景観も、グルメも魅力被災地の“いま”を自らの脚で感じて 「ツール・ド・東北」220kmコースを試走

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昨年(2013年)の大会の光景。津波で甚大な被害を受けた女川町の道を駆けた昨年(2013年)の大会の光景。津波で甚大な被害を受けた女川町の道を駆けた

 東日本大震災の復興を支援し、震災の記憶を未来に伝えていこうと9月14日に開催されるサイクリングイベント「ツール・ド・東北2014」。宮城県石巻市を出発し、三陸の海岸を駆け抜けるロングライドイベントだ。あの大震災からまもなく3年半。被災地の状況を知ることも狙いであるこの大会のコースを、主催者であるヤフーの自転車同好会の皆さんとともに試走した。

(レポート 佐藤喬)

獲得標高2357m! 大会最長の「気仙沼フォンド」コース

 第2回目迎えるツール・ド・東北は、今大会から220㎞コースを新設。170km、100km、60㎞と合わせて4つのコースが設けられ、参加者は脚力に応じてエントリーした(申し込み受付は終了)。また、コースの途中に多数のエイドステーションが用意され、東北の海と山の幸を味わえるのも魅力だ。

スタート後しばらくは平坦なコース。心地よく走ることができる(佐藤喬撮影)試走をスタート。しばらくは平坦なコースで、心地よく走ることができる

 今回走ったのは、最も長い220kmの「気仙沼フォンド」コース。石巻を出発してから一路、宮城県気仙沼市を目指して太平洋沿いを北上。そして気仙沼で折り返して南下し、再び石巻へと戻るコースだ。

 200kmを超えるコース距離以上に注目したいのが、2357mという獲得標高。ヒルクライムでもないのにこれだけの獲得標高があることから、一筋縄ではいかないコースであることは明白だ。コースの高低図は、まるでノコギリのように見える。試走ではコースの安全性や誘導方法なども確認するため、あまりペースを上げることはできない。このため2日に分けて走る計画とし、大会当日は折り返し地点になる気仙沼に宿泊して、2日目に戻ることになった。

ジェットコースターのようなアップダウン

 あまり情報のないままやってきた筆者は、現地でコースプロフィルを確認し、改めて尻込みしてしまった。仕事とはいえ、カメラを抱えながらひとりでこのコースを試走するのは、正直言ってツライだろう。

大会の会場となる石巻専修大学を、ヤフー自転車同好会の皆さんと一緒にスタート(佐藤喬撮影)大会の会場となる石巻専修大学から、一緒に走ってくれたヤフー自転車同好会の皆さん

 しかし、スタート地点にはヤフー自転車同好会という強力な仲間たちが待っていてくれた。前回の大会への参加経験もあり、コースも熟知している。おかげで、安心して走り始めることができた。大会当日の参加者も、大勢の仲間たちと走り出すことは、きっと心強いに違いない。

 当日のスタート地点となる石巻専修大学から出発。Yahoo! トレインの最後尾でのんびりと走る。東北の空は澄んでいていて美しい。

 しかし、やがて上りが現れる。といっても、本格的なヒルクライムではなく、ちょっとした丘といった印象だ。速い人ならば、ギアはアウターのままこなしてしまうだろう。上りの後には気持ちいい下り。慎重にワインディングを楽しむ。

ちょっとした上りが続く(佐藤喬撮影)ちょっとした上りが続く(佐藤喬撮影)
コースからは、穏やかな海を望むことができた(佐藤喬撮影)コースからは、穏やかな海を望むことができた(佐藤喬撮影)

 海沿いを走るコースからは、太平洋が見える。かつて沿岸を襲ったとは思えない、穏やかで美しい海だった。

 そのうち、メンバーの口数が減ってきた。走りに集中しはじめたのだ。というのも、コースは上りと下りばかりで、平坦がほとんどない。ひとつひとつは短い上りでも、繰り返すうちにだんだんと脚にくる。頻繁に補給食を摂りながら走ったが、大会当日はエイドステーションが大活躍してくれるはずだ。

