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栗村修の“輪”生相談<28>30代男性「海外のサイクルロードレース中継を見ていて観客の応援が気になります」

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海外のサイクルロードレース中継を見ていて観客の応援が気になります。熱狂的というか過激というか、中には「いくらなんでもそれは…」と思うような応援をされる方もいらっしゃいますよね。

 熱烈な応援は歓迎されるものの、観客がコースにせり出して選手一人分の走行スペースしかなくイライラしている選手がいたり、観客と接触してトラブルが発生したり。そういう場面を見ていると一生懸命練習してきた選手がかわいそうになりますし、サイクルロードレースファンとして残念な気持ちになります。

 しかも、年々応援の仕方が過熱しているというか度が過ぎている気がするのですが、こういう応援の仕方に対しての規制とか安全策というのはとられないものなのでしょうか?

(30代男性)

 おっしゃる通りの状況です。とくに、今年のツール・ド・フランスのイギリスでのステージは、4級山岳の下りにもお客さんが鈴なりになっているような状態でした。選手は大量のお客さんを歓迎する一方で、やはり走りづらいとも言っています。

 お客さんとの接触が原因の事故もありました。思い起こせば、今年のツール・デ・フランドルではヨハン・ヴァンスーメレンと女性との接触事故があり、ジロ・デ・イタリアでもカメラモトが事故を起こしてしまいました。

 近年、レースが高速化して選手の位置取りが激しさを増し、プロトンが常にパンパンです。同時に、お客さんも増えている。これは残念ながら、安全面ではマイナスの相乗効果ですね。フランスではお客さんが「わかっている」ので、下りなど危ないところにはいないものですが、イギリスではそうではなかったと。

選手と観客の近さは、サイクルロードレースの醍醐味ではあるが…選手と観客の近さは、サイクルロードレースの醍醐味ではあるが…

 ということは、近い将来の日本にとっても、無縁の問題ではありません。ジャパンカップもツアー・オブ・ジャパンもお客さんは増えています。これはもちろんいいことですが、トレードオフで、安全性は落ちていると言わざるをえません。実際、残念なことに今年のツアー・オブ・ジャパンでも海外チームのチームカーが事故を起こしています。

 昔からツールでも、事故で亡くなるお客さんはいました。そもそも、タダで観られたり、選手がすぐそばを通るのも、サッカーや野球などのスタジアムスポーツにはない、この競技の魅力ですよね。でも、それが事故につながっている。つまり、ご質問はサイクルロードレースの根底に関わる問題なのです。

 文化だからしょうがないじゃん、では済まないと僕は考えます。もう、そういう時代じゃないと思うんですよ。企業だって、自分の利益だけではなくCSR(企業の社会的責任)を考える時代じゃないですか。僕たちにも社会的責任があるはずです。

 日本の市民レースでも事故は起きています。レースが中止になった例や、警察の介入もある。もしかすると警察や消防に、「自転車レースは危険である」という認識が生まれつつあるかもしれません。それは当然のことです。警察は悪くありません。マイナー競技が、表に出はじめたこということです。

2014ツール、イギリスで行なわれた第1ステージ。山岳を通過するイェンス・フォイクトに観客が群がる2014ツール、イギリスで行なわれた第1ステージ。山岳を通過するイェンス・フォイクトに観客が群がる

 安全に関する問題は、もうギリギリのところまで来ていると感じます。何らかの対策は必要でしょう。しかし、それは何でしょうか…。

 規制は簡単ではないんです。スタートからゴールまで、300kmにわたって柵を置くことは現実的じゃないですよね。イギリスでツールを見に来たお客さんは200万人とも言われているわけですが、その人数をいったいどう制御するのか。お話ししたように、危険性はこの競技のスリリングな魅力とうらはらの関係でもありますし…。

 答えはすぐには出ません。根が深い問題です。僕もどうすればよいか、考え続けています。いずれにせよ、繰り返しますが、状況が危険水域に近づいているのは間違いないでしょう。

(編集 佐藤喬/写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 「宇都宮ブリッツェン」テクニカルアドバイザー、「J SPORTS」サイクルロードレースレース解説者、「ツアー・オブ・ジャパン」副イベントディレクター。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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