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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<66>役者はそろった! ツール・ド・フランス前哨戦を総まとめ

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 UCIワールドツアーは、22日に閉幕したツール・ド・スイスをもって一段落。7月5日開幕のツール・ド・フランスへ向けて各チーム、選手の準備が進んでいきます。その間、各国で国内選手権が開かれ、2014年シーズンのチャンピオンが決定します。今年は誰がツールに出場するのか、誰がチャンピオンジャージに袖を通すのか、楽しみな日々が続きますね。今回は、ツール前哨戦を一挙におさらい。ぜひツール本番を前にした予習としてくださいね!

ツール・ド・スイス最終ステージを制し3連覇を達成したルイ・コスタ(Photo:Lampre-Merida)ツール・ド・スイス最終ステージを制し3連覇を達成したルイ・コスタ(Photo:Lampre-Merida)

コスタが前人未踏の総合3連覇 最終ステージにドラマ

 フランスで行われたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(6月8日~15日)の結果と分析を前回お届けしたが、同時期に開催されるレースで注目を集めるのがツール・ド・スイス。今年は6月14日から22日までの9ステージで争われた。

 スイスのステージ構成はドーフィネより山岳・スプリント・TTとバランスがとれているのが特徴。とはいえ、アルプスの山々をめぐる山岳ステージは、ドーフィネ以上に急峻で過酷といわれる。

ツール・ド・スイス第1ステージ個人TTを制したトニー・マルティンは、第8ステージまでリーダージャージを保持。最終的に総合4位で終えた  © OPQS/Tim De Waeleツール・ド・スイス第1ステージ個人TTを制したトニー・マルティンは、第8ステージまでリーダージャージを保持。最終的に総合4位で終えた © OPQS/Tim De Waele

 そんななか、総合争いではTTスペシャリストのトニー・マルティン(ドイツ、オメガファルマ・クイックステップ)が大健闘した。第1ステージの9.4km個人TTを制し総合首位に立つと、第3ステージではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)の、第6ステージではマッテーオ・トレンティン(イタリア)のスプリント勝利をアシストするなど、大車輪の活躍。第7ステージの24.7km個人TTでさらにリードを広げると、超級山岳の第8ステージでも落ち着いた走りでリーダージャージをキープした。

 しかし、ドラマは最終の第9ステージ(156.5km)に待っていた。この日のスタート時に総合3~5位につけていたルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、マティアス・フランク(スイス、イアム サイクリング)、バウケ・モレマ(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)が、ゴールまで残り約40kmでメーン集団からアタック。この動きにマルティンやロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)といった有力選手たちが置き去りにされてしまった。

 序盤から逃げ集団に加わっていたアシスト陣の献身的な働きによって、フランクやモレマは快調にメーン集団とのリードを広げた。コスタはライバル2人をしっかりマーク。3選手がそのまま山頂ゴールでステージと総合をかけた優勝争いを繰り広げた。

 残り3.5kmでのフランクのアタックをチェックしたコスタは、残り2.7kmでカウンターアタック。独走態勢に持ち込むことに成功し、ステージ優勝と総合優勝を同時につかんだ。また、世界チャンピオンの証、マイヨ・アルカンシエル獲得後初勝利を挙げ、ツールへ大きく弾みをつけた。

ルイ・コスタはマイヨアルカンシェルを着ての初勝利(Photo Tour de Suisse)ルイ・コスタはマイヨアルカンシェルを着ての初勝利(Photo Tour de Suisse)
ツール・ド・スイス総合上位3選手。左から2位マティアス・フランク、3連覇のルイ・コスタ、3位バウケ・モレマ(Photo: Belkin Pro Cycling Team)ツール・ド・スイス総合上位3選手。左から2位マティアス・フランク、3連覇のルイ・コスタ、3位バウケ・モレマ(Photo: Belkin Pro Cycling Team)

