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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<70>ストーブリーグが活性化、去就が注目される大物選手たち これまでの移籍確定情報もチェック

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 ツール・ド・フランスが終わり、ビッグネームは次の展開に向けて一旦ブレイク期間に。一方で各チームは、この時期に各地で行われるレースと並行して、所属選手との契約更改や他チームで走るお目当ての選手へのオファーなどで慌ただしくなります。今回は移籍情報が解禁となった8月1日以降の動向をメーンに、今シーズン終了後の去就が注目される選手の動きに注目してみます。

サイクルロードレースの移籍市場

 選手の移籍は例年8月1日が契約解禁日となっており、それ以前の契約や公表はUCIによって禁止されている。とはいえ、契約最終年を迎える有力選手へは早い段階から他チームがオファーを出し、水面下での交渉に入っているのが実情だ。あくまでも、7月31日まではサイン(契約)やメディアへの公表を行ってはいけないとされているだけで、口頭合意や仮契約を行い、それ以上は他チームとの交渉の席には就かないよう素早く手を回すチームもある。

新天地でも活躍を見せるクリストファー・ホーナー(ツール・ド・フランス2014)新天地でも活躍を見せるクリストファー・ホーナー(ツール・ド・フランス2014)

 ビッグネームにいたっては、シーズン序盤から移籍の噂が出ることが多く、コアなレースファンであれば、ツール・ド・フランスの頃にはある程度の見当がついてしまうことさえある。もちろん、それまで話題にも上らなかったチームへサプライズ移籍を果たす選手や、今年初めのクリストファー・ホーナー(アメリカ)のランプレ・メリダ加入や、サムエル・サンチェス(スペイン)のBMCレーシングチーム入りといった、ドタバタ劇や無所属状態を経て契約を獲得するケースもこの世界ではときどき起こる。

 ストーブリーグを分析するポイントは、加入する選手のレベルや人数によって、チームの本気度や勢いが現れる点にある。当然のことながら、資金力があるチームほどビッグネームをそろえやすい。移籍が決定した選手について、新チームでの待遇がいかなるものか、どのような役割を担うのかを想像するのもストーブリーグの楽しみ方だ。チームの意向やコンセプト、選手の競技スタンスが絡み合うなか、双方がどう折り合いをつけるのかに注目してみてほしい。

 また、現所属チームとの契約延長には時期の縛りがなく、春の段階でチームと合意に達する選手や、グランツールなどでの大活躍を機に大幅な待遇改善のもと延長が発表される選手も出てきている。

 詳しくは、昨年のこの時期に執筆した当コーナー<23>もご参照されたい。

注目はサガン、ウィギンス、エヴァンスら

 今後、各チームや選手本人から続々と移籍が発表されることになる。今年のストーブリーグは、春頃までは目玉選手に欠けると言われていた。しかし実際には、そんなことはなさそうだ。

移籍か残留か最も注目を集めるペテル・サガン(ツール・ド・フランス2014)移籍か残留か最も注目を集めるペテル・サガン(ツール・ド・フランス2014)

 最大の注目選手は、ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール)。チームとの契約は今年が最終年で、かねがねあらゆる移籍先候補の名が挙げられていた。8月4日にはツイッターで「自分の将来をどうするかで頭がいっぱいだ」と発言。そこに記されたチーム名は、キャノンデール、2015年活動開始とされる「チーム アロンソ」、アスタナ プロチーム、ティンコフ・サクソの4つ。ティンコフ・サクソは、8月7日と9日に「大きな発表」を行うとしており、それが果たしてサガンに関わるものなのか注目される。

 キャノンデールは、イヴァン・バッソ(イタリア)の移籍も可能性が高いと見られている。今年で37歳、ジロでは総合15位とグランツールライダーとしての衰えは隠せずにいるが、山岳アシストとして、あるいは精神的支柱として望むチームがあるようだ。

