メッセンジャーBambiのCMWCレポート<2>メインレース本番! 僕の結果は…ともあれ日本のメッセンジャーが上位に

現役メッセンジャー「Bambi」が、アメリカ・シカゴで開催された「サイクル・メッセンジャー・ワールド・チャンピオンシップス(CMWC)2012」に出場した。現地レポートの2回目は、大会本番の盛り上がりを詳しくお伝えします。
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いよいよメインレースの始まり

メインレースでは、広い公園に11箇所のチェックポイントが設けられます(図参照)。そして、スタート時に初めて渡される「マニフェスト」という指示書に書かれた十数件のオーダー――例えば、「’pick’VITTORIA → ‘drop’CHROME」というようなものを、できるだけ効率よく組み合わせてこなして行き、そのタイムを競います。メッセンジャーのデリバリー業務を模した、オリエンテーリング的なものですね。
前夜は思いきり楽しんだにもかかわらず、皆結構早めに来てきちんと試走します。海外勢は、DNAの違いを痛感するタフさ。もちろん、僕も仕事のクオリティで負ける気はさらさらないので、しっかりコースチェックします。


コース上のチェックポイントには、どこかのビルのようにセキュリティにうるさいチェッカーがいたり、柵と合わせて鍵をかけないと自転車を勝手にどこかへ持って行かれたり、なぜかランニングさせられたり、荷物がすごく大きかったり…それぞれ特徴があり、楽しいけど大変!大変だけど楽しい!
試走時間が終わり、メインレース予選が始まりました。思い思いのタイミングでスタートするタイムトライアルです。僕は、周りの様子をうかがいつつマイペースにスタートを切りました。
ところが、凡ミス。チェッカーが間違った荷物を受け取ったことに途中まで気づかず、その荷物を探し回る羽目に。大幅なタイムロスです。もう駄目だとわかっていましたが、リタイアだけは嫌だとなんとかすべてのオーダーをこなしました。
予選通過が発表されると、決勝前夜(4日)の「メッセンジャープロムパーティ」。きっと気負わず楽しむ、というのが正解なのでしょう。どうしても力が入りがちな僕は、まだまだ経験不足。
多才な日本勢がぞくぞくと予選通過
成績を出せないのは、やはり悔しさが残りますが…そうなると、あとは皆の応援です。予選出走者235人のうち決勝へは100人が進出、その中で日本のメッセンジャーは8人!

2008年CMWC(カナダ・トロント)の覇者、日本のSINOさんが、なんと予選を1位で通過しました。スピーディ、かつ仕事も正確。すべてにおいて憧れの存在です。SINOさんは、メッセンジャーになったきっかけを与えてくれた人であり、僕の中では別格のメッセンジャーです。
ほかに、速さには定評があり、ロードレーサーではヒルクライムの記録を持つTORIZO君。MATSUDO君は、ロードレーサーでもトラックでも速く、今回トラックイベントでは2位を獲ったようです。また、2009年東京大会の覇者、JURIさんも。唯一の日本女性であるYUKIちゃんも順当に。これだけ多く日本からの参戦があると、やはり頼もしいですね。
皆の“いい顔”を観戦したら、スプリント勝負に参戦
5日、決勝当日には、スプリントなどのサイドイベントも行われ、それがCMWCの終盤。ここは楽しむしかないわけです。

まずは、メインレース決勝。自転車を離れたスタートエリアに置き、合図で一斉に自転車を取りに走る「ルマン式」でスタートです。これは見ごたえがあります。
2時間程続くレース。「マニフェスト」には数パターンあって皆の動きはバラバラです。観ていても、誰がどの順位で走っているのかわかりません。だけど皆いい顔してるんですよ。なかなかいい場所に陣取れたので、声をかけながら写真を撮りまくりました。
レースには、地図にはない「ドライバーズプル」という新しいチェックポイントも追加されたようです。しかもチェック係は気分次第で持ち場を離れ、コース上を走り回ります。皆これには流石に翻弄されていました。
コース脇で観戦していた僕らも、何度もそのチェックポイントの事を聞かれましたよ。「ドライバーズプルってどこっ!?」って必死です。
そんな中でも、上位メンバーはペースを落とさず着実にこなしている印象でした。例年より狭めのコースには、ピスト、ロード、マウンテン、カーゴバイクが入り交じっていて、面白い。どんなジャンルの自転車にもチャンスがありそうでした。
決勝が終了すると、参加者全員での記念撮影を経て、サイドイベントへ。ここへ来るともうゆるい空気になってきます。タイムスケジュールはあてにならず、参加したいイベントがあればアナウンスをよく聞いておく事!という状態。

