ゴールで雄叫びを上げ、表彰式で感極まり…再起のシーズンで最高の栄冠をつかんだ佐野淳哉 全日本選手権ロードレース・男子エリート詳報

  • 一覧

 全日本選手権大会ロードレースの男子エリートが29日、岩手県八幡平市で開催され、序盤に形成された11人の逃げ集団から3人が逃げ切った結果、佐野淳哉(那須ブラーゼン)が5時間41分49秒で初優勝した。2位には井上和郎(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)、3位には山本元喜(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)が入った。佐野は昨季、欧州チームに所属したものの環境になじめず、シーズン後半を棒に振っており、再起をかけた今シーズンに最高の栄冠をつかんだ格好だ。(文・写真 米山一輝)

表彰台で感極まって声が詰まり、涙をこぼす佐野淳哉(那須ブラーゼン)表彰台で感極まって声が詰まり、涙をこぼす佐野淳哉(那須ブラーゼン)

序盤で11人が強力な逃げ集団を形成

 レースは15.8kmの周回コースを使用し、当初は16周・252.8kmが予定されていた。しかし前日から不安定な天候が続き、この日も雨の予報となったため、レース当日の朝、2周短縮して14周・221.2kmで行うと決定された。

レース前、テントで待機する別府史之(トレック ファクトリーレーシング)レース前、テントで待機する別府史之(トレック ファクトリーレーシング)
スタート前にストレッチをする佐野淳哉(那須ブラーゼン)スタート前にストレッチをする佐野淳哉(那須ブラーゼン)
脚にスタートオイルを塗る伊丹健治(ブリヂストンアンカー)脚にスタートオイルを塗る伊丹健治(ブリヂストンアンカー)
スタートラインに並んだ選手たちスタートラインに並んだ選手たち

 スタート直後、1周目の上りから、最初の逃げを狙う選手たちがアタック。数個の小さなグループがまとまり、2周目途中には11人の逃げ集団となった。佐野、井上、山本のほかには阿部‎嵩之(宇都宮ブリッツェン)、野中竜馬(シマノレーシング)、平塚吉光(愛三工業レーシングチーム)らが入り、逃げを得意とするメンバーがそろった。

1周目から逃げ集団が形成。先頭は山本元喜(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)1周目から逃げ集団が形成。先頭は山本元喜(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)
2周目、逃げ集団は11人になった2周目、逃げ集団は11人になった

 主要チームがほとんど選手を送り込んだことで、メーン集団は逃げを容認。その差は2周目終了時には約3分、3周目終了時には4分にまで一気に広がった。レーススタート直後から雨が本格的に降り始め、一時は霧でほとんど視界がない中でのレースとなった。

雨とともに霧が深くなった雨とともに霧が深くなった

別府史之が追走を促すも集団は反応せず

 広がりすぎた差を嫌ったのは、優勝候補ながら単騎参戦の別府史之(トレック ファクトリーレーシング)だ。追走の動きを作ろうと集団先頭でペースを上げるが、集団は反応するものの活性化しない。一度はタイム差が3分を切ったが、フミが攻撃を止めると再び5分にまで一気に広がった。

集団先頭でペースを上げる別府集団先頭でペースを上げる別府
5周目下りのメーン集団。別府が先頭でペースを上げる5周目下りのメーン集団。別府が先頭でペースを上げる
6周目のメーン集団6周目のメーン集団

 レースが半分を過ぎたところで、ようやく天気が回復。メーン集団も徐々に活性化し、有力選手を多く含んだ追走集団が一旦は形成されるが、後続が下りで追い付いて再び一つのメーン集団になる。追走しようとする動きと、引き戻そうとする動き。不安定な駆け引きが何度か繰り返され、ようやくレース終盤になって十数人の追走集団が形成された。後続が活性化したことで、先頭との差は2分を切るところまで縮まっていた。

7周目、メーン集団から追走グループが抜け出す7周目、メーン集団から追走グループが抜け出す
再び一つになったメーン集団。思うように前との差が詰められない再び一つになったメーン集団。思うように前との差が詰められない
ようやく十数人の追走集団が固まるようやく十数人の追走集団が固まる

 一方、先頭集団は序盤から11人で終始協調して逃げ続けていたが、後続が1分差にまで迫ったことから、残り2周からの上りで井上がアタック。ついに協調体制が崩れた。井上に反応できたのは山本元喜と佐野で、先頭は3人に絞られた。武井亨介(Shingha Infinite cycling team)、野中竜馬(シマノレーシング)が30秒ほどの差で追うが、他の選手は集団に飲み込まれてしまう。先頭とメーン集団は1分35秒差で最終周回に突入した。

13周目の上りで3人が抜け出した13周目の上りで3人が抜け出した
3人の先頭集団。(前から)山本元喜、井上和郎、佐野淳哉3人の先頭集団。(前から)山本元喜、井上和郎、佐野淳哉

最後の上りで抜け出した佐野 雄叫びを上げてゴール!

