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つれづれイタリア~ノ<31>折りたたみ自転車の名車「グラツィエッラ」復活 イタリア人は美しい物が好きなのだ!

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日本の懐かしの自転車「ヤングホリデー」日本の懐かしの自転車「ヤングホリデー」

 東京都品川区の自転車文化センターで開かれている「子ども用自転車の歴史」という展示会を見に行ってきました。子供の時に乗りまわした懐かしい自転車を見て、多くの人が喜んでいるはずです。私は日本で生まれていないので懐かしさはありませんでしたが、ユニークで面白いバイクの数々に感動しました。いつの間にか私もうきうきして、子供に戻った気分でした。

 実は、イタリア人はこのような古い自転車が大好きです。今でもイタリアでは、最新鋭のロードバイクのとなりに40年以上前の自転車が並んでいる光景も珍しくありません。なぜ最新鋭の自転車を作っても、重くて古い自転車が愛され続けているのか。まず、自転車は走れる限り愛され続けます。そしてもうひとつ。イタリア人は決して古い物が好きなわけではありません。美しい物を愛しているのです。

自転車業界を変えた超ロングセラーバイク

 ちょうど50年前の1964年、イタリアの小さな工房で、ある超ロングセラーバイクが誕生しました。「グラツィエッラ」という小さな折りたたみ自転車です。この小さな自転車は、イタリアの自転車業界を大きく変えることになりました。

50年前に誕生した名車「グラツィエッラ」50年前に誕生した名車「グラツィエッラ」

 グラツィエッラが誕生した時代のイタリアでは、自転車は二つの用途しかありませんでした。

【1】職場や畑に行くための乗り物。頑丈で壊れにくい。色は黒!
【2】スポーツをするための乗り物。壊れやすく高価で、一部の人しか手に入らない。

 レジャーを楽しむ余裕がまったくなかった時代ですから仕方ありません。イタリアの名作映画の一つ「自転車泥棒(1948年、ヴィットリオ・デ・シーカ監督)」を見た人なら、戦後のイタリアが置かれた悲惨な状況がわかるはずです。しかしグラツィエッラが誕生した時代はイタリアが高度経済成長に入りつつあり、人々は経済的な余裕と自由な時間ができたことで、おしゃれに目を向けることができました。

 その流れを察知したリナルド・ドンゼッリさんは、サイクリングのみに適したコンパクトでスタイリッシュなバイクを思いつき、1964年に自転車大手メーカーのボッテキアにその製造を依頼しました。一人乗りでカゴ付き。タイヤは16インチ(その後20インチに変更)。重さは16kg。カラフルボディー。折りたたんだ時のサイズは75×60×30cm。

グラツィエッラの折り畳み機構グラツィエッラの折り畳み機構
備え付けられたスピードメーター備え付けられたスピードメーター

 こうして生まれたグラツィエッラは、サイクリングをおしゃれに楽しみたい若者や女性の心をわし掴みにしました。さらにフランスの女優ブリジット・バルドーとスペインの画家サルバドール・ダリにも気に入られ、ヨーロッパ各地で爆発的に売れ始めました。

 グラツィエッラは1989年まで製造され、いまでもイタリアの家庭に一台は眠っていると言っても過言ではありません(私の実家には2台あります!!)。そして今年、初号機を作ったボッテキアがグラツィエッラを復活させ、イタリア中が空前のグラツィエッラブームになっています。

50周年記念の「グラツィエッラ ゴールド」50周年記念の「グラツィエッラ ゴールド」

折りたたみ自転車で青春を再び

折りたたみ自転車を楽しむイベント「オルゴリオ・ピエゲーヴォレ」折りたたみ自転車を楽しむイベント「オルゴリオ・ピエゲーヴォレ」

 ここでとても面白いイベントを紹介します。4月19日、イタリア北部のルゴ・ディ・ロマーニャ市でユニークなサイクリングイベントが初開催されました。Orgoglio Pieghevole(オルゴリオ・ピエゲーヴォレ:折りたたみ自転車こそ誇り)という、グラツィエッラをはじめとしたイタリアが誇る折りたたみ自転車のみのイベントです。

 ルゴ・ディ・ロマーニャ市がイベントを後援し、参加者は数十人程度を予定していましたが、最終的に120人になりました。今回のテーマの一つは「折りたたみ自転車で思う存分楽しみましょう。そのため楽しい格好をしましょう」。すると、さすがイタリア人。ほとんどの人が仮装でした! アフターパーティーには、大量のパスタとワイン。そしてベストドレッサー賞までありました。

ほぼ全員の参加者が仮装して走ったほぼ全員の参加者が仮装して走った
生パスタと伸ばし棒を載せた男性。走れるのか!?生パスタと伸ばし棒を載せた男性。走れるのか!?
かなり錆びた自転車に乗ったダイバー姿の男性かなり錆びた自転車に乗ったダイバー姿の男性

 イベントを考案したパオロ・クリストフォリさんにその誕生について聞いてみました。

 「本企画は、軽い気持ちで始まりました。使われなくなった古い折りたたみ自転車で走ってから、レストランでおいしい料理を食べる。これが本来の案でした。しかし、ルゴ・ディ・ロマーニャ市役所にイベントを紹介したところ高評価を受け、予想外に大きな反響がありました。やはりグラツィエッラがイタリアでもっとも愛されている自転車の一つであることを物語っています。コレクターも多いですね」

みんなで折りたたみ自転車を楽しむみんなで折りたたみ自転車を楽しむ
完走証に書かれたメッセージは「私はそこにいた」完走証に書かれたメッセージは「私はそこにいた」

 さらに今年のイベント内容について、次のように続けました。

 「ルゴ・ディ・ロマーニャ市は自転車の有効活用にとても力を入れていて、本イベントは第100回ジロ・デ・イタリアを祝うためのイベントとして公式に認められました。とても名誉なことです。参加者のほとんどが、このイベントのために各家のガレージで眠っていたものを掘り起しました。フランチェスコ・バラッカ自転車協会からサポートを全面的にうけ、回収車まで出していただきました。今年の成功を受け、来年もやる予定です」

 来年みんなで参加しますか。実家で眠っている妹のグラツィエッラを整備しなくちゃ!

文 マルコ・ファヴァロ

第1回「オルゴリオ・ピエゲーヴォレ」

開催日:2014年4月19日(土)
走行距離:63km
ドレスコード:青春
後援:ルゴ・ディ・ロマーニャ市
サポート:UCフランチェスコ・バラッカ自転車協会
参加費:10ユーロ(1400円)参加賞、補給食、サイクリング後のパスタパーティー代を含む
次回開催予定日:2015年5月2日(土)
大会公式フェイスブック:https://www.facebook.com/events/440743722718074(イタリア語)

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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