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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<72>大物が集うブエルタ、コンタドールも出場を表明 バッソがティンコフ・サクソ移籍へ

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 2014年最後のグランツールであるブエルタ・ア・エスパーニャが23日に開幕します。かつては世界選手権の調整レースや、若手育成の一環といった趣もありましたが、ここ数年はシーズン後半最大の目標に据える選手も増えてきました。また、シーズン前半の不振や不運を払拭すべく活躍を期するビッグネームも続々。そこで今回は開幕直前情報として、前哨戦nの結果や、出場選手の動向をまとめていきます。

ブエルタ・ア・エスパーニャ出場を表明したアルベルト・コンタドール<Photo: Tinkoff-Saxo>ブエルタ・ア・エスパーニャ出場を表明したアルベルト・コンタドール<Photo: Tinkoff-Saxo>

ブエルタ前哨戦のおさらい

 まずは、ブエルタを控えた選手たちが多数集ったレースの結果を押さえておきたい。

 UCIワールドツアーは、8月11日から17日の全7ステージでエネコ・ツアーを開催。オランダとベルギーを舞台に行われるレースは、前半にスプリントとTTステージ、後半3ステージはアルデンヌクラシック並みの丘陵地でのステージ構成に。オランダ・ユトレヒトで開幕する2015年ツール・ド・フランスや、アルデンヌクラシックの将来的なコース変更なども視野に入れたプレ大会的な位置づけでもあった。

ジロでもステージ2位に入るなど好走をみせていたティム・ウェレンスが、エネコ・ツアーを制した(ジロ・デ・イタリア2014)<砂田弓弦撮影>ジロでもステージ2位に入るなど好走をみせていたティム・ウェレンスが、エネコ・ツアーを制した(ジロ・デ・イタリア2014)<砂田弓弦撮影>

 オランダ、ベルギーのチームが「地の利」をフルに生かし、レースの主導権を握った結果、第6ステージで大差の逃げ切り勝利を挙げたティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)が総合優勝。例年、僅差の総合争いとなるのがこの大会の特徴で、終始総合上位につけていたラルス・ボーム(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)が7秒差の2位と、今回も接戦に。個人TTで争われた第3ステージ(15.5km)では、トム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・シマノ)がファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)らを撃破。ワールドツアー初勝利を挙げ、総合3位と昨年(同2位)に続く好成績をマークした。

 スプリンターでは、ブエルタ出場を予定しているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ プロチーム)とナセル・ブアニ(フランス、エフデジ ポワン エフエル)が、それぞれ第1ステージ、第4ステージを制した。ブエルタにおいて総合争いだけでなく、スプリントステージでも勝利を狙えるチーム力を証明する格好となった。

 ブエルタ前哨戦として多くのチームが最重要視するのはブエルタ・ア・ブルゴス(スペイン、UCI2.HC)。スペイン北部の丘陵地帯を舞台に行われ、ほとんどのステージで主役となるのがクライマーだ。8月13日から17日まで行われた今回は、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)が参戦。総合優勝を果たしたジロ・デ・イタリア以降、コロンビアに帰国し地元でのトレーニングに集中していたが、戦線復帰でその走りに注目が集まった。

ブエルタ・ア・ブルゴスで総合優勝を飾ったナイロアレクサンデル・キンタナ<Photo: Movistar Team>ブエルタ・ア・ブルゴスで総合優勝を飾ったナイロアレクサンデル・キンタナ<Photo: Movistar Team>

 キンタナは期待通りの走りを披露。第3ステージの頂上ゴールを制してリーダージャージを獲得した。第4ステージでは、ゴール前の混戦でタイムを落とし、ダニエル・モレノ(スペイン、チーム カチューシャ)にその座を明け渡したが、最終の第5ステージ、12.4kmの個人タイムトライアルでステージ2位と快走し、モレノを3秒差で退け総合優勝。何より、課題とされてきたTTの改善が見られた点は、ブエルタ本番へとつながることだろう。また、モレノは総合優勝こそ逃したものの、ホアキン・ロドリゲス(スペイン)との共闘となるブエルタに向け、好調さをアピールした。

 なお、この大会をもってスペイン・バスク自治州を拠点としていたエウスカディが解散。トップチームだったエウスカルテル・エウスカディが昨年解散し、その下部組織にあたるチームは今年もUCIコンチネンタルチームとして活動してきたが、エウスカディ財団(バスク自治州の自転車支援団体)の資金確保が難しい状況となったという。今後は、自転車を通じての青少年育成や、アマチュアライダーのサポートへとシフトするとしている。

