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“自転車革命都市”ロンドン便り<2>ロンドナーたちはどんな自転車に乗っているの? 自転車は「下駄」でなく「乗りもの」

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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 世界のどの都市にも、その街の顔というべき自転車があると思います。東京ならやはり“ママチャリ”、アムステルダムならダッチバイクと呼ばれるコースターブレーキのどっしりしたシティサイクル、コペンハーゲンならクリスティアーナ、ニューヨークならメッセンジャーたちが乗るフィックス、といったように。ではロンドンの顔は? ざっと見回してみると、いろいろな車種が走っています。

カノジョは前カゴ付きパシュリー、カレシはコンドルサイクルズのフィクストというロンドンの自転車シーンを絵に描いたようなカップル!カノジョは前カゴ付きパシュリー、カレシはコンドルサイクルズのフィクストというロンドンの自転車シーンを絵に描いたようなカップル!

主流は英国“質実剛健ブランド”

 ロンドンの自転車シーンは朝夕の自転車通勤の人たちが牽引しているので、かなり実用寄りのバイクが中心で、日本で言うところのクロスバイク、こちらでは“ハイブリッドバイク”と呼ばれる種類が多い印象です(英語ではクロスバイクはシクロクロス車のことを言います)。「ラレー」や「リッジバック」といった日本では珍しい英国の質実剛健ブランドが目につきます。

ヴィンテージのラグ付きフレームのシングルスピード(フリー有)が決まってる通勤中と思しき女性。こういう実用車もとても多いヴィンテージのラグ付きフレームのシングルスピード(フリー有)が決まってる通勤中と思しき女性。こういう実用車もとても多い
日本ではリアキャリアにパニエを下げている人は長距離ツーリングの人以外あまりいないけれど、ロンドンではとても多い。先頭の男性は相当長い自転車キャリアがありそうだ日本ではリアキャリアにパニエを下げている人は長距離ツーリングの人以外あまりいないけれど、ロンドンではとても多い。先頭の男性は相当長い自転車キャリアがありそうだ

 次に多いのが、古めかしいスチールフレームのロードバイク風スポーツ車です。ヴィンテージとして大切に乗っているというよりは、お金をかけたくないので親や祖父母のお下がりフレームを乗れるようにした、というところでしょう。ロンドンはとにかく自転車泥棒が活発なので、自転車にはなるべくお金をかけない人が多いのです。

 パンク・ロック音楽を生んだ街だけあり、ラフでややアグレッシブな印象に仕上げたテイストが人気ですね。そのままの転売が難しいものは盗まれにくいとされるので、独創的なカラーリングやパーツ組み合わせのものも見かけます。

前カゴ付きのガーリーな自転車が女性に人気

女性に人気の籐カゴ付きシティサイクル。イギリス人はこういったシティサイクルでもサドルをちゃんと高くして乗っている。低いサドルで膝を付きだして漕いでいるのはBMXの少年くらいで滅多にみかけない女性に人気の籐カゴ付きシティサイクル。イギリス人はこういったシティサイクルでもサドルをちゃんと高くして乗っている。低いサドルで膝を付きだして漕いでいるのはBMXの少年くらいで滅多にみかけない

 女性に人気が高いのは、スタッガードフレームのショッピングバイクに籐の前カゴをつけたクラシックなお嬢様風自転車。前カゴに造花を飾ったガーリー仕様もしばしば見かけます。

 一方で、ホリゾンタルフレームのフィックス(固定ギア)をグランジテイストで乗りこなす女性も少なくなく、これはロンドンっぽいなーと思います。このジャンルのいちばん人気は英国ブランド「パシュリー」。日本のママチャリと一見似ていますが、ひと回り大きくどっしりしています。

 日本で大きな議論を呼んだフィクストは、ロンドンはかなり多く走っています。一時期の爆発的ブームは去ったものの、ジャンルのひとつとして生き残りました。いまでは大半の人が前ブレーキだけはつけていますが、コストの安さもあり今後も根強く人気を集めていきそうです。なお、前輪ブレーキだけはつけないと英国の法律違反になりますが、こちらではそれほど問題視されていない状態です。

