ツール・ド・フランス2014 第5ステージ石畳区間を前にフルームが衝撃のリタイア パヴェ巧者のボームが“ミニパリ〜ルーベ”を制す

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 ツール・ド・フランス第5ステージは7月9日、イーペルからアランベール・ポルト・デュ・エノーまでの区間でレースが行われ、終盤に独走態勢を築いたラルス・ボーム(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)がツール初勝利となるステージ優勝を果たした。総合首位のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)も快走、ステージ3位となり、ライバルとの総合タイム差を広げることに成功した。一方、序盤から連続して落車に見舞われたクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が途中リタイアとなり、総合2連覇の夢が潰えた。新城幸也(チーム ヨーロッパカー)はボームから22分40秒差の175位でステージを終えた。

パヴェ(石畳)を制し、区間優勝を果たしたラルス・ボーム(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)(砂田弓弦撮影)パヴェ(石畳)を制し、区間優勝を果たしたラルス・ボーム(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)(砂田弓弦撮影)

 春のクラシック「パリ〜ルーベ」で使用される石畳(パヴェ)区間が登場する、今大会序盤で最も注目されたステージ。パヴェは87km地点から始まり、9カ所で総距離15.4kmに及ぶ“北の地獄”が選手たちを待ち受けた。パヴェ巧者の走りとともに、総合優勝を狙うオールラウンダーがこのステージをどのようにクリアするかがポイントとされた。

最後から4番目(セクター4)のサール・エ・ロジエール~ティロワ・レ・マルシエンヌ(2400m)の路面(柄沢亜希撮影)最後から4番目(セクター4)のサール・エ・ロジエール~ティロワ・レ・マルシエンヌ(2400m)の路面(柄沢亜希撮影)

 しかし、前夜から降り続いた雨は時間とともに強まり、石畳区間の路面はさらに荒れた。これにより、コースコンディションが不安視されたセクター7・モン・サン・ペヴェル(110km地点、1000m)と、セクター5・オルシ〜ブーヴリー・ラ・フォレ(125.5km地点、1400m)がカットされ、コースが短縮。パヴェは総距離13km、レース距離は152.5kmに変更された。

 スタートからしばらくして9人の逃げ集団が形成された。メンバーは、リーウ・ウェストラ(オランダ、アスタナ プロチーム)、トニー・マルティン(ドイツ、オメガファルマ・クイックステップ)、サミュエル・デュムラン(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル)、ハニエルアレクシス・アセベド(コロンビア、ガーミン・シャープ)、トニー・ガロパン(フランス、ロット・ベリソル)、マルクス・ブールクハート(ベルギー、BMC レーシングチーム)、レイン・タラマエ(エストニア、コフィディス ソリュシオンクレディ)、サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、マシュー・ヘイマン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)。

 路面は雨に濡れ、選手たちはスタート直後から悪戦苦闘。25km地点ではフルームが落車。前日のクラッシュ時とは逆で、今度は右半身を傷めた様子だ。逃げ集団でもマルティンとアセベドが落車。マルティンは直後にパンクしたデュムランとともに前方に復帰したものの、アセベドはメーン集団へと下がった。

雨で落車が続出した。観客に抱き起こされるラースユティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)(砂田弓弦撮影)雨で落車が続出した。観客に抱き起こされるラースユティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)(砂田弓弦撮影)

 石畳区間に向けて、メーン集団では位置取りが活発化するが、アクシデントは収まらない。総合上位を見据えるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ、BMC レーシングチーム)も落車し、アシストとともにメーン集団を追うシーンが見られた。ほかにも、今大会3勝を挙げているマルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ)や、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)ら、多くの選手が地面に叩きつけられた。

 そして、残り68km地点で衝撃のシーンが訪れた。コーナーでフルームがまたしても落車。チームカーから数人のスタッフが駆け寄り、スペアバイクも用意されたが、再び走り出すことはなかった。憔悴しきった様子のフルームは、この瞬間リタイアを決意。チームカーへと乗り込み、総合2連覇の夢を諦めた。

