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はらぺこサイクルキッチン<17>上りを制するためのスーパーフード 160kmの米国レースで初代チャンピオンに

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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 夫でありマウンテンバイクプロライダーである池田祐樹の転戦に同行すべく、南アフリカ遠征後アメリカへ飛び、コロラド州ブリッケンリッジに滞在しました。今回はアメリカで参戦した2つのレース、そして引き続き実践しているプラントベースダイエット(植物性の食生活)について紹介します。

「Breckenridge100」レースのフィニッシュ後。レースでは後ろに見えるウィーラー峠を越えた「Breckenridge100」レースのフィニッシュ後。レースでは後ろに見えるウィーラー峠を越えた

大きく弾みをつけた最初のレース

元アメリカ全米チャンピオンのトラビス・ブラウン選手と元アメリカ全米チャンピオンのトラビス・ブラウン選手と

 ブリッケンリッジは、標高およそ3000m。到着後の数日間は、少し歩くだけでも息が切れてしまい「これが高度の違いなのか」と実感する私でしたが、夫は移動の疲れも見せず山へとライドへ出かけていました。風邪も引かず元気です。

 最初のレースは到着から10日後の7月13日で、レース前夜に欠員が出た「Breckenridge(ブリッケンリッジ)100」への参戦になりました。3人1組でチームを作り、リレー形式で競い合いました。結果、チームは優勝。標高が高いせいか、トレーニングでは中々パワー値が上がらないと言っていた祐樹さんでしたが、この日のパワー値はそれまでの数値を大きく上回るものでした。7月20日の「Telluride(テルユライド)100」レースに向けて、大きく弾みをつけました。

「Breckenridge100」表彰式にて「Breckenridge100」表彰式にて
ある日の昼食。そば・サラダなどある日の昼食。そば・サラダなど

アメリカの地で“初代チャンプ”に

 翌週に迎えた「テルユライド100」は標高およそ2800mのコロラド州テルユライドが舞台で、走行距離100マイル(約161km)。大自然が闘いの場となり、獲得標高はなんと5000mにもなります。

スタート時。隣にはチームメイトのジェフ・カーコブ選手スタート時。隣にはチームメイトのジェフ・カーコブ選手
「Telluride100」スタート時。気温も低く辺りはまだ暗い「Telluride100」スタート時。気温も低く辺りはまだ暗い

 当日の体調は万全でした。63人のレーサーがスタートラインに並び、その中にはチームメイトのジェフ・カーコブ選手や、現アメリカ全米チャンピオンでオリンピック出場経験もあるトラビス・ブラウン選手の姿もありました。

 私はクルマを走らせ、4カ所でフィードを行いました。祐樹さんは、その全てで後続に数分の差をつける独走状態で通過。その走りは最初から最後まで変わらず力強く、今までとは少し違って見えました。

「Telluride100」フィニッシュ直後。苦しさを乗り越え笑顔があふれます「Telluride100」フィニッシュ直後。苦しさを乗り越え笑顔があふれます
「Telluride100」表彰式にて。トロフィーの代わりに炭鉱の街だった歴史に敬意を表してツルハシ「Telluride100」表彰式にて。トロフィーの代わりに炭鉱の街だった歴史に敬意を表してツルハシ

 結果は優勝! 本人の予想タイムより1時間以上速く、7時間53分でフィニッシュしました。さらに嬉しいことに今大会は、3年間の構想を経て開催された初めてのレースでした。アメリカで“初代チャンプ”として名を残せたのはとても光栄なことです。

 レース後に祐樹さんは、「100マイルのレースで勝てたのは競技人生で初めてのこと。後半飲み物も受けつけなくなり何度も吐いたけれど、不思議と足は回っていて最後まで攣らなかった。スタミナも落ちずに気持ちも負けずに勝つことができてとにかく嬉しい」とコメントしています。

食事面でも作戦どおり

ある日の夕食。豆腐はアメリカでも手に入りやすいので重宝するある日の夕食。豆腐はアメリカでも手に入りやすいので重宝する

 「テルユライド100」の特徴は序盤からクライミング(上り)の斜度がきつい上、その距離も長いということです。「上りを制するものが勝つ」と見ていました。私は食事の面で体重コントロールとスタミナの維持を意識しました。レース当日朝の体重は、現時点でベスト体重として目標設定している63.0kgを少し上回る63.7kg。多めに摂った水分量などを考慮すれば許容範囲でした。

