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栗村修の“輪”生相談<26>30代男性「ツールなどの超有名レースに日本のチーム、選手が出場するには?」

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今年の春の選抜高校野球は、京都代表・龍谷大平安の優勝で幕を閉じ、延長再試合など好ゲームもありましたが…大会全体を通して、何か盛り上がらないと感じました。それは郷土の代表校が出ていなかったからでした。自転車ロードレースのTV観戦でもそれは同じで、日本のチーム、選手が出ていないので少し盛り上がれずにいます(栗村さんの解説はおもしろいですが)。

 TV中継されるような、クラシックレースやツール・ド・フランスなど超有名レースに日本のチームが出場するには、どうしたらいいのか? また日本人選手は? そして、出場したならぶっちゃけ通用するのか? 教えてください。

(30歳代 スポーツ観戦大好き男より)

 おっしゃる通りだと思います。なんだかんだいって、応援する対象がいるのといないのとでは、観戦のモチベーションが全然違います。また個人差はあっても、結局はナショナリズムが強いので、自国や地元のチーム・選手が出てくれれば盛り上がりますよね。地域密着型チームへの愛着の拡大バージョンが、スポーツのナショナリズムといってもよいかもしれません。

 東京オリンピックの開催も決まり、わが国でスポーツのナショナリズムが加速する中、サイクルロードレース界でも当然、日本人選手の活躍が期待されています。特に注目されている新城幸也選手は、今年もアムステル・ゴールドレースで10位になるなど大活躍ですが、問題は彼に続く選手がいないことです。海外でチャレンジしている若手選手は、実はたくさんいます。また、日本でも浅田顕監督など、優れた指導者が海外進出のチャレンジを続けていますが、なかなか難しい。

 海外で活躍できる選手を安定的に「供給」するためには、なんといっても分母が大きくなければいけません。分母とは競技人口です。その中から、海外に通用するだけのフィジカルやメンタルなど、能力を持った選手≒分子を選抜するわけですね。ツール・ド・フランスで総合優勝できる能力を持って生まれてくる子供が10万人にひとりならば、最低でも10万人の競技人口と、そこから有能なひとりを選抜するシステムの両方が必要になります。選抜システムとは、トライアウトなどです。

 ただし、選抜システムの精度が低ければ、10万分の1の才能を見落としてしまうかもしれません。だから、分母は大きいに越したことはありません。

 残酷なようですが、ツール・ド・フランスを勝つ能力がない子をどれほど鍛えても、ツールは勝てません。才能がある子を見出し、さらにメンタルやフィジカルの指導を効果的に行う。そうしてはじめて、才能のある選手を海外に送り出せるのです。要は、大きなシステムが必要だと思うのです。

 強化のための海外遠征などの話も色々と耳にします。それは重要なことですし、そういう努力をされている方を尊敬していますが、それらは今言ったシステムの断片です。個々の「パーツ」でしかないのです。全体をまとめるシステムがない。

日本人最多回数を更新する5度目のツール・ド・フランスが決まった新城幸也選手(チーム ヨーロッパカー)日本人最多回数を更新する5度目のツール・ド・フランス出場が決まった新城幸也選手(チーム ヨーロッパカー)

 自動車に例えてみましょう。海外で活躍できる日本人選手がほしいというのは、超速いスポーツカーを作りたい、というのと同じです。でも、エンジンは大排気量のものがいいよね、シャーシは小型軽量がいいんじゃないか、ハンドルは日本人の手にフィットするように小さめに、とパーツ単位でバラバラに設計してしまっては、全体がちぐはぐになってしまいます。全体のコンセプトをバシっとつくるデザイナーがいないからです。明確なフィロソフィーをもったデザイナーが。その場合、偶然の産物というか、新城選手のような突然変異を待つほかありません。

 まずは分母を増やし、同時にシステムを作る。サイクルロードレースは、ただでさえ苦しく、危険な競技ですから、人を集めるのは容易ではありません。収入も、他のプロスポーツに比べて相対的に低いのが現状です。もしフィジカルの才能がある若い子が「ロードレーサーになりたい」と言っても、普通の親御さんならばサッカーや野球、自転車競技ならば競輪を勧めるのではないでしょうか。

 だからこそ、サイクルロードレースの魅力を一般の人にもアピールし、たくさん人を集めなければならないのです。ちゃんと生活ができるだけの年俸を用意するシステムも必要でしょう。人とお金を集めなければいけません。それなしに、ひたすらハングリーにやれ、と言っても限界があるでしょう。新しい動きも出つつある今は、まさに転換期です。僕もがんばります。

(編集 佐藤喬・写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 「宇都宮ブリッツェン」テクニカルアドバイザー、「J SPORTS」サイクルロードレースレース解説者、「ツアー・オブ・ジャパン」副イベントディレクター。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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