スティーフェン・クルイシュウィック<Photo: Belkin Pro Cycling Team>スティーフェン・クルイシュウィック<Photo: Belkin Pro Cycling Team>

 ノルウェーでは、第2回目となったアルクティク・レース(UCI2.1)が8月14日から17日の4日間開催。こちらはブエルタ組が少なく、シーズン後半のクラシックレースや世界選手権を見据えるメンバーが集結した。レースは終始、ベルキン プロサイクリングチームが主導。第1ステージでラーシュペッテル・ヌールハウ(ノルウェー)が制すると、上りゴールとなった第3ステージで2位に食い込んだスティーフェン・クルイシュウィック(オランダ)がリーダージャージを引き継いだ。第2、4ステージを勝利したアレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー)、第3ステージ勝利のシモン・スピラク(スロベニア)と、チーム カチューシャ勢の猛攻にあったが、クルイシュウィックが粘りの走りでジャージをキープ。プロキャリア初の総合優勝を飾った。

 今シーズン限りでの引退を発表しているトル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)にとっては、最後の凱旋レースとなった。第4ステージではラスト1kmでアタックし逃げ切りかと思わせたが、クリツォフにゴール直前で差し込まれてしまった。優勝こそならなかったが、地元のファンに力強さを見せ、大会を盛り上げた。

大物選手がブエルタ出場を続々と発表

 23日に開幕するブエルタに向け、各チームのメンバーが続々と発表されている。早くからブエルタ出場を宣言していた選手はもちろんのこと、ツール・ド・フランスで不振に終わった、またはトラブルや落車でリタイアなど悔しい結果に終わった選手などが、シーズン後半にもうひと花咲かせようと誓ってスペインへ向かう。

けが明けのコンタドールがどこまで復調してくるか注目だ(クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2014)<Photo: Tinkoff-Saxo>けが明けのコンタドールがどこまで復調してくるか注目だ(クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2014)<Photo: Tinkoff-Saxo>

 最大のトピックは、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)の参戦表明だ。ツール第10ステージの落車により右ひざ下の脛骨を骨折し、復帰の見通しが立たないとまで言われていたが、実際には8月上旬にはトレーニングを再開。10日間連続で走ることができるまでになっていたという。ブエルタ出場の決め手となったのは、日ごとに痛みが鎮まり、最終的には痛みなく山岳コースを走り通すことができたことだとしている。

 けが明けで、トレーニング不足でもあるとして、ブエルタでは総合成績を狙わないと述べるコンタドール。第3週でステージ優勝ができればとの考えを示している。とはいえ、「レースに臨む以上は勝つための準備をする」のが信条の彼のことだけに、どの程度まで仕上げてスタートラインに立つかがポイントになりそうだ。

 チーム スカイは、クリストファー・フルーム(イギリス)の出場を正式に発表。アシストに複数のクライマーを据えて本番に臨む。前述のブエルタ・ア・ブルゴス総合優勝のキンタナは、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)とともに、モビスター チームの2枚看板として頂点をうかがう。

今年のジロで表彰台に上がったウラン、キンタナ、アールがそろってブエルタに出場する<砂田弓弦撮影>今年のジロで表彰台に上がったウラン、キンタナ、アールがそろってブエルタに出場する<砂田弓弦撮影>

 キンタナとともにジロ・デ・イタリアの総合表彰台に上ったリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファルマ・クイックステップ)、ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)も出場が決定。ジロ以降目立った動きのなかったアールだが、8月に入りツール・ド・ポローニュで最終調整。現地関係者の間では、調子が良いとの情報も挙がっており、どれだけの走りを見せられるかに注目してもよさそうだ。

 ツール総合3位のティボー・ピノ(フランス、エフデジ ポワン エフエル)は、ブアニのスプリントを視野に入れるチーム事情もあり、自身はステージ優勝を目指す構え。山岳賞にも色気を見せており、積極的な走りを再び目にすることができるかもしれない。一方のブアニは、ジロに続いてのポイント賞獲得を目指す。

クリストファー・ホーナーは連覇に向け調子を上げてきた(ブエルタ・ア・エスパーニャ2013)<砂田弓弦撮影>クリストファー・ホーナーは連覇に向け調子を上げてきた(ブエルタ・ア・エスパーニャ2013)<砂田弓弦撮影>

