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つれづれイタリア~ノ<30>自転車で世界遺産を救おう! 市民レース「ユネスコサイクリングツアー」で保全・修復に貢献

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 群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」が6月21日に世界遺産登録され、これは日本だけでなくイタリアでも話題になりました。日本では昨年の富士山に続く、18番目の世界遺産です。

 世界遺産登録されると注目を浴びますが、観光客の急増によって自治体が交通渋滞やインフラ不足で困ることもあります。とはいえ景色や文化の保全につながりますし、観光客がもたらす経済効果は財政難に苦しむ地方自治体にとってはうれしい悲鳴のはずです。

イタリアの世界遺産は“予算不足”

マッダローニを通る「ヴァンヴィテッリの水道橋」(砂田弓弦撮影、ジロ・デ・イタリア2011)マッダローニを通る「ヴァンヴィテッリの水道橋」(砂田弓弦撮影、ジロ・デ・イタリア2011)

 しかし、イタリアではまったく違う問題が発生しています。それは「世界遺産が多すぎる」問題。イタリアは世界遺産の最多保有国で、さらに増え続けています。

 日本では話題になりませんでしたが、富岡製糸場と絹産業遺産群が決まった日に、イタリア50番目の世界遺産登録が認められました。ピエモンテ州のランゲとロエロ、モンフェッラートの広大で美しいブドウ園です。全部合わせると面積は100平方km(JR山手線内側のおよそ1.5倍)にのぼります。

 そう。イタリアの問題は、世界遺産の数が多いだけでなく、広範囲に渡るということです。例えばヴェネツィア市内とその干潟の全地域、ローマやフィレンツェの中心街、ポンペイの古代遺跡など…。その保全には莫大な費用がかかるので、国が文化省に割り当てる15億ユーロの予算(およそ2000億円)だけではとても足りません。

 実際に予算不足で手が付けられない場所がたくさんあり、ポンペイやローマ市内の古代遺跡は崩壊していることが各マスメディアで報道されています。

アグリジェントの古代遺跡付近を通るプロトン(砂田弓弦撮影、ジロ・デ・イタリア2008)アグリジェントの古代遺跡付近を通るプロトン(砂田弓弦撮影、ジロ・デ・イタリア2008)
ヴェローナの円形闘技場が2010年ジロ・デ・イタリア最終ステージのゴール地点になった(砂田弓弦撮影)ヴェローナの円形闘技場が2010年ジロ・デ・イタリア最終ステージのゴール地点になった(砂田弓弦撮影)

 財政状況の厳しい南イタリアの自治体は、遺跡の管理に回す予算だけでなく、都市機能を維持するためのインフラ整備でさえ資金が足りません。イタリアでは世界遺産を“厄介者”扱いする人も出てきています。

グランフォンドで基金集め

 しかし壊れてゆく世界遺産を目の前にして、2009年にある企画が立ち上がりました。イタリア国内で行われる4つのグランフォンド(市民レース)の運営会社やクラブチームが「ユネスコサイクリングツアー委員会」(Unesco Cycling Tour Comitee)を結成しました。その目的は、下記の通りです。

1.イタリア国内のユネスコ世界遺産の知名度をあげること
2.芸術作品や建物の修復に必要な資金を収集すること
3.サイクリングやレースを通して、ユネスコ世界遺産のある地域を活性化すること

 この活動は「イタリア都市及び地域ユネスコ世界遺産協会」(Associazione Città e Siti Italiani Patrimonio Mondiale Unesco)の後援を受けています。この団体が拠点を置くアッシージも世界遺産に指定された町です。

4つのグランフォンドで構成される「ユネスコサイクリングツアー」4つのグランフォンドで構成される「ユネスコサイクリングツアー」

 ユネスコサイクリングツアー委員会は、4つのグランフォンドを通じて収益金の一部を共通の基金に集め、世界遺産の修復に役立てています。各レースのスポンサーからの寄付も集めます。参加者も寄付できる仕組みで、参加費とは別に50ユーロを寄付すると、ユニークな特典が付きます。レースの特等席「スタートポジションに立つ特権」です。その他にも、レース会場にブースを設置し、活動を紹介しながら募金を促します。

 この4つのレースはシリーズ化されていて、走った距離に応じてポイントが割り当てられます。チームでエントリーでき、より多くの人数で長い距離を走った自転車クラブに対して副賞が与えられます。副賞はイタリアらしくガソリン券、鉄道割引券、ハム、各地の名産グルメなどです。

 現在、企画に参加しているグランフォンドは4つ。

グランフォンド・デッラ・ヴェルナッチャ(トスカナ州サンジミニャーノ)5月開催
グランフォンド・ダミアーノ・クネゴ(ヴェネト州ヴェローナ市)6月開催
グランフォンド・ストラドゥカーレ(ウンブリア州ウルビーノ市)6月開催
グランフォンド・チンクエテッレ(リグリア州デイヴァ・マリーナ市)9月開催

※リンク先はいずれもイタリアのサイトです

 ちなみに私の実家はヴェネツィア、パドヴァの植物園、ルネッサンス後期の建築家であるアンドレア・パラーディオが設計した宮殿群など世界遺産に囲まれています。毎日のように世界遺産を見て育ちました。若い頃はそのありがたみはわかりませんでしたが、今では私が寄付するようになりました。

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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