来期はクラシックを狙うブラッドリー・ウィギンス(パリ~ルーベ2014)来期はクラシックを狙うブラッドリー・ウィギンス(パリ~ルーベ2014)

 2016年リオ五輪に向けてトラック競技へのシフトを明らかにしたブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム スカイ)は、チーム残留か移籍かが不透明だ。トラックに注力する一方で、そのトレーニングの一環としてロード参戦も行いたいとしている。グランツールは今後狙わないとしているが、今年9位に入ったパリ~ルーベ出場を重視することから、プロチームにこだわっているようだ。2010年の現チーム発足当時は「ウィギンスのためのチーム」とまで言われたチーム スカイだが、いまのウィギンスにしてみれば「グランツールでの勝利を狙うチームであり、かつてツールを制したからといって、今後トラックに力を入れる私のような選手を抱えるだけの余裕があるのかは分からない」と感じているという。

カデル・エヴァンスは、母国開催のレースが花道になる可能性も(ツアー・ダウンアンダー2014)カデル・エヴァンスは、母国開催のレースが花道になる可能性も(ツアー・ダウンアンダー2014)

 そして、現役続行か引退かの狭間で揺れているのは、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)。チーム首脳陣とは幾度となく話し合いが行われているようで、最終決定は出場が予定されている8月23日からのブエルタ・ア・エスパーニャ後となったようだ。エヴァンスは、自身の名を冠したワンデーレースを2015年2月1日に初開催する予定で、1月下旬のツアー・ダウンアンダーと合わせ、この2レースのための短期契約もオプションとして考えているようだ。

 そのほかに去就が注目される選手は、残り2年の満了を待たずに契約終了が決まったカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、数チームと交渉の席に就いているとされるエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チーム スカイ)、ツール総合7位と活躍したレオポルド・ケニッグ(チェコ、チーム ネットアップ・エンデューラ)らの名が挙げられる。また、マシュー・ゴス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ニコラ・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)の移籍も有力視されている。

アスタナがボーム、LL・サンチェスを獲得 ブアニはコフィディスへ

 それでは、移籍が決まった選手たちに目を移してみよう。8月1日の解禁から1週間経っていない段階ではあるが、すでに大きな動きを見せている。

石畳ステージでツール初勝利をあげたラルス・ボーム。北のクラシックでの活躍や牽引力が期待される(ツール・ド・フランス2014)石畳ステージでツール初勝利をあげたラルス・ボーム。北のクラシックでの活躍や牽引力が期待される(ツール・ド・フランス2014)

 まず、ツール・ド・フランスでの活躍により名実ともにプロトン最高のチームとなったアスタナ プロチームは、石畳の激戦だったツール第5ステージで圧勝したラルス・ボーム(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)を獲得。さらには、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)、ダヴィデ・マラカルネ(イタリア、チーム ヨーロッパカー)、ディエゴ・ローザ(イタリア、アンドローニジョカットリ・ベネズエラ)の加入も発表された。契約年数はボームのみ2年、その他3人は1年。チームは、ボームに北のクラシック、ツールでのアシストに期待をかけているようだ。また、オールラウンダーのマラカルネ、イタリアの次世代クライマーと目されるローザは、今年のジロ・デ・イタリア総合3位のファビオ・アール(イタリア)のアシストとして活躍が見込まれている。

ステージ3勝とポイント賞を挙げたナセル・ブアニ(ジロ・デ・イタリア2014)ステージ3勝とポイント賞を挙げたナセル・ブアニ(ジロ・デ・イタリア2014)

 ジロ・デ・イタリアでポイント賞のマリアロッソパッショーネを獲得しながら、ツールへの出場を逃し、移籍が濃厚となっていたナセル・ブアニ(フランス、エフデジ ポワン エフエル)は、コフィディス ソリュシオンクレディ入りが決定した。ブアニは早くから「移籍先は2年契約に応じてくれるチーム」に限定し、その結果フランス内外3チームに絞ったと言われていた。なかでも最有力とされていたコフィディスと合意に達した。