上りをこなす。このあたりはまだまだ余裕(佐藤喬撮影)上りをこなす。このあたりはまだまだ余裕
トンネルには要注意(佐藤喬撮影)トンネルには要注意

 上った後は、快適なダウンヒルが待っている。直線でもなく、つづら折りでもない下りでは気持ちいいワインディングを楽しめる。美しい風景と適度なアップダウンが続くコースは、全国的にも貴重なのではないだろうか。ちなみに、コース上にはトンネルもいくつか登場するため、前後のライト装着が義務付けられている。

 その後無事に気仙沼に到着。海の幸で一日の疲れを癒した。

3.11の爪痕

 翌日は復路。気仙沼から南下する。

大きな被害を受けた気仙沼向洋高等学校(佐藤喬撮影)大きな被害を受けた気仙沼向洋高等学校
津波は、建物のこの高さまで押し寄せた(佐藤喬撮影)津波は、建物のこの高さまで押し寄せた

 途中で、東日本大震災の津波による被害が大きかった地域を通過する。道の脇には、海水によって押し曲げられたままの手すりや、窓がない無人の建物が残っている。2011年の3月11日には、今走っているこの場所にも津波が押し寄せたのだ。被害の大きさと、決して簡単ではない復興への道のりを全身で感じながら走る。

 やがて、往路同様のアップダウン。2日目ということもあり、前日以上にきつい。本来なら1日で走り切る気仙沼フォンドコースだが、相当の健脚向きといえるだろう。

 しかし、各地に用意されるエイドステーションが励みになるはずだ。ツール・ド・東北のエイドステーションは、ただの補給所ではない。地元の名産品が疲れたライダーたちを待っている。

大会本番と同じフカヒレスープを振る舞っていただきました(佐藤喬撮影)大会本番と同じフカヒレスープを振る舞っていただきました

 この日は、当日170㎞地点のエイドステーションになる「南三陸ホテル観洋」で、特別にフカヒレスープ(!)をごちそうになった。フカヒレを補給食にできるイベントなんて、そうはないだろう。もちろん、スープは大会当日も用意していただけるので、参加される方はお楽しみに。

ゴールしたヤフー自転車同好会の皆さん。 険しく美しいコースを走りきった充実感も、この大会ならではのものだろう(佐藤喬撮影)試走をゴールしたヤフーの皆さん。 険しく美しいコースを走りきった充実感は、この大会ならでは

 美味しい補給があれば、もっとがんばれる。北上川沿いの風に苦しみつつも、全員で再び石巻専修大学に帰ってくることができた。アップダウンをこなしながら、険しくも美しいコースを走り続けた220㎞という距離は、通常のロングライドでは味わえない達成感をもたらしてくれる。

ブレーキや、フロント変速機の調整をしっかりと

 コースには平坦部分は少ないため、上りと下りを楽しむべく山岳向けの軽量ホイールを選ぶといいかもしれない。また、ダウンヒルの安全のためにも、タイヤはコンディションの良いものを履いておきたい。ブレーキと、使用頻度が増えそうなフロント変速機の調整もしっかりと。

大会当日は、復興を自分自身の目で確かめながら、素晴らしいコースとおもてなしを楽しめることだろう(佐藤喬撮影)大会当日は、復興を自分身の目で確かめながら、素晴らしいコースやグルメを楽しめることだろう

 ツール・ド・東北はレースのように速さを競うイベントではないが、走りごたえのあるコースだ。とりわけ220kmの「気仙沼フォンド」コースは、かなりの上級者でも十分に楽しめる。普段では味わえないアップダウンやエイドステーションのご馳走なども贅沢。大人気の大会になっている理由が分かった気がした。参加する方々は大会当日、震災からの復興を自分自身の目で確かめながら、素晴らしいコースを楽しんでほしい。

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