 この勝利でコスタはツール・ド・スイスにおける総合3連覇を達成。1933年から開催される伝統のレースにあって、3連覇は初の快挙だ。コスタにとって抜群に相性のいい大会とはいえ、3年間いずれも超級山岳で好走を見せ、総合優勝につなげていることは見逃せない。また、最終ステージで見せたように、ライバル選手やチームの動きを見ながらレースを展開するクレバーさも彼の持ち味。最終ステージにおけるメーン集団からの飛び出しも、フランクとモレマを完璧にマークしていたことが奏功したものだ。

 コスタは来るツール・ド・フランスに、初めて単独エースとして臨む。今年はまず総合トップ10を目標にするとのことだが、スイスでの走りを見る限り、さらに上位を狙うことができそうだ。

ツール・ド・スイス総合3位のバウケ・モレマ。ツール・ド・フランスでは総合表彰台を狙う(Photo: Belkin Pro Cycling Team)ツール・ド・スイス総合3位のバウケ・モレマ。ツール・ド・フランスでは総合表彰台を狙う(Photo: Belkin Pro Cycling Team)

 フランクとモレマは、それぞれ総合2位、3位で、ともにツールでは総合エースを担う。昨年ツール総合6位のモレマは、一時は総合2位につけるなど、終始安定した走りが印象的だった。今年は総合表彰台候補の1人として押さえておきたい。また、フランクは昨シーズンまでBMCレーシングチームに所属していて、グランツールではアシスト、または選考漏れといったケースが多かった。それだけに、4年ぶりとなるツールには期するものがあるだろう。

 好走を続けてファンを魅了したマルティンは、最終的にトップのコスタから2分18秒遅れてのゴール。総合4位に順位を下げてしまった。しかし、本人は「大会前の予想よりはるかに良かった。アシストの仕事もでき、今大会には満足している」とコメント。ここ数年はタイムトライアルに集中していたが、かつては総合系ライダーとして期待されていたこともあるだけに、本来の登坂力を発揮した結果ともいえよう。

カヴェンディッシュ、サガンらスプリンターも順調

 ツール・ド・スイスには、ドーフィネを回避したスプリンターが多数集結。大会中盤に設けられたスプリントステージで各選手が脚試しをした。

 第3ステージ(202.9km)は上りスプリントで、ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール)が優勝。道幅が狭く、ゴール直前までコーナーが連続したテクニカルなレイアウトを絶妙なバイクコントロールで抜け出した。

ツール・ド・スイス第4ステージを制したマーク・カヴェンディッシュ。ツール本番に向け調整は順調だ © OPQS/Tim De Waeleツール・ド・スイス第4ステージを制したマーク・カヴェンディッシュ。ツール本番に向け調整は順調だ © OPQS/Tim De Waele

 第4ステージ(160.4km)からはピュアスプリンターの出番。ここをカヴェンディッシュがしっかりとモノにした。ラスト300mを境にライバルたちが次々と早掛けするなか、カヴェンディッシュは最も得意とするラスト200mからの加速で圧勝。勝利した本人が「みんな仕掛けるのが早かった」と苦笑いしたほど、完全な勝ちパターンに持ち込んだ。

 続く第5ステージ(183.6km)もピュアスプリンター向け。しかし、テクニカルなコーナーが連続し、メーン集団前方で落車が発生した。カヴェンディッシュも巻き込まれてしまったが、大事にはいたらなかった。数選手だけが勝負に絡んだゴール争いは、サーシャ・モドロ(イタリア、ランプレ・メリダ)に軍配が挙がった。熱望した初ツールでの、ポイント賞争いに名乗りを上げた。

 前述のとおり、第6ステージではトレンティンが勝利。ツールではカヴェンディッシュのアシストを務める公算だ。そのほか、中盤に2つの超級山岳を越えてゴールを目指した第2ステージ(181.8km)では、キャメロン・メイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が逃げ切り勝利。ヴェルヴィエへの超級山岳頂上ゴールとなった第8ステージ(219.1km)は、新鋭のヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が終盤でアタックを成功させ、UCIワールドツアー初勝利を挙げている。

