ツール・ド・フランス2014 現地レポート石畳ステージを包み込んだベルギー人ファンの熱いオーラ 鼓膜をつんざくような大声援

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 ツール・ド・フランスは英国における3日間の開幕ステージとフランスでの1ステージをこなし、7月9日、自転車競技王国ベルギーへとやってきた。この日の第5ステージは厳しい石畳(パヴェ)のコースが設定され、ツール前半戦におけるハイライトと目されていたが、さらに強い風雨が加わって予想を超えるサバイバルレースに。悪天候のため当初9つの予定だったパヴェ区間はは7つに減らされたものの、ベルギーの人々の並々ならぬ“自転車愛”は健在だった。そんな注目ステージの盛り上がりを、取材の悪戦苦闘ぶりとともにお届けします。(パリ 柄沢亜希)

大きな一眼レフカメラを構えてスタートを待つベルギーの観客 <柄沢亜希撮影>大きな一眼レフカメラを構えてスタートを待つベルギーの観客 <柄沢亜希撮影>

スタート地点に入れない…警察と押し問答

 ツール・ド・フランスの取材をするためには、いかなるメディアも「PPO」と呼ばれるクルマのチェックポイントを通過してスタート地点周辺へ入らなければならない。もとより、スタート・ゴールエリアは厳重な通行規制が行なわれ、しかるべき地点を通過しなければ入ることができないのだ。

 ベルギーでは、そのPPOへ向かう道路がことごとくシャットアウトされていた。警察が「ダメ」と言ったら絶対ダメ。街を囲む環状線を行き来し、あらゆる場所からスタート地点となる中心街への突破を試みたが、答えはまるで同じ。そんな事態も予想して早めに出てきたものの、時間は刻々と過ぎていった。取材する側にとっては、コースに入るまでがまるで“メインレース”だ。

ベルギー人ライダーの2人乗りモトが助けてくれた <柄沢亜希撮影>ベルギー人ライダーの2人乗りモトが助けてくれた

 スタート地点からコースに入れなかった場合、レースを追えない可能性もある。「何としてもパヴェを取材しなければ…」と焦りはマックスに達し、最後の望みをかけて数度目の関門で警察と押し問答を繰り広げていた。そこへ、ベルギー人ライダーの2人乗りモト(オートバイ)が現れた。

 「モトはいいけどクルマはダメ」という警察に対し、モトのふたりが「なんでダメなの?」と反論してくれた。「だったら通れば」とばかりに投げやりになった警察。しめた! おかげで記者は、オフィシャルカーですら通過に苦労したという関門を何とかパスすることができたのだった。

沿道に駆けつけたベルギー人ファンは真剣そのもの

 スタート地点へたどり着くと、すぐにこれまでのステージとの雰囲気の違いに気がついた。居並ぶ観客の人数は第2ステージのスタート地、英ヨークと比べて明らかに少ないものの、観客からあふれ出るオーラが違うのだ。

スタートセレモニーでインタビューを受ける山岳賞ジャージのシリル・ルモワーヌ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ) <柄沢亜希撮影>スタートセレモニーでインタビューを受ける山岳賞ジャージのシリル・ルモワーヌ

 手に手にビールとフリッツ、あるいは本格的な一眼レフカメラを持ち、目つきはギラギラ。つい数日前のように、レース関係者や取材陣に手を振って楽しむ観客なんていない。

 そのうえベルギーでは、それまでのステージで和やかに仕事をしていた沿道警備のスタッフまでピリピリと神経が張りつめ、まるでスクラムを組みそうな勢いでビラージュやコースを守っている。

 「あのイギリスの浮かれたような日々は幻だったのだろうか…」。プレスパスを首から下げた記者は、不安に駆られ、威圧感に小さくなりながらフェンスの内側のコースを歩いた。

 ロンドンでは、五輪開催と同じように“大イベント”を楽しむ余裕があったが、ここベルギーで待ち構えていたのは、選手を見つめる視線が厳しくも熱いロードレースファン。コースをクルマで走ってみると、それがまたよくわかった。

