回復すると、破壊前よりもちょっと強くなる。それがトレーニングです。ですから、トレーニングは必ず回復とセットです。回復とは、睡眠や、食事ですね。回復が終了してはじめて、トレーニングは終了するんです。

 しかし、トレーニング、すなわち体の破壊には程度があります。軽い破壊ならば、一晩寝れば治るでしょう。それが、毎日続けられるトレーニングです。でも、強烈に体を破壊すると、1日や2日では回復しません。質問者さんも、経験がありませんか?

 トレーニングは、必ず回復とセットである。また、トレーニングには程度があり、きつければきついほど、回復に時間がかかる。そして、質問者さんは週に一回、1時間半しかトレーニングができない…。

 これらの事実を総合すると、質問者さんが行なうべきトレーニングが見えてきます。それは、回復に1週間かかるトレーニングです。というより、むしろ、回復に1週間かかるトレーニングは、週1回以上行うべきではありません。オーバートレーニングになってしまいますからね。

 回復に1週間かかるトレーニングというのは、物凄くハードなものです。そこまでハードなトレーニングメニューが存在するか、あるいは存在しても実行可能かはわかりませんんが、とにかくハードに走るべきでしょう。ヘロヘロになって、回復に1週間かかるようなメニューです。

 具体的には、難しいことを考えずに、全力疾走でしょうね。アップとダウンはきついメニューほど重要なので、それぞれ15分確保するとして、残り1時間を全開で走ってみてはどうでしょうか。これは相当キツイですよ。

 引退したイェンス・フォイクトが最近更新した「アワーレコード」という競技があります。これは1時間にどれだけの距離を走れるかを競うものですが、プロでも精神的に苦しいと言われています。それを毎週です。けっこうこたえると思います。

アワーレコードに挑戦する、ツール・ド・フランス5連覇のスペインの英雄、ミゲル・インドゥライン(1994年)。ツール覇者ですら表情を苦痛にゆがませるアワーレコードに挑戦する、ツール・ド・フランス5連覇のスペインの英雄、ミゲル・インドゥライン(1994年)。ツール覇者ですら表情を苦痛にゆがませる

 プロであっても、1時間の全開走を毎日続けるのは不可能だと思います。2日に1回でも厳しい。3日に1回でも、長期的にみると故障に繋がるかもしれません。

 しかし、質問者さんには1週間という回復時間があります。ほとんどケガに近いまで体を追い込んでも、回復できるでしょう。2日に1回、それなりの強度で走るよりも、こっちのほうが効果的かもしれません。

 ただ、まったく運動していない状態で、いきなりこんなメニューをこなすと、体がびっくりしてしまうかもしれません。だから、日常の中に運動を取り入れる工夫も必要でしょう。たとえば、もし予備校に通っていらっしゃるならば、一駅前で降りて、早めに歩いてみてはどうでしょう。それも立派な有酸素運動です。エレベーターを使わず、階段で移動する。これも運動です。他にも、体幹トレーニングなど、勉強中でもできる運動があるかもしれませんよ。

 ボディビルダーが、あるメニューを週に1回だけ行う、ということがあります。それはサボっているのではなく、回復に1週間かかるためです。それと同じですね。距離や時間を乗り込むことも大切ですが、工夫しだいでやりようはいくらでもあるでしょう。受験とトレーニングが、両方ともうまくいくことを祈っています!

(編集 佐藤喬/写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会副ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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