新城、ロッシュ、キッテルらも好調さを発揮

 UCIワールドツアー以外にも、チームごとにHCクラス、1クラスのレースをツールメンバー選考として位置付けているケースも多い。

 なかでも、ピレネー山岳を舞台に行われるルート・ドゥ・スッド(フランス、UCI2.1)は、山岳アシストの生き残りをかけたレースでもある。

ルート・ドゥ・スッド第2ステージでは、ニコラ・ロッシュ(手前)とマイケル・ロジャースのティンコフ・サクソ勢がワン・ツーフィニッシュ。総合でも1位と3位になった (Photo: Tinkoff - Saxo)ルート・ドゥ・スッド第2ステージでは、ニコラ・ロッシュ(手前)とマイケル・ロジャースのティンコフ・サクソ勢がワン・ツーフィニッシュ。総合でも1位と3位になった (Photo: Tinkoff - Saxo)

 ここでは新城幸也(チーム ヨーロッパカー)が活躍し大きなインパクトを与えた。そのほかでは、ニコラ・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)がプロキャリア初のステージレース総合優勝。マイケル・ロジャース(オーストラリア)も3位に入り、アルベルト・コンタドール(スペイン)のアシストとして準備は万全のようだ。

 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)は、ツール終盤のピレネーステージに向けた予行演習として参戦。ロッシュから45秒差の総合2位とまずまずの結果で終えている。

 平地系ライダーが多く臨んだのは、オランダで開催されたステルZLMツール(UCI2.1)。6月18日から22日にかけて行われ、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)がステージ2勝を挙げ総合優勝。9月の世界選手権を狙うためツールは回避するが、今週末のベルギー選手権に向けて好調をアピールした。

ステルZLMツールでは第1ステージ勝利のマルセル・キッテル。ジロ・デ・イタリアでの体調不良から完全に復調した © Cor Vos / Team Giant-ShimanoステルZLMツールでは第1ステージ勝利のマルセル・キッテル。ジロ・デ・イタリアでの体調不良から完全に復調した © Cor Vos / Team Giant-Shimano

 スプリンターでは、マルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・シマノ)、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)がそれぞれステージ1勝。ツールではグライペルの最終発射台を務めるグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)も1勝を挙げ、スピードマンたちの仕上がりも上々といえそうだ。

今週の爆走ライダー-ニコラ・ロッシュ(アイルランド、ティンコフ・サクソ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ルート・ドゥ・スッドでプロキャリア初の総合優勝を達成した。名門ラ・ポム・マルセイユで過ごしたアマチュア時代に無類の強さを発揮していたことを思えば、少し意外に思えてしまう。

 父は1987年にジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、世界選手権の3冠を達成したステファン氏。さらにいとこにはダニエル・マーティン(ガーミン・シャープ)と、その血筋は嫌でも期待されてしまう運命にある。それゆえ、ツールで総合10位台と20位台を行ったり来たりしていた数年間は、見る者に物足りなさを感じさせていた。

 チームメートとの確執もあり、より走りに集中できる環境が必要だった彼にとって、現チーム入りは転機となった。何より、コンタドールとの出会いは大きかったのだという。「彼のためならどんな走りもいとわない」とまで言うほど、コンタドールを慕うようになった。

 かつてのような「エースとしてのプレッシャー」から解かれたロッシュ。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャではステージ1勝を挙げ、自身グランツール最高の5位入賞。総合リーダーの証、マイヨロホも1日着用するなど、一皮むけた姿を印象付けた。

エースとしてもアシストとしても充実の走りを見せているニコラ・ロッシュ(砂田弓弦撮影=ジロ・デ・イタリア2014)エースとしてもアシストとしても充実の走りを見せているニコラ・ロッシュ(砂田弓弦撮影=ジロ・デ・イタリア2014)

 地元開幕だった今年のジロは落車の影響で不本意な結果に終わったが、ラファウ・マイカ(ポーランド)を総合6位に導くなど、アシストとして評価された。そして、ツールでは再びコンタドールを支える。

 好調のエース、コンタドールのほかアシストも良い仕上がりを見せるティンコフ・サクソ勢。その先頭に立つロッシュは、「ここ数年で最もエキサイティングなツールにしてみせる」と高らかに宣言した。

 いよいよ、ツールの覇権を獲得する戦いが始まる。

文 福光俊介

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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