プロ10年目の大きな挑戦ジロを完走し、3度目の全日本ダブル優勝を狙う別府史之 「力と力の勝負で納得いくレースを」

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 今季、新生チームのトレック ファクトリーレーシングに移籍してプロ10年目を迎えた別府史之。5月から6月にかけて、自身3度目となるジロ・デ・イタリアに出場して完走を果たすなど、充実したシーズンを過ごしている。Cyclistでは、6月27~29日に岩手・八幡平で開催される全日本選手権ロードレースへ出場するため一時帰国している別府にインタビュー。ジロを中心にシーズン前半戦を振り返ってもらうとともに、目前に迫った全日本選手権への意気込みを聞いた。(文・写真 田中苑子)

全日本選手権に向けて帰国、トレーニングを重ねる別府史之に話を聞いた全日本選手権に向けて帰国、トレーニングを重ねる別府史之に話を聞いた

ステージ優勝を目指したジロではチャンスに恵まれず

 今シーズン、別府が最初の目標に定めたのが5月9日開幕のジロ・デ・イタリアだった。このため例年よりも少し遅めの2月中旬、「ツール・メディテラネアン(フランス、2.1)」でシーズンインし、そこから5月のジロに向けてコンディションを上げていった。

3度目の全日本ダブル制覇に向けてトレーニングを積む別府史之3度目の全日本ダブル制覇に向けてトレーニングを積む別府史之

 別府にとって、ジロでの目標は逃げに乗ってステージ優勝すること。しかし「トライしてみたんですが、逃げの展開に持ち込みやすいステージは2つしかなく、そのステージはすべてのチームが狙っていた。またトレック ファクトリーレーシングは総合狙い、スプリンター、山岳賞リーダーといろんな選手がいたことから、チームの仕事が多く、“自分のステージ”という意味ではなかなかチャンスが巡ってこなかったですね…」と悔しさをにじませた。

 しかし一方で、別府の献身的な走りはチームから高い評価を受けた。ジロでエースを務めたロベルト・キセロフスキー(クロアチア)は、逃げを吸収するためチーム全体で動かなければならない状況でも、「フミは牽引に参加しないで、今後の山のステージなどに備えて自分の側にいてほしい」と何度も言うくらい、別府に厚い信頼を置いたという。

 別府はジロを振り返り、「チーム全体を見たときに、本当に良くまとまって走れていた。結果も、ステージ優勝1回に山岳賞獲得、そしてステージ上位には何度も入ることができて良かったです」と満足そうに語った。

 3週間におよぶ長丁場のステージレースで、別府にとってもっとも印象的だったのは、1級山岳にゴールする第18ステージ。チームメートのジュリアン・アレドンド(コロンビア)が優勝したシーンだった。

「1人の勝利はみんなの勝利」を実感

ローラーを使ったトレーニングで汗を流すローラーを使ったトレーニングで汗を流す

 「この日は、ジュリアンの山岳賞を確定させるために、彼を逃げに送り込むことがチームの作戦でした。チームはみんなで集団の前方に固まって、できるだけジュリアンが逃げやすい状況を作り、そしてジュリアンがうまいタイミングで逃げに乗りました。自分はエースのロベルトをサポートしながら、最後の山岳を登っていったんですが、先にゴールしてコースを下ってきたチームメートが“勝ったよ!”と教えてくれた。フィニッシュまで登っていったら、ちょうどジュリアンが表彰台に立っていて、言葉を交わして…気持ちよかったですね! ジュリアンが勝ったことで、チームの雰囲気がそれまで以上に良くなり、選手もスタッフもみんなで喜び合いました。自転車ロードレースでは、1人の選手の勝利がみんなの勝利だということを実感する、本当に印象的なステージになりました」

 トレック ファクトリーレーシングにとって今回のジロ・デ・イタリアは、新体制になって初めて出場するグランツールでもあった。

 「多国籍の新チームですが、同じ国の選手やスタッフで固まらず、みんなでつながろうとする雰囲気がありました。それぞれに違う文化をもつ選手が集まっているので、とにかく話が尽きないんです。それに、GMのルカなんかも気軽に選手たちのテーブルに座って、レース以外の話しを楽しんだりしていましたね」

 グランツールなどで長い時間一緒にいるチームは、家族のような存在だとよく言われる。ジロではチーム内のコミュニケーションも良く、一致団結できたことが結果にもプラスに働いたという。

八ヶ岳の麓で事前合宿を行った。2011年の全日本選手権前も同じ場所でトレーニングをしている八ヶ岳の麓で事前合宿を行った。2011年の全日本選手権前も同じ場所でトレーニングをしている

3年ぶりの全日本 「ベストのコンディションで狙えば勝てる」

 そして別府にとって、シーズン前半のもう1つの大きな目標は、全日本選手権の個人タイムトライアルとロードレース、その両方でタイトルを獲得することだ。別府は2006年と2011年にダブル優勝を成し遂げている。今年は2011年以来、3年ぶりの全日本出場となる。

野菜のみの昼食。八ヶ岳で獲れた地元の野菜は本当に美味しいと話す野菜のみの昼食。八ヶ岳で獲れた地元の野菜は本当に美味しいと話す

 別府は6月8日〜15日にフランスで開催されたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネに出場してから帰国。忙しいスケジュールを縫って、八ヶ岳でトレーニング合宿に臨んできた。全日本選手権は「ベストのコンディションで狙えば勝てる」と自信を見せる。

 今年からスケジュールが変更され、エリート男子は27日(金)に個人タイムトライアル、そして2日後の29日(日)にロードレースというタイトなスケジュールになった。タイムトライアルは40.2kmと距離が長く、全力で走れば走るほど疲労が残ってしまうため、両種目で優勝する難易度は高い。しかし別府は、「タイムトライアルとロード、ダブルで優勝することが僕の仕事。『負けられない』という気持ちが、いい感じのプレッシャーになっています」とレースを控えた心境を語る。

 またプロのロードレースは、通常はチームで戦ってエースを勝たせるものだが、全日本選手権は特殊なレース展開となる。別府のように所属チームから1人で出場する選手がいる一方で、国内チームに所属している選手は当然、チーム全員で戦う。またチームごとの最大出場人数は決められていない。別府の実力は日本でトップクラスにあることに間違いないが、他の有力選手たちがチームで総力戦を仕掛けてくると、単騎の別府には不利になる展開も十分に考えられる。

落ち着いてトレーニングをこなす別府。確かな自信が感じられる落ち着いてトレーニングをこなす別府。確かな自信が感じられる

 「今まで勝った全日本選手権は、自分のプランどおりにレースが展開しました。今年もヨーロッパにいながら、(日本で)調子のいい選手をチェックしていて、展開を予想しながらプランを立てています。力と力の勝負になってくれたら、納得のいくレースになると思います」

 レースの舞台は、別府が優勝した2011年と同じ岩手・八幡平。別府は「けっして嫌いなコースではない」と自信をのぞかせ、「3年ぶりの全日本選手権。出るからには優勝します!」と宣言した。その笑顔は、プロ10年のキャリアで培ってきた豊富な経験や確かな実力に裏付けられている。ビッグレースが続くシーズン後半に向けて、2枚の日本チャンピオンジャージをヨーロッパに持ち帰ることができるのか? この週末、別府は大きな目標に挑戦する。

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