 波乱のステージ前半を経て、レースはいよいよパヴェセクションを迎える。87km地点、セクター9・グリュゾン〜カルフール・ド・ラルブル(1100m)では、メーン集団で分断が発生。バルベルデやアンドルー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)らが後方に取り残されたものの、次のセクションまでにメーン集団へ復帰できた。

 レースが大きく動いたのは103km地点、セクター8・アンヌヴラン〜ポン・ティボー(1400m)だった。セップ・ヴァンマルク(ベルギー、ベルキン プロサイクリングチーム)がメーン集団のペースアップを図ると、マイヨジョーヌのニバリが続く。一方で、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が集団内でポジションを大きく下げ、この区間を抜ける頃にはニバリらから遅れをとってしまう。アシストがコンタドールのために追走を図るが、ニバリらの勢いが勝り、その差は約1分にまで広がった。

観客の声援を受けてパヴェ区間を走るニバリ(柄沢亜希撮影)観客の声援を受けてパヴェ区間を走るニバリ(柄沢亜希撮影)

 各選手の思惑が渦巻き、サバイバルレースの様相を呈するが、アクシデントは収まらない。パヴェ区間でペースを上げていたラースユティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)がコーナーを曲がりきれず前方へ一回転しながらコースアウトしたほか、タランスキー、ユルヘン・ヴァンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)らも落車。ニバリも自チームのアシストの落車に巻き込まれかけるシーンがあったものの、こちらは事なきを得ている。

 終盤に向け、ニバリを含むアスタナ勢がメーン集団を積極的にコントロール。この日の優勝候補に挙げられていたペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール)やファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)も集団で勝機をうかがう。なかでも、パヴェに絶対的な自信を持つボームとヴァンマルクのベルキン勢の走りが目立ち、一時は2人でアタックしてメーン集団をリードした。

滅多に見られないバルベルデとコンタドールが石畳を走るシーン。協力してニバリを追う(砂田弓弦撮影)滅多に見られないバルベルデとコンタドールが石畳を走るシーン。協力してニバリを追う(砂田弓弦撮影)

 メーン集団は残り28kmで逃げ集団をキャッチし、順調にペースを刻む。石畳区間を通過するたびにコンタドールグループとの差を広げていった。コンタドールを引き上げたいティンコフ・サクソのアシスト陣は、ヴァンガーデレン擁するBMCレーシングチームや、バルベルデを押し上げたいモビスター チームと協力し先頭集団を追うものの、思うようにペースが上がらない。この状況にたまりかねたゲラント・トーマス(イギリス)とリッチー・ポート(オーストラリア)のチーム スカイ勢がアタック。コンタドールらを引き離し、数十秒前を走っていたタランスキーらのグループに合流した。

 残り15.5km地点で迎えたセクター2・ヴァンディニ・アマージュ〜オルナン(3700m)を過ぎると、ニバリを引き連れてウェストラとヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)がペースアップ。これにボームだけが対応。ステージ優勝争いのライバルとなるカンチェッラーラやサガンを置き去りにできたことで、ボームもアスタナ3選手とともに先頭交代のローテーションに加わった。そして、最後のパヴェであるセクター1・エレーム〜ヴァレルス(1600m)でボームが満を持してアタック。得意の独走へと持ち込んだ。

大詰めのセクター1でアタック、単独抜け出してパヴェを駆け抜けるボーム(砂田弓弦撮影)大詰めのセクター1でアタック、単独抜け出してパヴェを駆け抜けるボーム(砂田弓弦撮影)

 快調に飛ばしたボームは、最後までペダリングを緩めることなく、アランベール・ポルト・デュ・エノーに設けられたゴールラインをトップで通過した。

 28歳のボームは、ライダーとしてのキャリアをシクロクロスでスタート。ジュニア時代から頭角を現し、ジュニア、アンダー23、エリートとすべての部門でシクロクロス世界選手権を制している。また、ロードも並行して行い、2007年には個人タイムトライアルでアンダー23の世界チャンピオンとなっている。初のグランツール出場だった2009年のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ1勝。以来、チームの主力となっているが、ツールでは4度目の出場で初勝利。ゴール後のインタビューでは、「ツールのステージ優勝は夢だった。石畳は得意分野で、そこで勝てたのは特別だ」と感激に浸った。

