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つれづれイタリア~ノ<番外編>U23日本ナショナルチームも出場 のどかなイタリアの村が築き上げた“プロ級”の国際レース

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 イタリア・トレヴィーゾ県ポッジャーナで8月10日、U23(23歳未満)の選手たちのためのロードレース「第39回GP SPORTIVI DI POGGIANA(グランプレミオ・スポルティーヴィ・ディ・ポッジャーナ)」が開催されました。人口1000人足らずのポッジャーナ村は、イタリア北部のどこにでもあるような農村で、トウモロコシ畑の中に教会、2軒のバールが立つだけの、民家も少ない場所です。特産はトウモロコシ、白アスパラガスと、プロセッコと呼ばれているスパークリングワイン。しかし8月になると、イタリアでもっとも注目されるU23ロードレースが毎年開かれるのです。

U23日本ナショナルチームがイタリアの「グランプレミオ・スポルティーヴィ・ディ・ポッジャーナ」に出場U23日本ナショナルチームがイタリアの「グランプレミオ・スポルティーヴィ・ディ・ポッジャーナ」に出場

若き日のパンターニも走った伝統のレース

 このレース(UCIカテゴリー1.2 MU)は毎年8月の第2土曜日に行われ、これまで出場したチャンピオンたちはそうそうたるメンバーです。マウリツィオ・フォンドリエスト、マルコ・パンターニ、マヌエーレ・モーリ(ランプレ・メリダ)、パオロ・ティラロンゴ(アスタナ プロチーム)、ルカ・パオリーニ(チーム カチューシャ)、ダニエル・オス(BMC レーシング)、エンリーコ・バッタリーン(バルディアーニ・CSF)らイタリア人選手のほか、ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、トレック ファクトリーレーシング)、アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、チーム カチューシャ)らも名を連ねています。

カザフスタンナショナルチームなど、イタリア籍のチームも参加カザフスタンナショナルチームなど、イタリア籍のチームも参加

 今年は地元の強豪チーム、ザルフのほか、イタリアが誇るU23チームのコルパック、マルキョル、トレヴィジャーニが参加。そのほかにイテラ カチューシャ、レデンスカ・クオタ、チロル サイクリングチーム、ドイツナショナルチーム、オーストラリアナショナルチーム、カザフスタンナショナルチーム、日本ナショナルチームも参戦し、国内外から33チーム、延べ163人がスタートリストに名を連ねました。賞金総額は7640ユーロ(約105万円)。現在、このレースは未来のチャンピオンを発掘する場となっているのです。

 今年の優勝者は1995年生まれのオーストラリアの期待の星、ロバート・パワー(オーストラリアナショナルチーム)。逃げ集団を引き離し、2位に1分25秒差をつけて優勝。わずか19歳の選手ですが、未来のカデル・エヴァンスとして注目されています。2位はイタリア期待の選手、アンドレア・トニアッティ(ザルフ・エウロモビル・デズィレ・フィオル)、第3位にもイタリアのルカ・キリコ(MG KVISトレヴィジャーニ・ノルド)が入りました。

“将来のカデル・エヴァンス”と期待されるロバート・パワーが優勝“将来のカデル・エヴァンス”と期待されるロバート・パワーが優勝
表彰式はこの華やかさ表彰式はこの華やかさ

U23でも厳しいコース設定

U23のカテゴリーながら、コースやレース展開は過酷U23のカテゴリーながら、コースやレース展開は過酷

 このレースの魅力の一つは、厳しいコース設定。イタリアのレース全体に当てはまる話ですが、U23のレースであってもプロ顔負けの厳しいコースになっています。全長178km、細かいアップダウン、15%を超える上りとテクニカルなダウンヒル。山間部と平坦部を組み合わせた周回コース。山に入ると、集団は数グループに分かれてしまう運命なのです。参加しているチームも、プロ入りが期待される選手を出場させるので、競技レベルは年々上がっています。

 大会運営もプロのレース並みです。メディアセンター、ゴール前の横断幕、ポディウムガール、スポンサーカー、ラジオ・コルサと呼ばれるサポートカーへの通信システム、沿道に集まる多くのファン。まるでジロ・デ・イタリアのステージを見ているようです。もともと地元の小さな自転車協会が始めたレースですが、地域の全面的なサポートとスポンサーの協力を得て、国際的なレースにまで成長しました。