何度も雄叫びを上げてゴールした佐野淳哉何度も雄叫びを上げてゴールした佐野淳哉

 追い上げる集団が先頭を飲み込むかとも思われたが、そのまま最後の上りに突入。ここで単独先頭に立った佐野が、最後まで後続の追い上げを許さず、何度も雄叫びを上げてガッツポーズをしながらゴールラインを駆け抜けた。続いて井上、そして山本がゴールする。メーン集団からは、清水都貴(ブリヂストンアンカー)が先頭でゴールし、トップから45秒差で4位に入った。清水は集団の他の選手を振り切って懸命に追い上げたが、先頭までの距離が遠すぎた。

ゴールラインを切り、安堵の表情が漏れるゴールラインを切り、安堵の表情が漏れる
2位の井上和郎2位の井上和郎
3位の山本元喜3位の山本元喜
9位でゴールした別府。大きく息を吐いた9位でゴールした別府。大きく息を吐いた

 優勝候補の筆頭に上げられていた別府は、5位グループの最後尾、9位でゴール。前へと動かない集団に苦しめられ、何度も自ら動いたが最終的には力を使い果たしてしまった。ゴール後はさすがにレース展開への不満を隠さなかったが「これがサイクルロードレース」と語って会場を後にした。2日後にはフランスに向けて出発、今後のスケジュールについては未定だという。

佐野淳哉(右)の優勝を祝福して握手する別府史之佐野淳哉(右)の優勝を祝福して握手する別府史之

再起のシーズンで最高の栄冠

 優勝した佐野は、これまでも全日本で優勝する力を持つと評されてきた有力選手。2010年に宮澤崇史(当時チームNIPPO)が全日本で優勝した際には、チームメートとして強力なアシストを見せていた。昨シーズンは欧州のプロコンチネンタルチームに加入したが、チームとの折り合いが悪く、6月の全日本ロードを最後にレースの舞台から姿を消していた。半年のブランクを経て今年、国内レースを中心に走る那須ブラーゼンにエースとして加入。再起を目指していた。

優勝の佐野淳哉を、清水良行プレーイングマネージャーが迎える。清水は自身がリタイアした後も、コース横で佐野にタイム差を伝える仕事をこなした優勝の佐野淳哉を、清水良行プレーイングマネージャーが迎える。清水は自身がリタイアした後も、コース横で佐野にタイム差を伝える仕事をこなした
ゴールしたチームメートが涙を流しながら佐野を祝福ゴールしたチームメートが涙を流しながら佐野を祝福
逃げ集団で走る佐野淳哉逃げ集団で走る佐野淳哉

 この日のレースでは、作戦としては集団に残る予定だったが、「タイムトライアルでも踏めていた選手が何人も行ったので、勘(かん)です」と逃げ集団に入った。別府を含むメーン集団の動きは常に気になったというが、逃げ集団内では駆け引きがなく、安定したペースで最終盤まで走れたことが結果につながったという。これまではアシストとして走ることが多かったが、今年はエースとして走ることで「集中力が違った」と話す。

男子エリート表彰男子エリート表彰

 表彰式でチャンピオンジャージに袖を通し、コメントを話す途中で感極まった。苦しかった時期を支えてくれたという家族、引退の危機にあった自分を迎え入れてくれたチーム、そしてトレーニングを支えるスタッフへの感謝を述べ、「この場所に立てたことが本当に嬉しい」と語った。

男子エリート表彰男子エリート表彰

男子エリート(221.2km)
1 佐野淳哉(那須ブラーゼン) 5:41:49
2 井上和郎(ブリヂストン アンカー) +10秒
3 山本元喜(ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ) +15秒
4 清水都貴(ブリヂストン アンカー) +45秒
5 土井雪広(チームUKYO) +1分2秒
6 入部正太郎(シマノレーシング) +1分2秒
7 畑中勇介(シマノレーシング) +1分2秒
8 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +1分4秒
9 別府史之(トレック ファクトリーレーシング) +1分9秒
10 早川朋宏(愛三工業レーシング) +1分20秒

関連記事

この記事のタグ

全日本ロード2014 全日本ロード2014・レース詳報

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載