 雨降る沿道には数え切れない数の大型テントが設置され、レースが通過する数時間前にもかかわらず、テントの中はどこも雨宿りするファンで満員御礼だ。傘をさしながら沿道に立つ人々も、真剣な様子で話し込んでいた。話題はきっと、レースのゆくえや選手のエピソードといったツール談義なのだろう。

あっけにとられた大声援

パヴェに集まった観客は、選手が到着するまでの間、思い思いに準備していた <柄沢亜希撮影>パヴェに集まった観客は、選手が到着するまでの間、思い思いに準備していた

 サール・エ・ロジエールからティロワ・レ・マルシエンヌに至る2400mの石畳区間で、パヴェを歩くという念願が叶った。敷き詰められた個々の石は、雨に濡れて凹凸をあやしく光らせながら、噂に違わぬ“存在感”を放っていた。路面に平坦な場所はなく、スニーカーで進むのにも一苦労。こちらは踏み出す先を選びながら歩いているというのに、選手たちはあの細いタイヤでいったいどうやって走るのだろうか。

沿道に飾られた選手たちの大きな似顔絵 <柄沢亜希撮影>沿道に飾られた選手たちの大きな似顔絵
ドイツの国旗を持って応援していた男性 <柄沢亜希撮影>ドイツの国旗を持って応援していた男性

 待っている間も、観客はレース展開のチェックに余念がない。誰が先行し、どんな落車が起こっているのか、また選手到着まであとどのくらいなのかといった情報が飛び交っていた。

ヘリコプターの轟音とともにレースがやってきた <柄沢亜希撮影>ヘリコプターの轟音とともにレースがやってきた

 ヘリコプターの轟音とともに、待ちに待った選手の到着が迫る。観客が発する声援のうねりで、プロトンのだいたいの位置をつかむことができた。

観客の大声援を受けてパヴェ区間を走るマイヨジョーヌのニバリ <柄沢亜希撮影>観客の大声援を受けてパヴェ区間を走るマイヨジョーヌのニバリ
雨の中パヴェを走ってきた選手は、お尻や背中もはね上げた泥で真っ黒。中には泥除けをつけている選手もいた <柄沢亜希撮影>雨の中パヴェを走ってきた選手は、お尻や背中もはね上げた泥で真っ黒。中には泥除けをつけている選手もいた

 そして視界に飛び込んできた選手たちは、そこがまるでアスファルトできれいに舗装された道路のごとく、観客たちの前をハイスピードで駆け抜けていく。同時に、割れんばかりの音量で「アレ、アレー」の声援が飛び交った。

 選手たちが走り去った後、あっけにとられた記者の鼓膜に、ビリビリとしびれたような感覚だけが残った。

割れんばかりの音量で「アレ、アレー」と声援を送る親子 <柄沢亜希撮影>割れんばかりの音量で「アレ、アレー」と声援を送る親子
雨のパヴェを抜けてきた選手は誰もが泥で真っ黒 <柄沢亜希撮影>雨のパヴェを抜けてきた選手は誰もが泥で真っ黒
選手にボトルを渡すためパヴェの出口で準備をするティンコフ・サクソの宮島正典マッサー <柄沢亜希撮影>選手にボトルを渡すためパヴェの出口で準備をするティンコフ・サクソの宮島正典マッサー
レース後、メカニックスタッフらを手伝いながら選手の帰りを待つモビスターのマッサー、Borja Rodriguezさん(左) <柄沢亜希撮影>レース後、メカニックスタッフらを手伝いながら選手の帰りを待つモビスターのマッサー、Borja Rodriguezさん(左)
翌日の食事をパックするモビスターのチームスタッフ <柄沢亜希撮影>翌日の食事をパックするモビスターのチームスタッフ
泥だらけになった選手のバイクを洗車するスタッフ <柄沢亜希撮影>泥だらけになった選手のバイクを洗車するスタッフ
クルマの洗車も抜かりない <柄沢亜希撮影>クルマの洗車も抜かりない

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