ポディウムガールがこんなにいますポディウムガールがこんなにいます
スポンサーカーが会場を彩るスポンサーカーが会場を彩る

 ゴール会場ではファンのためにテンポのいい音楽が流れ、まるでクラブにいるような錯覚に陥ります。さらにアイスクリーム、ピザ、パニーニをはじめ多くの地元グルメの売店が出て、ビールやワインを片手に選手を楽しく応援する人がほとんど。笑顔の絶えない大会です。

できたてのパニーニなど、グルメも会場での楽しみできたてのパニーニなど、グルメも会場での楽しみ
ゴール会場はプロのレースさながらの雰囲気ゴール会場はプロのレースさながらの雰囲気

「地域を盛り上げれば理解が深まる」

 レース運営の最高責任者でありジャンピエトロ・ボニン氏に、この規模のレースを行ううえでのポイントについて聞きました。その回答はとても興味深いものでした。

 「イタリアでサイクルロードレースを行ううえで、課題がないとは言えません。まずは地元の理解が必要。一般道を使うレースですので、住民などに迷惑をかけますし、事前の準備はとても大事です。そして住民を参加させることが、重要なポイントの一つ。地域全体を盛り上げれば、理解が深まるはずです。おかげさまでトレヴィーゾ県は伝統的に自転車競技が盛んな地域でありますが、毎年、地域住民への説明会やメディア対応、スポンサーの募集は入念に行わなければなりません」

小さな農村のポッジャーナで、イタリア有数のU23レースが毎年開催されている小さな農村のポッジャーナで、イタリア有数のU23レースが毎年開催されている

 「このレースの取り組みは1970年代の小さなイベントに始まったのですが、いまではポッジャーナのみならず周辺の街を含め、地域を代表するスポーツがサッカーではなく自転車競技になりました。そんな成功によって、この地域はジロ・デ・イタリアのスタート地点となりました(2007年と2013年)。ジロ・デ・イタリア・ドンネ(女性版ジロ)もここから2回もスタートしました」

「ずっと出場していきたい」 浅田顕監督インタビュー

 U23日本ナショナルチームから出場したのは、徳田鍛造、徳田優、石橋学、山本隼、黒枝士揮、小石祐馬の6人。チーム最高位は徳田優の58位でした。チームを率いる浅田顕監督に、このレースのこと、そして参加する意義を聞いてみました。

U23日本ナショナルチームと浅田顕監督U23日本ナショナルチームと浅田顕監督

――レースはいかがでしたか

 浅田監督「今回は2回目の出場でしたが、6人中4人が初めての参加でした。結果に関しては、もう少しがんばれたらよかったと思いました。昨年は後半勝負でしたが、今年のレースはものすごく早い段階で動き、30人以上の選手が逃げてしまった。ただ、日本の若い選手にとっていい経験になったと思います。このレースはヨーロッパのU23のレベルを計るバロメーターになっているので、できればずっと出場していきたいです」

――イタリアにおけるU23の存在はどんなものですか

表彰式はご覧の人だかり。住民からの関心は高い表彰式はご覧の人だかり。住民からの関心は高い

 「日本の方々はプロのレースに興味があり、若い選手のレースについてはそれほど関心がないかも知れません。しかしこのレースは、ずいぶん歴史があるのと、地域的に自転車が盛んということもあって、強い選手が育っていきます。なのでプロのレースと同じようにみんな注目している大会です」

――日本でこのように自転車競技を盛り上がるには、どうすべきでしょうか

 「日本は競技をする文化だけでなく、応援する文化がもっと高まってくれればいいと思います。それからボランティアの努力で作っているレースなので、日本でこのようなレースが増えてくると、地元の関心も高まってくるし、自転車競技ももっともっと成長するのではいかと思います」

イタリア自転車レースカレンダー

 イタリアへ行ったら、ぜひ一度レースを見てほしいものです。イタリア自転車競技連盟がとても使いやすいデータベースをアップしていますので、全部イタリア語ですがぜひアクセスしてみてください。プロからアマチュアまで、公認レースが掲載されています。

文・写真 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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