山口和幸の「ツールに乾杯! 2014」<5>リゾート開発会社が仕掛けたアルプス山岳決戦の舞台 ツールで名を売りスキー場へ集客

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 シャムルースは1968年のグルノーブル冬季オリンピックで、大会の花ともいえるスキーのアルペン競技が行われたウィンターリゾートだ。そのときはフランスのジャンクロード・キリーが金メダル3個を獲得した。キリーはフランスの英雄となり、国際オリンピック委員会などの重職を歴任。ツール・ド・フランスの最高権威もしばらく務めていた。思い出の地にツール・ド・フランスをゴールさせようというのもキリーの発案だ。

シャムルースのガソリンスタンドはじつに展望がいい(山口和幸撮影)シャムルースのガソリンスタンドはじつに展望がいい
シャムルースで取材陣を歓迎してくれた地元の女性たち(山口和幸撮影)シャムルースで取材陣を歓迎してくれた地元の女性たち

 シャムルースがツール・ド・フランスに初登場したのは2001年。このときはヒルクライムの個人タイムトライアルとして開催され、アームストロングがトップタイムで優勝したのだが、後に薬物使用で記録抹消。シャムルースはそれ以来の訪問となる。

第12ステージの上り坂でトリコロールの旗を振って応援する観客(©ASO)第12ステージの上り坂でトリコロールの旗を振って応援する観客(©ASO)

 ツール・ド・フランス最高の舞台と言われるラルプデュエズもグルノーブルオリンピックのリュージュとボブスレーの会場だ。シャムルースはグルノーブル市街から35kmほど、ラルプデュエズは50kmほどで美しいアルプス山脈の玄関口に位置する。どちらも本格的なアルプス山中ということはなく、都心部からアクセスしやすいのだ。

 どうしてウィンタースポーツのリゾート地がツール・ド・フランスのゴールになることが多いか。それはリゾート開発会社の戦略なのである。1970〜80年代に、知名度向上と集客の両方を一挙に獲得しようとツール・ド・フランスの協賛会社となり、派手に展開したのである。ちなみにシャムルースのスキーゲレンデは非常に狭くて急なので、一般的にはあまり楽しめないという評価。ラルプデュエズのリュージュ施設は夏場に子供たちが車輪付きのそりで歓声を上げているシーンを見たことがある。

 スキーリゾートのいいところは宿泊施設がある程度整っているところだ。もちろんコース発表前に主催者が予約を入れてしまうので、一般の人たちが部屋を確保するのは困難かも知れないが、選手たちがゴール後に下りの大渋滞に巻き込まれることも回避できる。ガリビエ峠やイゾアール峠など大昔から存在する街道の難所は、ホテルが一軒もないのでゴール地点としてはふさわしくないのかも。

第12ステージのスタート前にくつろぐコフィディス ソリュシオンクレディの選手たち(©ASO)第12ステージのスタート前にくつろぐコフィディス ソリュシオンクレディの選手たち(©ASO)
第12ステージのスタート前、サインに応じるアンドレ・グライペル(©ASO)第12ステージのスタート前、サインに応じるアンドレ・グライペル(©ASO)

 2014年のツール・ド・フランスは新しいスキーリゾートのリズルを初めて訪問する。2013年のクリテリウム・デュ・ドーフィネでクリストファー・フルームが優勝した山岳で、もっとさかのぼれば2010年のツール・ド・ラブニールでナイロ・キンタナが優勝している。大会の新名所として主催者が新たに売り出した舞台となるのだが、フルームもキンタナも不在のレースでどんな新星が名乗りを挙げてくるのか。ちょっと期待もするけど、複雑な思い。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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