山口和幸の「ツールに乾杯! 2014」<4>「時を刻む町」ブザンソンで繰り広げられたツール・ド・フランスの栄光とスキャンダル

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 ツール・ド・フランスは前半の10日間の闘いを終えた。7月14日に第10ステージをフィニッシュした選手たちは、憲兵隊の先導によって130kmほど離れたフランシュコンテの中心地ブザンソンに到着した。移動が最優先されるのは選手たちだけで、他のチームスタッフはラ・プランシュ周辺の交通渋滞に阻まれ、それよりも遅めに到着したはずだ。

世界遺産登録されるブザンソンの旧市街 (山口和幸撮影)世界遺産登録されるブザンソンの旧市街
休息日前夜はどことなくのんびりしていた (山口和幸撮影)休息日前夜はどことなくのんびりしていた

 この日はフランス革命記念日で、さらに翌日は1回目の休息日ということもあり、選手や関係者はリラックスした表情でブザンソンの夜を過ごした。例年のツール・ド・フランスは大会第2週の月曜日に休息日が設定されるのだが、2014年は革命記念日の祝日とあって異例の10日連続のレースとなったから、疲労も蓄積されていた。

新聞配達の自転車 (山口和幸撮影)新聞配達の自転車
このパン屋のキャンペーンで自転車がもらえるらしい (山口和幸撮影)このパン屋のキャンペーンで自転車がもらえるらしい
プジョー創業の地ミュルーズ (山口和幸撮影)プジョー創業の地ミュルーズ

 ブザンソンは精密機械や自動車工業が主な産業となる。サックスなどの楽器を販売する店舗が多いのは、この町が国際音楽祭を開催することで有名だからのようだ。精密機械の代表である時計も伝統工芸で、美しい芸術的な時計を現在も製造している。

 この町は自転車競技の開催にも積極的で、かつては世界選手権トラック大会が開催され、日本勢同士の決勝となったプロスプリントで中野浩一が優勝。フランス選手権ロードレースもひんぱんに開催されているし、2014年にはBMXヨーロッパ選手権が行われ、長迫吉拓が3位の表彰台に上っている。

ツール・ド・フランス2012 第9ステージ、ブザンソンで行われた個人タイムトライアルを制したブラッドリー・ウィギンス(©ASO)ツール・ド・フランス2012 第9ステージ、ブザンソンで行われた個人タイムトライアルを制したブラッドリー・ウィギンス(©ASO)

 2014年のツールにおいてこのブザンソンは第11ステージのスタート地点となるのだが、ツール・ド・フランスの歴史の中ではタイムトライアルの町と言われていて、ジャック・アンクティルやブラッドリー・ウィギンスがここで行われた個人タイムトライアルでトップタイムをたたき出している。


2004年のツール・ド・フランスで、第19ステージの個人タイムトライアルを制したランス・アームストロング。その後、ドーピング違反により記録は抹消された(砂田弓弦撮影)2004年のツール・ド・フランスを走るランス・アームストロング(砂田弓弦撮影)

 ちょうど10年前、2004年のツール・ド・フランスでは最後のタイムトライアルがこのブザンソンで行われた。マイヨジョーヌを着用したランス・アームストロングが異次元の走りでトップタイムをたたき出し、前人未到の個人総合6勝目を6連覇で達成することがほぼ確実となった。

 「1999年に最初に優勝したときは自分自身の驚きでしかなかった。歴史を作るつもりではなかったが、毎年ツール・ド・フランスに集中できたことが新記録につながったと思う」と、ブザンソンで勝利宣言したアームストロングは臆面もなく語っていた。

ブザンソンの時計 (山口和幸撮影)ブザンソンの時計

 あれから10年。薬物使用を告白したアームストロングの全成績は抹消され、ブザンソンの勝利者リストは空白になった。時を刻む町。タイムトライアルをフランス語で表記すると、Contre la Montre。「時計に対抗する」というのが語源だという。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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