山口和幸の「ツールに乾杯! 2014」<8・完>大観衆が見守る華やかなシャンゼリゼ大通り その陰で選手を苦しめるデコボコ石畳

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© Atout France/Hervé Le Gac© Atout France/Hervé Le Gac

 英国で開幕した第101回ツール・ド・フランスは、駆け足でフランスを1周して、いつものように最終日はパリに凱旋した。

 選手のパリ入城は必ず南側のイシー=レ=ムリノーからである。主催者ASOの前身である「ツール・ド・フランス株式会社」がパリ郊外のここに社屋を構えてから、このルートを通るのが慣例。パリは現在の環状線があるところが城壁で、多くの門(ポルト)がグルリとあるのだが、選手たちはセーヌ川沿いに入城するのでポルトは使わない。しばらくするとセーヌ川の向こうにエッフェル塔が見え、ダイアナ妃が事故死した地下道を通って、シャンゼリゼの特設サーキットコースに突っ込んでいくのである。

 さて、パリにゴールするこの最終ステージの位置づけはとても微妙だ。それというのも最終日前日のゴール地点に設置されるサルドプレスで総合優勝者の記者会見を済ませてしまうからだ。パリのゴール後は表彰式があり、そのあともパレードがあるので記者会見は行われない。だから最終日に大逆転劇があったら、すべての記者は困ってしまうのである。

 もちろん最も派手なステージ優勝や積極果敢な走りで敢闘賞を獲得するなど、それは特別な位置づけとして評価されるのだが、23日間を通してのツール・ド・フランスはすでに前日で終了したと言ってもいい。

最終日前日のサルドプレスに設置されたインタビュー席最終日前日のサルドプレスに設置されたインタビュー席
同時通訳はフランス語、イタリア語、英語、ドイツ語、スペイン語同時通訳はフランス語、イタリア語、英語、ドイツ語、スペイン語
© Atout France/Hervé Le Gac© Atout France/Hervé Le Gac

 例年のことだが、最終日前日は500kmほど離れたところにゴールし、選手やチーム首脳陣はその場に宿泊する。ツール・ド・フランスの打ち上げ宴会をするチームも多い。ただしスタッフはその日のうちにクルマで500kmを移動し、パリに先回りをする。選手たちは最終日午前中に空路かTGV(高速鉄道)でパリ郊外にひとっ飛びだ。

 パリに本社や自宅のあるフランス人記者は、最終日には久々の出社をすることもありサルドプレスで姿を見ることはない。最終日前日までの取材メモで原稿を書く。華やかなシャンゼリゼの現場はカメラマンに任せておけばいい。フランス一周の旅も楽しいが、これだけ期間が長いと一刻も早く住み慣れたところでのんびりしたいのだろう。

 全日程を帯同した広告キャラバン隊や運営スタッフも最終日は特別だ。選手到着の2時間前にキャラバン隊の全車列がシャンゼリゼを1周だけ走ることを許される。設営の大型カミオン(トラック)や沿道の障害物にクッションをかぶせて選手の安全を確保していた道路班や憲兵隊・警察なども。大観衆が見守る世界で最も華やかな大通りを映画の主役になった気分で走るのだから、その光景はどんなものだろう。

162-33_cmjn=© Paris Tourist Office - Photographer : Jacques Lebar162-33_cmjn=© Paris Tourist Office - Photographer : Jacques Lebar

 残念ながら取材陣はシャンゼリゼを1周できない。厳密にはチュイルリー公園を回ってリボリ通りからコンコルド広場に入った瞬間に、「はい、アナタは地下駐車場ね」と、シャンゼリゼ大通りの直前で真っ暗な地下道に案内される。

 ちなみにシャンゼリゼ大通りをロードバイクで走るのは一般的にはかなり無謀だ。荒れた石畳でデコボコが激しく、相当の衝撃が体につき上がってくる。

 仮に、ポイント賞争いで首位に立っていたペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール)が最終日前日にリタイアしたとすると、2位と3位につけるブライアン・コカール(フランス、チーム ヨーロッパカー)とアレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)のゴール着順でマイヨヴェールが決着する―。そんな仮定で新城幸也(チーム ヨーロッパカー)に話を聞いてみた。

 「かんべんしてくださいよ。シャンゼリゼでスプリント勝負のアシストなんて考えたくない。あそこはほんとに大変なんですから」。今回の大会を通してツール・ド・フランスを代表するような選手になった、あの新城がこう言うくらいだから…。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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