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つれづれイタリア~ノ<32>イタリアスポーツ界に歴史的な変化? スポンサーになるならサッカーよりも自転車レース!

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 FIFAワールドカップブラジル大会が閉幕し、ツール・ド・フランスが終盤にさしかかっています。絶対的な力を見せつけている28歳のイタリア人選手、ヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ プロチーム)効果で、イタリアでツール・ド・フランスの平均視聴率は連日30%を超えています(Auditel調べ)。まさにニバリフィーバーが起こっています。

ヴィンチェンツォ・ニバリの総合首位独走にイタリア国内はフィーバー中(ツール・ド・フランス2014)ヴィンチェンツォ・ニバリの総合首位独走にイタリア国内はフィーバー中(ツール・ド・フランス2014)

 しかし自転車レース観戦が盛り上がっている裏で、イタリアスポーツ界で大きな騒ぎが起きています。100年以上の歴史を誇る2つのサッカーチーム、2013-14シーズンは2部にあたるセリエBに所属していたACシエナとACパドヴァが消えることになりました。両チームとも経営陣が来シーズンのリーグ登録に必要な資金を集めることができず、チームが消滅するという残念な結果になりました。サッカーはイタリアの「国技」と呼ばれているだけあって、多くのサッカーファンにとってショッキングなニュースでした。

 なぜこのような事態が起きているのでしょうか。主な原因は3つだと考えられています。それは「経済危機の影響」「サッカーのファン層の変化」「スポンサーの意識の変化」です。

経済危機がもたらした悲劇

 2008年にリーマンブラザーズの倒産から始まった世界的な経済不況の影響は、ヨーロッパのスポーツ界にも大きな打撃を与え続けています。業績悪化に苦しむスポンサーたちが、スポーツのチームや大会、また文化イベントへ投じる予算を大幅にカット。スポンサーの援助なしで生きられない多くのチームは活動停止や廃部をすることになりました。

サッカーはもはや国民的スポーツではない?

イタリア・ジェノバ市内のトトカルチョショップ(1994年撮影)イタリア・ジェノバ市内のトトカルチョショップ(1994年撮影)

 2000年代までは、イタリアではサッカーが不動の人気を誇っていました。しかしその理由は、多額の賞金を与えるサッカーくじ人気にあったといってもいいでしょう。2000年まで国はギャンブルを強く規制し、サッカーくじ、競馬、ナンバーズ、宝くじなど、ごく一部の賭け事の販売しか認められていませんでした。そもそもイタリア人の大半が、試合の内容よりサッカーくじに直接つながる結果にしか興味がなかったものです。

 しかし、くじの自由化に伴って次から次へ新種のくじが現れ、知識がないと簡単に遊べないサッカーくじの人気は急速にかげりをみせ、サッカー離れが加速し始めました。

 実際、サッカーくじを買わず、他のスポーツに目を向ける若者たちが増えています。

ジロのスポンサーで売り上げ急増

 現在、サッカーを支えていた様々なスポンサーは自転車競技へシフトしています。2012年からジロ・デ・イタリアにおいてマリアローザのメーンスポンサーになったバロッコ社社長のアルベルト・バロッコ氏は、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙のインタビューに対し、次のように述べています。

 「2008年にサッカー・セリエAの強豪チーム、ユヴェントスのスポンサーになりました。しかし2008年の当社の売り上げ高は6000万ユーロにとどまり、サッカーに投資しても目に見えるような変化はありませんでした。その後、ジロ・デ・イタリアのスポンサーシップを始めてから2年がたち、売り上げは確実に、急激に伸びています。2013年は売上高が1億5000万ユーロを超えました」

ナイロアレクサンデル・キンタナが獲得したマリアローザ。胸元に「バロッコ」のロゴ(ジロ・デ・イタリア2014)ナイロアレクサンデル・キンタナが獲得したマリアローザ。胸元に「バロッコ」のロゴ(ジロ・デ・イタリア2014)

 「自転車競技のスポンサーシップへのシフトは大きな転換となりました。サッカーの場合は、ファンたちが一つのチームに対する愛着が強く、スポンサーとしては限られた効果しか得られません。しかし自転車競技のファンたちは、もっと広くスポンサーを意識しているからだと考えています」

※バロッコ(BALOCCO)

イタリア、ピエモンテ州の菓子メーカー。2013年からフェッレーロ社のブランド「エスタテ」に変わって、ジロ・デ・イタリア総合優勝のシンボル、マリアローザのメーンスポンサーを担っている

表彰式のシャンパンファイトで使われる「アストリア」のスプマンテ(ジロ・デ・イタリア2014)表彰式のシャンパンファイトで使われる「アストリア」のスプマンテ(ジロ・デ・イタリア2014)

 ジロ・デ・イタリアの表彰式で使う発泡酒を提供しているアストリア社も、5月にヴェローナ市で開催された「Vinitaly(イタリア最大のワインフェア)」に自転車ブースを置き、全面的に自転車競技をアピールしました。さら広報担当者は「ジロ・デ・イタリアのおかげで、肌で感じられるほどの売り上げアップにつながった」と述べています。

 たしかに、自転車競技における宣伝効果の影響は大きい。私もスーパーで買い物をしていると、特定のメーカーの製品に自然に手が伸びていて、自分で驚くことがあります。洗脳に近いものですね(笑)。

 さて、ツール・ド・フランスの閉幕まであと少し。マルコ・パンターニ以来、16年ぶりのイタリア人総合優勝を願って、スプマンテを用意しました。

 「Che vinca il migliore(誰であれ、優勝した者に乾杯)」。

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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