産経新聞【被災地を歩く】より4年ぶりに開催された釜石トライアスロンに挑戦 スポーツを通じて一歩一歩着実に復興

  • 一覧

 岩手県釜石市は、安政4(1858)年に大島高任が西洋式の炉を築き、日本で初めて鉱石製錬に成功、「近代製鉄業発祥の地」となった。昭和54年から60年まで日本選手権7連覇を達成した新日鉄釜石ラグビー部は「北の鉄人」と呼ばれた。鉄と切っても切れないこのまちにはもう一つ、鉄と関わりの深い名物がある。水泳、自転車、長距離走のタイムを競う〝鉄人レース〟トライアスロンだ。4年ぶりに全3種目で復活した「釜石はまゆりトライアスロン」に挑戦した。(産経新聞東北総局・釜石駐在 高木克聡)

いよいよスイムがスタート。「絶対完走するぞ」のかけ声とともに、いっせいに海に飛び込んだいよいよスイムがスタート。「絶対完走するぞ」のかけ声とともに、いっせいに海に飛び込んだ

「絶対完走するぞ!」

 3日午前7時、復興の槌音が響く同市鵜住居(うのすまい)地区の根浜海岸。入念に準備体操をする屈強なアスリートたちに交じり、少したるんだ体の記者も受付登録を済ませた。天気は快晴で気温23℃、水温は22℃だった。気持ちのよい浜風が吹くが、日差しは強く、暑い一日を予感させる。参加者は一般109人、3種目を分担して走るリレーの部で35人が参加。記者はゼッケン番号100番だった。

 午前9時、「絶対完走するぞ」のかけ声とともに、選手らがいっせいに海に飛び込む。少し冷たい。遠くに三陸特有のリアス式海岸の切り立った美しい岩場が見えたが、景色を楽しむ余裕もなく、選手同士でもみくちゃになりながら750mを泳ぐ。

水は少し冷たいが、選手たちは元気に、激しく泳ぎ始めた(高木克聡撮影)水は少し冷たいが、選手たちは元気に、激しく泳ぎ始めた
スイムは750m。三陸特有のリアス式海岸が舞台だ(高木克聡撮影)スイムは750m。三陸特有のリアス式海岸が舞台だ
バイクコースでは沿道からたくさんの方々が応援してくれた(高木克聡撮影)バイクコースでは沿道からたくさんの方々が応援してくれた
美しい景観を楽しめるコースだが、浜風にはまいった!(高木克聡撮影)美しい景観を楽しめるコースだが、浜風にはまいった!

 次は自転車だ。コースは内陸方面に向かう。沿道では、仮設商店街の人々や地元の野球チームの少年らが仕事や練習の手を止めて温かい声援を送ってくれる。折り返し地点を過ぎ、再び海岸に方向転換。鵜住居川に沿った道では強烈な浜風が向かい風となって、容赦なく体力を削っていく。

ランコースの給水ポイント。地元の中学生たちもサポートしてくれた(高木克聡撮影)ランコースの給水ポイント。地元の中学生たちもサポートしてくれた

 ようやくゴールにたどりつき、いよいよ最後の長距離走だ。海沿いを走るコースで、復旧した漁港などが目に飛び込んでくる。もう足が思うように動かない。給水所では地元の中学生たちから大量の水をかけられるという、手荒な激励を受け、最後の一踏ん張り。無事に完走を果たした。

 職場の同僚と参加した盛岡市のインストラクター、我妻里美さん(38)は「以前参加したときと風景は変わっていた。震災の傷痕を感じた」と振り返った。

栄光のフィニッシュゲート。トライアスロン競技では、走り終えた誰もがヒーローだ(高木克聡撮影)栄光のフィニッシュゲート。トライアスロン競技では、走り終えた誰もがヒーローだ

 釜石市のトライアスロンは、平成2年から毎年開催されてきた。参加者は多いときで400人を超え、海外の有名選手も招待する国際大会だった。一昨年は水泳のみ、昨年は水泳と長距離走に限定していた。今年は五輪などの半分の距離で開催。一歩一歩着実に復興の道を進んでいる。

スタート前、岡山県倉敷市の有志(左の2人)が、特産品の桃を釜石市の野田武則市長に手渡して大会開催を祝った(高木克聡撮影)スタート前、岡山県倉敷市の有志(左の2人)が、特産品の桃を釜石市の野田武則市長に手渡して大会開催を祝った

 不思議な縁もあった。釜石市から約1200km離れた記者の故郷、岡山県倉敷市玉島地区では、地元のケーブルテレビ局が中心となり、復興ボランティアなどで根浜地区と交流を持ち、この日も5人が選手として参加していた。会社員の沼本(ぬもと)浩彰さん(43)は「初めて釜石を訪れた。遠く離れていて被災地の様子はなかなか伝わってこないけれど、実際に来てみると感じられるものがある」と話した。ゴールでは、玉島地区の特産品の桃が振る舞われ、参加者らは舌鼓を打った。

大会を支える人々

ゴールした選手たちを、釜石の伝統芸能「虎舞」が出迎えた(高木克聡撮影)ゴールした選手たちを、釜石の伝統芸能「虎舞」が出迎えた

 この日、大会を支えたボランティアは約300人。牛タンの味噌(みそ)焼きや釜石市の姉妹都市、東京都荒川区の備蓄米を活用した炊き込みご飯などを用意した「岩手県復興支援の会」の遠藤秀樹さん(58)は「さまざまなつながりで参加する人を増やすのも復興の一つだ」という。

 鵜住居地区は平成28年の岩手国体のトライアスロン会場となる。先日誘致を表明した31年のラグビーワールドカップ(W杯)の競技場も建設予定で、岩手県沿岸のスポーツの拠点としての復興が期待されている。

震災直後、トライアスロンの再開を誓う落書きがされたがれきを手に、復活を祝う参加者ら(高木克聡撮影)震災直後、トライアスロンの再開を誓う落書きがされたがれきを手に、復活を祝う参加者ら

 釜石トライアスロン協会の小林格也会長(76)は「大勢のボランティアの協力で、ここまできた。来年は通常の距離に戻す。次は国体だ」と胸を張った。

産経新聞より)

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

イベント トライアスロン

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載