山口和幸の「ツールに乾杯! 2014」<1>W杯イヤーには外国で開幕、そして荒れるツール・ド・フランス 英国は3日でいいや

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 イングランド中部のヨークシャー地方に住む人たちにとって、ドーバー海峡を渡ることなく世界最大の自転車レースを目撃できるなんて。おそらく生涯一度のことで、しかもFIFAワールドカップでグループリーグ敗退した失望をまぎらわせるためにも、彼らの多くが沿道に詰めかけて大興奮で選手たちを迎えた。

ツール・ド・フランス2014は英国で開幕(©ASO)ツール・ド・フランス2014は英国で開幕(©ASO)

 それにしても第1ステージのコースをクルマで走ってみて、「これは制御不能で、とても危ないなあ」と感じた。選手も同様で、カンチェラーラやシュレクは当日夜にツイッターで、「もう少しコース脇に避けて観戦してほしい」というメッセージを発信した。

英国風の邸宅と美しい庭園英国風の邸宅と美しい庭園
主催者が用意するタイムトライアル用エアロスーツの採寸をするフルーム。特別待遇だ(©ASO)主催者が用意するタイムトライアル用エアロスーツの採寸をするフルーム。特別待遇だ(©ASO)

 FIFAワールドカップと日程が一部重複する4年に一度、ツール・ド・フランスは外国を開幕地とすることが定着している。いつものようにフランスを走っても、みんなの興味がサッカーに集中してしまうからだ。だったらツール・ド・フランスがめったに訪問しない海外を走ろう。主催者のその戦略は的中し、いつも大観衆が訪れることになる。

 ただし外国を走るツール・ド・フランスは荒れる。まず、大観衆を制御する役割の地元の警察官が任務を果たしていない。彼らにしてもこんなメジャーイベントは初体験で、命令系統も統一されず、その場所に配備されてもなにをしていいのか分からないのだ。

(©ASO)(©ASO)

 安全対策も講じられない。フランスならゴール近くの中央分離帯は自治体予算で撤去してしまう。ところがさすがのツール・ド・フランスも外国の都市にそうしてくださいとは言えない。設備スタッフが柵を設置する位置もフランスの道路構造と異なるので、なんとなく違和感が生じる。わずかなそういった要因が落車の引き金となっても不思議ではない。

報道陣のインタビューに答える新城幸也(チーム ヨーロッパカー)インタビューに答える新城幸也

 新城幸也も「できればツール・ド・フランスではフランスを走りたい」とこぼしていたが、ボクもその通りだ。いつも外国からフランスに入国すると、母国に帰ってきたかのように安堵する。

 そうは言っても英国らしい素晴らしい光景の中を選手たちは突き進む。英国のファンは数が多くて熱狂的だが、あまり突拍子もないことはしないのにも救われた。フランスの田舎とはまったく異なる景色はちょっと刺激的で、しかもにおいがフランスよりも強烈で、どこか動物的だ。

パリ・シャンゼリゼへ3656km。グランデパールの街リーズにてパリ・シャンゼリゼへ3656km。グランデパールの街リーズにて

 英国ポンドが高いので、ホテルや食事など旅に必要なコストはバカにならない。もし世界最大の自転車レースが英国のレースだったら、ボクたち海外取材陣は確実に破産している。そして23日間の長丁場をしのぐにはかなり厳しい英国グルメ。フランスにはその土地特有のワインやチーズ、郷土料理などがあって退屈になることは決してない。それはツール・ド・フランスが世界最高峰になった大きな理由でもある。

 ツール・ド・英国は3日でいいやと思う。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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