山口和幸の「ツールに乾杯! 2014」<6>ラングドック地方で思い起こすジャラベールの栄光となまりのキツいフランス語

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第15ステージはエルミガーとバウアーがスタートからゴール直前まで逃げに逃げた ©ASO第15ステージはエルミガーとバウアーがスタートからゴール直前まで逃げに逃げた ©ASO

 フランス南西部のラングドック・ルシヨン地方は、かつてオック語(Langue d’Oc)という独特の言語を使っていた地域だ。現在でもなまりのきついフランス語を話す人たちが多い。このラングドックにあるマザメという小さな町に生まれたのがジャラベール兄弟。ともにツール・ド・フランスに出場したプロ選手だが、兄のローランの方が弟のニコラよりも格段に実績がある。

 愛嬌のある顔立ちから「パンダ」というニックネームで親しまれていた。2002年の引退後はフランステレビジョンの解説者となった。オートバイの後部座席から独特の口調でレース展開を報じるのだが、2014年はゴール地点にいて解説を務める役割になったようだ。

第15ステージのゴール地点、ニームにある古代ローマ時代の円形劇場アレーヌ © Office de Tourisme O.Maynard第15ステージのゴール地点、ニームにある古代ローマ時代の円形劇場アレーヌ © Office de Tourisme O.Maynard

 現役時代からジャラベールは人気者で、実力もフランス自転車界の第一人者だったが、不思議なことにその才能が開花したのはフランスチームを離れてからだ。スプリンターとして売り出したトウシバ時代はそれほどの実績は残していない。1992年にこのフランスチームを離れ、スペインのオンセチームに所属した。

ラングドック地方を走るエルミガーとバウアー ©ASOラングドック地方を走るエルミガーとバウアー ©ASO

 この年にようやくツール・ド・フランスに初出場し、第6ステージのルーベ〜ブリュッセル間で初優勝を果たすと、最終的にポイント賞のマイヨヴェールを獲得した。さらに世界選手権でもイタリアのジャンニ・ブーニョに続いて2位に入り、ローラン・ジャラベールの名前は一気に広まった。

 3度目の出場となった1994年は、スプリンターとしてのジャラベールに期待がかけられた。ところが第1ステージのゴールスプリント時に、コース内側でカメラを構えていた警官に激突して、あまりにも不運な病院送りとなってしまった。

 この悲運は一時的にジャラベールの選手活動を白紙にさせたが、フランス人に欠けている不屈の闘志をかき立てるには十分な仕打ちだった。復活してからのジャラベールは勝ちまくった。1995年は区間1勝とポイント賞を獲得。さらにフランス人として最高位となる総合4位でフィニッシュした。

見ずして死ぬなと言われるカルカッソンヌ城 ©Paul Palau見ずして死ぬなと言われるカルカッソンヌ城 ©Paul Palau

 2000年は途中でマイヨジョーヌを獲得。フランス中の期待を一身に受けたものの、スプリンターとしてはその荷が重く、失意のうちにマイヨジョーヌを失うことになる。2001年にはデンマークのビャルネ・リース監督の下で新たなポテンシャルを発揮した。スプリンターからオールラウンダーへの転換だ。2001年と2002年に上り坂で山岳ポイントを稼ぎまくり、山岳賞を連取している。

 これにはフランスのファンも大喜びだった。序盤からの積極果敢なアタック。ランス・アームストロングらが追撃を見送るうちに、テレビ画面を独占した。沿道では「ジャジャ」というニックネームがいたるところにペイントされ、赤い水玉模様のパンダも描かれた。

 ツール・ド・フランスは「カルカッソンヌを見ずして死ぬな」と称されるヨーロッパ最大の城塞都市で2回目の休息日。ラングドック地方を訪れるとジャラベールのなまりのキツいフランス語を思い出す。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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