これは造花に覆われているけれど、人工芝に覆われたもの、ヒョウ柄のフェイクファーに覆われたものも見たことがある。コスプレ好きの英国人、自転車をコスプレするのも好きなようだこれは造花に覆われているけれど、人工芝に覆われたもの、ヒョウ柄のフェイクファーに覆われたものも見たことがある。コスプレ好きの英国人、自転車をコスプレするのも好きなようだ
ちょっと古そうなフレームをありあわせのパーツで組んで作りました…という感じの1台。なぜスプリング付きのサドル? こうなると、盗んでもパーツごとにバラさなければ売りにくいちょっと古そうなフレームをありあわせのパーツで組んで作りました…という感じの1台。なぜスプリング付きのサドル? こうなると、盗んでもパーツごとにバラさなければ売りにくい

10台に1台はブロンプトン

ウォータールー駅で出会った男性。毎日自宅から駅までブロンプトン、電車で都心に入り、また勤務先まで走っている。同じようにブロンプトンを携えた人たちが朝晩ターミナル駅をにぎわせているウォータールー駅で出会った男性。毎日自宅から駅までブロンプトン、電車で都心に入り、また勤務先まで走っている。同じようにブロンプトンを携えた人たちが朝晩ターミナル駅をにぎわせている

 このようにいろいろな車種が入り交じっているロンドンの路上ですが、ブランドで見ると圧倒的に多いのが、英国製の小径折り畳み自転車「ブロンプトン」でしょう。通勤時間帯のロンドン都心は、10台に1台はブロンプトンと言ってもいいくらいの濃度です。

 ロンドンの通勤列車は、オフピーク時はそのまま客車に載せてOKなのですが、朝夕の通勤ラッシュ時は普通の自転車は持ち込みが禁止になります。そんな中でも、ブロンプトンなど数種の小径折り畳みはラッシュ時も載せることができるとあって人気を集めています。

 そして青い公共自転車「バークレー・サイクルハイヤー」。朝夕は通勤の人たちに、昼間は観光客によく使われていて、これもロンドンの風景の一部になってきました。今後、まだまだエリアも拡大する予定だそう。この公共自転車については後日しっかりレポートする予定です。

新車は5万円近いのが平均的

フィックスなどのオシャレバイクのトレンドは東京もロンドンも同じ。流行の時差もほとんどないが、ロンドンのほうが常に少しエッジーな印象フィックスなどのオシャレバイクのトレンドは東京もロンドンも同じ。流行の時差もほとんどないが、ロンドンのほうが常に少しエッジーな印象

 日本と比較してひとつ興味深いのは、自転車の値段でしょうか。こちらには日本のような廉価なママチャリがなく、新車なら普及タイプのハイブリッド(クロス)でも300ポンド(5万円弱)はするのが一般的です。数年前から2万円程度の廉価な自転車が一部で売られるようになってきているようですが、街角ではあまりみかけません。

 日本用のママチャリを中国から仕入れて激安で売ればヒットするのでは―と考えるのですが、ロンドナー気質は江戸っ子気質に似ていて、これでなかなかスタイルにこだわりがあるので、おしゃれに無縁な日本風ママチャリはダメなのかも。またイギリスでは自転車はほぼ車道オンリー、それによって走行スピードも日本よりも少し速いので、低速走行に特化したママチャリではスペックが足りない可能性もあります。イギリス人にとっての自転車は「下駄」ではなく、あくまでも「乗りもの」だと言えそうです。

 さて、ではロンドンの顔といえる自転車は…わたしの独断と偏見ですが、ここは自分自身が2台のオーナーでもあるブロンプトンだということにしましょう。どこかクラシックの「ミニ」(自動車)にも通じる英国らしいスタイルで、ロンドンの重厚な街並みにとても似合っている気がします。

 最近はごくごくたまにですが、電動アシストのついた自転車も見かけるようになってきました。まだロンドンの自転車風景は変化中なのかもしれません。日本もママチャリからより乗りものとしての性能の高いスポーツ車などへのシフトが始まっているようにも感じられますね。

(文・写真 青木陽子 / Yoko Aoki )

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。

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