フルサングのアシストを受けて走るニバリ(砂田弓弦撮影)フルサングのアシストを受けて走るニバリ(砂田弓弦撮影)

 最後まで攻めの走りを貫いたニバリは、フルサングとともにボームから19秒差でゴール。石畳のスペシャリストを差し置いたばかりか、総合争いのライバルに対し大きなアドバンテージを得ることに成功。レースを終えて、「大きなリスクがある中、私たちは幸運だった。ウェストラとフルサングがよく引いてくれた」とアシストに感謝を述べた。なお、序盤から逃げや集団牽引で大車輪の働きを見せたウェストラは、このステージの敢闘賞を獲得している。

 大荒れとなったレースは、総合優勝候補の明暗を分けた。ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、オメガファルマ・クイックステップ)こそボームから1分7秒でゴールしたが、有力選手の多くが2分28秒遅れの集団でフィニッシュ。そのグループからも後れをとったのがコンタドール。最終盤でメカトラブルが発生した影響により、2分54秒遅れでステージを終了。個人総合成績では、ニバリから2分37秒遅れの19位と苦戦を強いられている。

 石畳も、上級山岳ステージも見ることなくツールを去ったフルームは、第4ステージの落車で左手首を骨折していたことが判明。チーム スカイのゼネラルマネージャーであるデイヴィッド・ブレイルスフォード氏は、ブエルタ・ア・エスパーニャでのフルームの再挑戦を示唆した。また、チームは今大会、ポートを総合エースに据える公算だ。

 総合成績で予想以上に大きな差が生まれたことから、今後のステージでは、逆転を目指す有力選手たちに攻撃的な走りが求められる。マイヨジョーヌのニバリを擁するアスタナはどう迎え撃つか。10日の第6ステージは、アラスからランスまでの194km。おおむねフラットなレイアウトだ。

(文 福光俊介/写真 砂田弓弦、柄沢亜希)

第5ステージ結果
1 ラルス・ボーム(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム) 3時間18分35秒
2 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +19秒
3 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム) +19秒
4 ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール) +1分1秒
5 ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング) +1分1秒
6 イェンス・クークレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ) +1分1秒
7 ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、オメガファルマ・クイックステップ) +1分7秒
8 リーウ・ウェストラ(オランダ、アスタナ プロチーム) +1分9秒
9 マッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファルマ・クイックステップ) +1分21秒
10 シリル・ルモワーヌ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ) +1分45秒
175 新城幸也(日本、チーム ヨーロッパカー) +22分40秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム) 20時間26分46秒
2 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +2秒
3 ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール) +44秒
4 ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、オメガファルマ・クイックステップ) +50秒
5 ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング) +1分17秒
6 ユルヘン・ヴァンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル) +1分45秒
7 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ベリソル) +1分45秒
8 リッチー・ポート(オーストラリア、チーム スカイ) +1分54秒
9 アンドルー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ) +2分5秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +2分11秒
133 新城幸也(日本、チーム ヨーロッパカー) +30分59秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール) 185 pts
2 マルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ) 135 pts
3 ブライアン・コカール(フランス、チーム ヨーロッパカー) 121 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 シリル・ルモワーヌ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ) 6 pts
2 ブレル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) 5 pts
3 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレック ファクトリーレーシング) 4 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール) 20時間27分30秒
2 ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、オメガファルマ・クイックステップ) +6秒
3 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアル) +1分27秒

チーム総合
1 アスタナ プロチーム 61時間21分26秒
2 ベルキン プロサイクリングチーム +4分18秒
3 BMC レーシングチーム +6分5秒

敢闘賞
リーウ・ウェストラ(オランダ、アスタナ プロチーム)

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