 そして、ブエルタに向けて評価が高まっているのは、ディフェンディングチャンピオンのクリストファー・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)だ。ツール後はツアー・オブ・ユタで総合2位となり、好調をキープ。ユタでの仕上がりからしてブエルタでは再び総合優勝を狙える状態であるとの評判も。関係者だけでなく、プロトンからもホーナーを推す声があがっていることは見逃せない。

 総合争いやスプリント以外で見ておきたいのは、世界選手権を視野に入れる選手たちの動向だ。オメガファルマ・クイックステップでは、2度目のマイヨ・アルカンシエルに意欲十分なトム・ボーネン(ベルギー)が、ウランのアシスト役に加え久々のエーススプリンターを担う。個人TTでの世界選手権4連覇がかかるトニー・マルティン(ドイツ)もメンバー入り。一方で、ツールで落車負傷しリタイアに終わったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)は、レース復帰は果たしているもののブエルタ出場は断念。9月のツアー・オブ・ブリテンにスポットを当てる。

 同じく2度目の世界チャンピオンを目指すフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)、ロードレースでのアルカンシエル獲得に燃えるカンチェッラーラもブエルタを走る見通しだ。

 “鉄人”アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)は、10大会連続のグランツール出場が決定。2012年ブエルタから続く出場、そして連続完走記録の更新なるか。初出場のMTN・クベカは、スプリンターのゲラルト・ツィオレク(ドイツ)が中心のメンバー構成だが、9人中6人が南アフリカとエリトリアの選手で固められる。アフリカ籍のチームとして初のグランツールで、新風を吹き込むことができるだろうか。

バッソがコンタドールらと共闘へ

 ティンコフ・サクソは19日、イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)の移籍加入を発表。2年契約を締結した。

2015年シーズンからチームメートになるイヴァン・バッソ(左)とラファウ・マイカ<Photo: Tinkoff-Saxo>2015年シーズンからチームメートになるイヴァン・バッソ(左)とラファウ・マイカ<Photo: Tinkoff-Saxo>

 チームオーナーのオレグ・ティンコフ氏はバッソについて、コンタドール、ラファウ・マイカ(ポーランド)、先に移籍が発表されたペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール)と並ぶ存在だとしている。同氏が目指す「2016年には世界最高のチームを」という目標に近づくための要素の1つと考えているようだ。

 ジロ総合優勝を目指すマイカとのダブルエース態勢や、ツールでコンタドールをアシストするシーンなど、ベテランの知恵と経験が生かされる場面は今後数多くみられるはずだ。

今週の爆走ライダー-トム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・シマノ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 スプリンターチームとして確固たる地位を築くチームにおいて、貴重なオールラウンダーとして存在感を高めつつある。スプリントのイメージが強いチームゆえ、一見異質な存在にも見えるが、トレインの牽引役としても計算ができるスピードマンだ。

スプリンター中心のチームのなかで、数少ないオールラウンダーとして存在感を見せるトム・ドゥムラン(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>スプリンター中心のチームのなかで、数少ないオールラウンダーとして存在感を見せるトム・ドゥムラン(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>

 それもそのはず、23歳にしてオランダが誇るTTスペシャリストに成長。独走力や巡航力が高く、ロードステージでは状況に応じたスピード変化でエーススプリンターの勝利に貢献する。

 上りの強さも魅力。相性の良いエネコ・ツアーでは、2013年総合2位、そして今年は総合3位。TTでタイムを稼ぎ、丘陵区間でも攻撃的に走れる実力をもち、将来的にステージレースの総合争いの常連となる可能性は十分。特に今回は、丘陵ステージで早々にアシストを失い単騎での走りを強いられるなど、苦しい局面を迎えながらも総合表彰台は死守。局面打開や登坂力への評価が高まった。アンダー23時代からあと一歩で優勝を逃すことが多かったというが、第3ステージでワールドツアー初勝利を挙げたように、一歩一歩階段を上っていることは確かだ。

 昨年からはオランダ代表の主力でもあり、今年も世界選手権の代表入りが期待される。舞台となるスペイン・ポンフェラーダは彼向きのコースレイアウト。次世代のTTスペシャリストが次に目指す高みは、世界選手権TTでのメダル獲得と、ロードでオランダチームを好成績に導くことにある。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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