山口和幸の「ツールに乾杯! 2014」<2>炭鉱跡の小さな町で受けた晴れやかな歓迎 しかし雨の石畳は「北の地獄」に

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 ツール・ド・フランスが英国からフランスに帰ってきた。海外を走ると勝手が違うようで、選手も関係者もストレスを感じていたが、ようやく安堵の雰囲気が漂う。フランスの勝手知ったる道路標示、ドライバーの間合い…。おりからの雨もボクたちを歓迎してくれるかのようだ。

フランスでの初日となる第4ステージ、逃げに乗ったトマ・ヴォクレール (©ASO)フランスでの初日となる第4ステージ、逃げに乗ったトマ・ヴォクレール (©ASO)
ツールがフランスに帰ってきた(©ASO)ツールがフランスに帰ってきた(©ASO)

レースの舞台は、石炭産業が衰退した北フランスへ

馬に乗った警官たち馬に乗った警官たち

 第5ステージはベルギーをスタートした。イーペルは第一次世界大戦の激戦地で、レース前にはベルギー国王とベルギーが生んだ往年の名選手エディ・メルクス氏が戦没者を追悼。この日通過するフランス側の石畳も、空爆によって当時は壊滅的な状態だったという。

 レースはすぐにフランスに入国し、ベルギー国境に近い石畳の悪路を通ってアランベールにゴールする。この町はかつて石炭で栄えた町で、地理の教科書でも北フランスは石炭産業が盛んだという記述を読んだ記憶がある。一帯は「ノール(北)」と呼ばれる地域で、20世紀前半はフランスの産業を支えてきた。

 近年のフランスは原子力政策によって電力は近隣国に輸出するほどある。当然、石炭の需要も激減した。そのためアランベールは廃鉱の憂き目に。炭鉱所跡地は博物館となり、そしてこの日のツール・ド・フランスのゴール地点となった。

4年ぶりに訪れた小さな町

 2010年の第3ステージでもここがゴールとなっていて、そのときの印象が強烈にある。2010年と2014年のサルドプレス(プレスセンター)の写真があるのでちょっと見比べてみよう。4年前は天井から炭鉱労働者の作業服が吊るしてあって「趣味悪いなあ」と思ったが、さすがに今年は見あたらなかった。

2010年のサルドプレス。作業服が天井から吊るされている2010年のサルドプレス。作業服が天井から吊るされている
2014年のサルドプレス。作業服はなくなりすっきりしたが…2014年のサルドプレス。作業服はなくなりすっきりしたが…

 一見して分かるのはジャーナリストの数の少なさだ。FIFAワールドカップ開催中であることは2010年と同じ。この日の天候の悪さもあるだろうが、最大の要因はネット環境の進化で、サルドプレスにいなくても原稿送信ができる時代になったからである。

 それでもボクはゴール地点の町の人たちが歓迎してくれるサルドプレスの雰囲気が好きだな。産業が低調な人口5600人というこの町が、4年に一度の予算を投資してゴールを誘致した。だから彼らにとってみればこんな雨模様でも晴れやかな祭典だ。みんな結婚式に出席するようなタキシードでもてなしてくれる。

 ちなみに2010年も石畳区間を走り、フランク・シュレク(ルクセンブルク、当時サクソバンク)が落車して鎖骨を骨折。ランス・アームストロング(アメリカ、当時レディオシャック)も落車に巻き込まれ、その日だけで2分08秒も遅れた。そして今年、夢を絶たれたのは前年の覇者クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)だった。彼らは「北の地獄」を見たに違いない。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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