 コフィディスはブアニを含め10選手との契約または合意に達していると報じられている。チームは第1カテゴリー復帰を目指し、メンバーの大幅入れ替えを目論んでいると見られる。

 毎年強力な補強を見せるBMCレーシングチームは、ツール総合敢闘賞のアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)を獲得。山岳ステージで見せた再三の逃げに、チームのゼネラルマネージャーであるジェームズ・オショウィッツ氏が惚れ込んだそうだ。現チームメートで総合力の高いダミアーノ・カルーゾ(イタリア)も加わり、グランツールでの厚い選手層に期待が持てそうだ。

 これに加え、ローハン・デニス(オーストラリア)が新シーズンを待たず8月1日付でガーミン・シャープからBMCレーシングチームへ。デニス本人と両チームの3者が合意したうえで実現した、近年には珍しいシーズン半ばでの移籍だ。若きオールラウンダーとして実績を積みつつあるデニスには、即戦力としての期待がかかっている。ちなみに、ガーミン・シャープがBMCレーシングチームに対し、元来の契約条項を譲渡する形になったとされているが、その詳細は明らかにされていない。

 そして、このストーブリーグの目玉の1人とされていた、バウケ・モレマ(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)のトレック ファクトリーレーシング入りも発表された。両者は早くから合意に達していたとの報道もあったように、相思相愛の関係だったと思われる。グランツールをはじめとしたステージレース、さらにはクラシックと、高いレベルで安定しているだけに、移籍後すぐにエース格となることは確実だ。

今週の爆走ライダー-ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 8月3日、イギリス・グラスゴーで行われたコモンウェルスゲームズ(イギリスとかつてその植民地であった国々が集うスポーツイベント)のロードレースに、ウェールズ代表として出場。8月とは思えないほどの冷雨に見舞われたサバイバルレースで、圧倒的なアタックを見せた。ゴール目前でパンクのアクシデントこそあったが、大会最終日を盛り上げる熱い走りで金メダルを獲得した。

母国イギリスのステージで大観衆の注目を浴びるゲラント・トーマス(ツール・ド・フランス2014)母国イギリスのステージで大観衆の注目を浴びるゲラント・トーマス(ツール・ド・フランス2014)

 バックボーンはトラック競技。早くから才能を見込まれ、チームGB(イギリスナショナルチーム)のアカデミーで英才教育を受けた。チームパシュートでオリンピックの金メダル2つ(北京、ロンドン)、世界選手権では3度のマイヨ・アルカンシエル獲得を果たしている。

 長年、トラックとロードを並行してきたが、2012年ロンドン五輪を機にトラックを引退。ロードにシフトし、チームの主力となった。かねてから「将来のグランツールレーサー」と言われ、ここ数年は平地・山岳とアシストとして大車輪の働きを見せてきたが、いよいよ自身の方向性を確かめる時期に差し掛かっている。

2015年は得意の北のクラシックと、1週間のステージレースを狙うゲラント・トーマス(E3 ハーレルベーケ2014)2015年は得意の北のクラシックと、1週間のステージレースを狙うゲラント・トーマス(E3 ハーレルベーケ2014)

 彼が導き出した結論は、2015年はクラシックと1週間程度のステージレースで勝利を狙っていくというもの。得意とする北のクラシックでの活躍を誓う。そして、30歳の節目となる2016年にグランツールをターゲットとする。狙うはジロかブエルタ。「ツールは(クリストファー・)フルームのものだから、ボクはジロかブエルタでがんばってみる」。

 このほどチームと2016年までの契約延長が決定。「チーム スカイ以外は考えられなかった」と述べ、よりレースに集中できる環境を得た。イギリス自転車界が待ち焦がれた“グランツールレーサー ゲラント・トーマス”となる日が、刻一刻と迫っている。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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