 結果は作戦どおり、最初の上りで差をつけることができたそうです。想像を絶する厳しいコースで約8時間。スタミナが落ちずにフィニッシュできたことは、こんなことを言ってはなんですが、驚きでした。

 今回の米国遠征で滞在させていただいたのは、日本人の知人ご夫婦のお宅です。ご主人はマウンテンバイクに乗り、レースにも出場されています。滞在中は私が食事を作らせてもらうことにはなっていたのですが、「プラントベースダイエットを続行中の私たちと食べるものが合わなかったらどうしよう」という不安もありました。

野菜たっぷりカレーも作りました野菜たっぷりカレーも作りました
野菜たっぷりのフォー。日本では高価なパクチーを大盛りで野菜たっぷりのフォー。日本では高価なパクチーを大盛りで
豆腐、キャベツ、人参などを使ったベジシュウマイにチャレンジ豆腐、キャベツ、人参などを使ったベジシュウマイにチャレンジ

 ところが着いてビックリ。なんと私の記事を読んで共感してくださり、「祐樹君がやっているなら」と数週間前からプラントベースダイエットを実行しているというではありませんか。周りのライダーにも実践者がいるためアドバイスももらいながら数週間が経過しているところでした。そのため、奥様と情報交換をしながらアメリカで手に入るスーパーフードなど初めて取り入れた食材もありました。

“3種の神器”、ハマス・ヘンプシード・チアシード

 鍵となった食材は、ハマス・ヘンプシード・チアシードの3種。これらは普段の食事に簡単にプラスできる食材で、各々好きな量を食べることができます。また、乾燥した状態で持ち歩けるため移動が多い私たちにとって心強い味方でもあります。

黒豆で作った2kgのハマスは大容量のタッパーで保存黒豆で作った2kgのハマスは大容量のタッパーで保存

 その中で、私はもちろん祐樹さんがいたく気に入ったのが、乾燥した豆から奥様が作る「ハマス」でした。豆のほかにパクチーやライム、塩などを入るのですが、たんぱく質が豊富で、作り置きしておけばライド後のスナッキングとしても優秀な存在です。日本でも最近は、輸入食料品店などで既製品を目にします。今回は私も一度に2kg(!)のハマスを作り「テルユライド100」のレースにも持参しました。

 とても使い勝手のよいヘンプシード=麻の種は、砕いてあるものをチョイスして、サラダやお浸しにササッと振りかけて食べています。ヘンプシードもたんぱく質が豊富。調理も不要なので非常に食べやすく、ナッツのようなほんのりとした香りがおいしいです。植物性の食事で不足しがちなたんぱく質を補う役目として、オススメです。

ハマスとチップス。ハマスのトッピングは粉末パプリカとパクチーハマスとチップス。ハマスのトッピングは粉末パプリカとパクチー
ほうれん草のお浸しにもペンプシード。レモンの皮をトッピングほうれん草のお浸しにもペンプシード。レモンの皮をトッピング
ココナッツが主原料、植物性のみのヨーグルトにチアシードを添えてココナッツが主原料、植物性のみのヨーグルトにチアシードを添えて

 そしてもうひとつは、チアチード。チアという植物の種で、こちらも今注目の食材です。乾燥した種をそのままスプーンでパクリ。よく噛んでいると、なんと口の中で膨らみプルプルとした食感に変わります。またはタッパーなどに入れて適量の水に浸して置くと、チアシードの周りにゼリー状のものが。食物繊維、ビタミンB群、亜鉛、オメガ3、カルシウム、たんぱく質などの栄養素がぎっしりとつまった、まさにスーパーフードなのです。食べ方は、水に浸したものをサラダにかけたりグラノーラにかけたりアーモンドミルクに溶いたりしていただきます。

◇         ◇

元アメリカ全米チャンピオンのトラビス・ブラウン選手と元アメリカ全米チャンピオンのトラビス・ブラウン選手と

 プラントベースダイエットを始めてから約8週間が経ちましたが、このあいだ機会があり2〜3回肉や魚を食べました。食べたからと言ってすぐに身体に影響が出るものではありませんが、そんな時にも食べ物と体調の関係を観察することは大切だと思います。ただし、動物性の食品を食べたことよってナーバスになってはいけないとも感じています。

 次なる行き先はカナダ。初開催の「Singletrack(シングルトラック)6」という6日間のステージレースに祐樹さんが参戦します。プラントベースダイエットを開始してから初めてのステージレース。私も大会が用意するバスに乗ってレースを観戦する予定です。レポートをお楽しみに!

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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