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つれづれイタリア~ノ<35>35時間で獲得標高1万5千メートル イタリアでもっとも過酷な市民レースが誕生

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 とうとう9月に入りました。夏とはお別れです。イタリア人のもっとも好きな季節は夏ですから、この時期になると私もブルーになります。しかし、自転車競技はまだまだアツい。猛暑に追われているスペインではブエルタ・ア・エスパーニャが行われ、今月末には世界選手権も開催されます。イタリアでは秋のクラシック、ジロ・ディ・ロンバルディアやトリッティコ・ロンバルド(ロンバルディア州3戦シリーズ)などがあります。

 ホビーレーサーにとって秋は楽しい季節。ローマ、ヴェローナ、トレヴィーゾをはじめ、各地でたくさんの大会が開催されます。そのなかでもっとも過酷なレースが、この記事の公開から数時間後(日本時間午後4時)に始まろうとしています。その名は「Ultracycling Dolomitica(ウルトラサイクリング・ドロミティカ)」。

「マラトナ・ドレス・ドロミテス」などドロミテ山塊ではさまざまな大会が開催されている ©Maratona dles Dolomites「マラトナ・ドレス・ドロミテス」などドロミテ山塊ではさまざまな大会が開催されている ©Maratona dles Dolomites

世界自然遺産で繰り広げられる人気レース

 イタリア北部にはドロミテ山塊という広大な世界自然遺産があります。その面積は14万1903へクタール。3000mを超える山々がつながり、その美しさや地質学的、歴史的な価値が認められ、2009年にユネスコの世界遺産に認められました。

 ドロミテといえば、冬はイタリアが誇るスキーリゾート、夏は登山客のメッカです。毎年、ジロ・デ・イタリアの重要な山岳ステージが行われる場所でもあります。有名な峠や山は数えきれません。セッラ峠、ポルドイ峠、ガルデナ峠、ステルヴィオ峠、ジャウ峠など、自転車ファンの心をくすぐる名前ばかりです。

 市民を対象にしたグランフォンドやステージレースも数多く開かれています。そのなかで「Maratona Dles Dolomites(マラトナ・ドレス・ドロミテス)」と「Giro delle Dolomiti(ジロ・デッレ・ドロミティ)」は絶大な人気を誇っています。その特徴は、獲得標高と長さです。

■マラトナ・ドレス・ドロミテス
開催日:7月第1日曜日
走行距離:50km(ショート)~138km(ロング)
獲得標高:4,230m(ロング)
参加人数:9,000人
公式サイト:http://www.maratona.it/en/(伊語/英語)

■ジロ・デッレ・ドロミティ(ステージレース)
【全6ステージ】
開催期間:7月下旬
距離:715km
獲得標高:9,306m
参加人数:700人
公式サイト:http://www.girodolomiti.com/ (伊語/英語)

コースは「ドロミテ山塊をほぼ一周」

 しかし今年はドロミテ山塊で行われるレースの中に、シーズンの終わりを告げる新たなレースが加わりました。「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」というエクストリームロングコースの大会です。アメリカ発祥のスタイルの大会ですが、約35時間のレースでこれほどの厳しいコースを走る設定は今までありません。最も高い峠は標高2240m、走行距離580kmで獲得標高はなんと1万5000m以上です。

獲得標高15,000m以上におよぶ「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」のコースプロフィール獲得標高15,000m以上におよぶ「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」のコースプロフィール

 エクストリームロングコースとは、体力、走力だけでなく、マップリーディングに自信のある上級者向けの大会です。ソロでもチーム(2人、4人)でも参加できます。コースはドロミテ山塊をほぼ一周するようなものです。不正がないように各参加者にGPS機能付きのチップが渡され、大会中はオンラインで位置情報が大会本部に伝えられます。各アスリートにはサポートカーの同行が求められます。

コースに組み込まれているフェダイア峠コースに組み込まれているフェダイア峠
フェダイア峠の標高1800~1920mにかけては15%の勾配が続くフェダイア峠の標高1800~1920mにかけては15%の勾配が続く

 初開催の大会で、参加予定者は60人です。国籍は地元のイタリアを始め、オーストリア、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルグ、スロベニアなど。オープン参加の大会ですが、プロも出場可能。ブラジルからは女子強豪選手、ダニエラ・ジェノヴェズィ選手が参加します。

■「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」

走行距離:580km
獲得標高:15,000m以上
参加資格:18歳以上の男女(書類や実績による審査あり)
制限時間:男子 36時間、女子 40時間(最大)
スタート:9月5日(金)午前9時
ゴール制限:9月7日(日)午前2時
※交通法規遵守
参加費:
ソロ男子 270ユーロ、ソロ女子 200ユーロ
チーム2人 350ユーロ、チーム4人 400ユーロ
ソロ賞金:
1位 2000ユーロ、2位 800ユーロ、3位 400ユーロ
チーム賞金(各カテゴリー):
1位 500ユーロ、2位 300ユーロ、3位 150ユーロ
公式サイト:http://ultracyclingdolomitica.com/(伊語/英語)

悪天候は「大会の精神を表している」

 たくさんの大会があるなか、どうやってこのような大会を実現できたか、責任者のジョルジョ・ボーズィさんに聞いてみました。

「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」スタート地点となるコルディニャーノ市「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」スタート地点となるコルディニャーノ市

――この大会はどうやって生まれたか。

 「もともとは、北欧で行われるエクストラロング大会のため地元チーム『ASD Nova Virtus』のトレーナー、ロベルト・ジョルダーノが選手たちのトレーニングに提案したコースでした。それを新しい大会のコースにしないかと提案がありました」

――準備にはどれぐらいかかりましたか。

 「1年かかりました。世界一厳しいコースにする設定だけでなく、サポートとして訪れるスタッフやその家族、観光客をどうやってもてなすかについて、たくさんアイデアを出しました」

コルディニャーノ市の公式掲示板に掲載された「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」の大会案内コルディニャーノ市の公式掲示板に掲載された「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」の大会案内

――これだけ厳しく、ある意味で危険な大会だと、当局や行政の反応はどうでしたか。

 「最初はみんな半信半疑でしたので、大会には消極的な姿勢を示していました。しかし、話し合いの結果でコルディニャーノ市の全面的なサポートを受けました」

――大会の実施にあたって心配事はありますか。

 「天気です。今年は冷夏の影響で気温が低く、天気予報によると、いくつかの峠で雪が降る可能性があります。しかし、何人かの参加者はこの天気を歓迎しています。これ以上過酷なレースはないので『雪のような悪条件はこの大会の精神をきっちり表している』と喜んでいます(笑)」

リアルタイムで選手の位置がわかる

「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」コースマップ「ウルトラサイクリング・ドロミティカ」コースマップ

 さて、大会中の公式サイトでは、GPSをつけた選手たちの位置をリアルタイムで見られる面白いサービスが公開されます。山を愛する男としてこの大会の結果はとても気になります。やはりこのような過酷なレースには、一生に一度参加してみたい物ですね。来年はみんなで参加しましょう。

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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