いつのまにか始まっていたスプリントに、参加ができました。それこそいよいよ足自慢の集結で、トラック競技のアメリカ・オリンピック強化選手だったアレックスの姿も。東京大会ではぶっちぎり1位。反則ですよ…僕の2倍はありそうな体格でした。
1回戦は、ばっちり1位通過をしましたが、2回戦はNYの「モンスタートラック」というレース3連覇のライダーに惜しくも負けてしまいました。結局、その彼が優勝しました。今回僕は、これが一番楽しかったかもしれない。途中で「バンビまくれ~!」ってMATSUDO君の応援が聞こえたのが嬉しかったな。
余韻にひたる幸せな時間

レースの合間には、また新しい出会いや再会がたくさんありました。今年は特にNYから来ている人が多く、心なしかスタイリッシュです。「その服いいね」とか「自転車いいね」、からコミュニケーションが広がっていきます。本当にたくさんの人達と話した結果、あまりの多さに正直なところ名前を覚えきれておりません…
出展もなかなか楽しくて、メッセンジャーバッグのCHROMEやハンドメイドのバッグ屋などに加え、GARMINブースも見かけました。日本では見かけないカラーリングのバッグであったり、ピストにもGARMINが取り付けられていたりと、海外にきていることを実感させてくれます。
メインレースが終わると、会場には穏やかな空気が流れます。海にしか見えないミシガン湖のほとり。日差しが強くてもすごく心地いい風が吹いていて、湖畔のサイクリングロードをのんびり走ったりしましたよ。
パーティへ備え、一度ホテルへ帰る道すがらも、メッセンジャー達と「どうだった?」「楽しんでる?」「また今夜のパーティで!」と話しながら…すごく幸せな時間です。
続いては総合優勝などの表彰が行われるパーティへ。(次回へ続く)
<3>「楽しんでる?」 世界に繋がるメッセンジャーの“合言葉”→
- メインレース決勝のスタート直前
- コースマップ
- 日本人のファイルを利用したコースマップ設置スタイル。海外ライダーはマップ貼付のダンボールに枝を刺して固定したりとワイルド
- メインレース決勝の様子
- メインレース予選走行中
- チェックポイント「PBR」にて
- トラックにも強いTORIZO君
- メインレース予選走行中のSINOさん
- 予選終了後の“Bambi”。ガッカリな様子
- コーヒーショップブース。アイスハーブティーがとても美味
- 「SHAGBAG」ブース
- 「CHROME」ブース
- 決勝ではカーゴバイクも走行
- メインレース決勝スタート!
- メインレース決勝走行中のSINOさん
- 時折飛び込む邪魔だか応援。決勝を盛り上げてました
- オシャレなジャージの地元メッセンジャーと
- スプリント2戦目。グリーンジャージの優勝者のうしろ、白Tシャツが“Bambi”
- ミシガン湖畔のサイクリングロードにて
- アフターパーティへ向かう途中で遭遇したメッセンジャーたちと
南秀治(みなみ しゅうじ)
役者を志し上京するも、自転車好きが高じてメッセンジャーとなる。モデル業などをこなしつつ、自転車の世界を幅広く探求中。自転車好きのイケメンモデルらによるユニット「チャリメンズ」メンバーのひとり。メッセンジャーネームは“Bambi”(バンビ)。1983年生まれ、東京在住。ブログ「RIDE MY LIFE」。