舞台は茅葺き屋根の里懐かしい日本の風景を駆け抜ける「京都美山サイクルグリーンツアー」 1000人以上が快走
京都府の中央部に位置する南丹市美山町で8月2日と3日、複合型サイクルイベント「京都美山サイクルグリーンツアー」が開催された。3回目を数えた今年は、参加者が1168人と初めて1000人を突破。美山の風景を堪能できる最長140kmのロングライドや、子供も楽しめるウィーラースクール、また地元食材をふんだんに使ったエイドステーションの補給食、イベントを盛り上げた豪華なゲストなど、盛りだくさんの内容で行なわれた。(写真・レポート 中尾亮弘)

蒸し暑い京都市内から北西に車で約1時間、美山町は日本の原風景を色濃く残す地域として知られ、茅葺き屋根の里が今でも地元住民の民家として使用されている。ここ美山では子供向け自転車教室「ウィーラースクール」代表のブラッキー中島さんが“日本全国のサイクリストに美山へ訪れて走って欲しい”という理念のもと、『自転車の聖地プロジェクト』を推進している。「京都美山サイクルグリーンツアー」はその集大成と位置づけられるイベントだ。
メーンイベントは「ロングライドチャレンジ140」。町の中心である南丹美山支所をスタート・ゴールとして、放射状に設定された10カ所のチェックポイントを制限時間内に回る。コース上には美山の名所である「かやぶきの里」や、毎年5月に開催されている「美山ロード」の難所“九鬼ヶ坂”もあり、完走すれば美山の隅々まで走る事になる。
豪華なゲストと美味しい食べ物、そして美しい風景
イベント当日は曇り空で、走るのには快適な気温となった。開会式の後、朝7時のスタートから参加者が順次走り出した。参加者は親子連れも多く、小さな子供のいる家族には、大会からチャイルドトレーラーが貸し出された。年配の参加者も多く、自転車に乗る全てのサイクリストを受け入れることができた。
ゲストライダーにはこの大会に連続して参加している、元プロロードレーサーの山本雅道さんと元バレーボール日本代表の益子直美さん夫妻をはじめ、元バレーボール日本代表の山本隆弘さん、バルセロナ五輪シンクロナイズドスイミング・銅メダリストの奥野史子さん、長野五輪ショートトラックスピードスケート500メートル・金メダリストで現役競輪選手の西谷岳文選手らが参加。一般参加者とともにスタートしていった。MCを務めるサイクルナビケーターの絹代さんも自ら走り、エイドステーションのレポートを会場MCの新田シンジさんを交えて実況した。
コース上で参加者をある意味悩ませるのは、5カ所設けられたエイドステーションだろう。各場所それぞれ特色ある地元食材を使った食事が提供され、全てを食べるのが大変なほどだ。大野では鯖にぎりや草餅、鶴ケ丘は鹿コロッケや特製ケーキ、宮島では冷やしうどんと地玉子のプリン、平屋はおにぎりにかき氷、地井では鹿カレーや鮎の冷や汁といった、地元の皆さんがこの日のために用意してくださった手作りの逸品が、ずらりと参加者を待ち受けた。
他にも夏野菜や紫蘇ジュースにスイカといった果物も並び、参加者は走る事を忘れるくらい(?)地元の味を堪能した。ゲストライダーの奥野さんは娘さんをチャイルドトレーラーに乗せ、スタート地点から一番近いに宮島へと一直線。プリンをおいしそうに食べていた。

もちろん自転車で走れば、美しい山々に囲まれる。田んぼには稲が伸び、綺麗な水が流れる小川といった風景は、まさに私達が想像する日本の農村だ。「かやぶきの里」が見えるとコースから一旦外れて間近に近寄る人達も多い。雄大な由良川沿いを走る大野や、険しい唐戸渓谷を走る芦生といった周辺も、また見応え・走り応えがある。
チェックポイントは幹線道路から外れて、細い道を辿った先の民家の軒先で、住人が出迎えてくれる。ここでは温かい会話が交わされ、そこでは美山の良さが自然と話題に上る。参加者の多くは美山の自然と暮らしの素晴らしさを感じ取ったことだろう。
子供から大人まで、全ての人が体感できる自転車の素晴らしさ
自転車に乗り馴れない子供は、ウィーラースクールで自転車の乗り方を学んだ後に、自転車に乗って川遊びに出かけた。川沿いの道をみんなで走り、目的地では水辺の生き物を捕まえた。
こうして子供から大人までもが目的地を目指して走り、自転車で移動する楽しみを感じる。イベントに来た全ての参加者が“自転車で走る喜び”を体験できるのが「京都美山サイクルグリーンツアー」のコンセプトなのだ。
台湾の台中から6人で参加したゴ・ケイブンさんは「(大会スポンサーの)サンボルトさんの繋がりからブラッキーさんの招待で参加しました。めっちゃ楽しかったです。台湾ではこのようなサイクルイベントがない。美山は綺麗で現地の人の優しいもてなしの感じか良かったです」と語り、仲間の人達も満足されたようだった。
ロングライドチャレンジ140ではゴールした後、チェックポイントで付けてもらったバンドの数にあった完走証を受け取る。「次は(140km)完走を目指すぞ」の声も聞かれた。
今大会では残念ながら、参加者と一緒に走っていた南丹市の佐々木稔納(としのり)市長が、後続から来たバイクと接触し腰の骨を折る重傷、参加者2人も怪我をする事故が発生した。「今後10年はこのイベントを開催したい」と開会式で熱く語っていただくほど尽力されただけに、早い回復を願いたい。