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つれづれイタリア~ノ<29>うっかり使うと危険!? イタリアと日本のジェスチャーはこんなに違う

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ジロ・デ・イタリア第17ステージ。逃げ集団から飛び出したステファノ・ピラッツィ(砂田弓弦撮影)ジロ・デ・イタリア第17ステージ。逃げ集団から飛び出したステファノ・ピラッツィ(砂田弓弦撮影)

 5月28日に行われたジロ・デ・イタリア第17ステージ、ゴールまでラスト1km。イタリアのプロ・コンチネンタルチーム、バルディアーニCFSの小さなヒルクライマー、ステファノ・ピラッツィ選手が小さな逃げ集団から飛び出し、必死に逃げ切りを狙いました。

 プロ5年目でいまだ勝利のなかったピラッツィが、初勝利を飾ろうという場面。イタリア人のステージ優勝の可能性を感じたイタリア国営テレビのコメンテーターたちの声にも力が入りました!

 「ピラッツィ、ピラッツィが前に飛び出しました!残り300m!しかし、逃げ集団は牽制に入っています。追いつきません」

 「100m!ピラッツィ!プロになって念願の初優勝の夢が叶います!」

 「ピラッツィ優勝!ピラッツィが手を空に上げて喜びのポーーーーズ……」

プロ初勝利を挙げ感情を爆発させたピラッツィ。このジェスチャーがイタリア国内で騒動に(砂田弓弦撮影)プロ初勝利を挙げ感情を爆発させたピラッツィ(砂田弓弦撮影)

 「……」

 「ね?今の見た?」

 「ノーコメント」

◇         ◇

 私もテレビを見ながら目を疑いました。ゴール直後のピラッツィ選手はイタリア人の誰でも知っている下品なジェスチャーをしました。「gesto dell’ombrello(傘のジェスチャー)」といい、テレビだけでなく人前ではふさわしくないとされています。コメンテーターたちはどう解釈すべきか、ずいぶん困惑していました。

やってはいけない「傘のジェスチャー」

 変わった名前の傘のジェスチャーは、相手に強烈な屈辱を与えるものです。上品に言えば「見たか!お前、俺に負けたよ!」。中指を立てることと同様の意味です。腕に反対の手を当て、拳を顔の位置まで上げるしぐさは敗者に対し、屈辱の性行為を連想させます。イタリアで不意にこれをやったらケンカになります。

ゴール後のピラッツィ。さまざまな感情が混ざったような表情(砂田弓弦撮影)ゴール後のピラッツィ。さまざまな感情が混ざったような表情(砂田弓弦撮影)

 さて、普段はおとなしく繊細なピラッツィ選手はなぜこのようなことをしてしまったのでしょうか。本人は次のように弁明しています。

 「“Scusate, dopo 5 anni di critiche dovevo sfogarmi”(大変失礼なことをしました。しかし、プロになって5年。批判ばかり受けてきましたので、怒りが爆発しました)」

 ずっと勝てなかったプレッシャーや、厳しい野次に対する過剰な反応だったようです。その後、きちんと謝罪したので騒動はおさまりました。

 ジェスチャーは、国や文化によってかなり異なっています。オーバーな身振り手振りは、特にラテン文化やアラブ文化によく見られ、イタリア人もいろいろなジェスチャーをします。たくさんの仮説がありますが、由来は古代ローマ時代に遡るかもしれません。巨大な帝国を築いたローマ人は、ラテン語がうまく話せない多くの民族と接する時に、ジェスチャーの手助けが欠かせなかったのでしょう。

「ボーノ」は誰が考えた?

 さて、日本人が使うジェスチャーで、イタリアで誤解されそうなものをピックアップして紹介しましょう。

【知らない】

 手を顔の前で左右に振るジェスチャー。日本では「知らない」あるいは「いらない」を意味しますが、イタリアでは「あほか!」「あたま大丈夫か」になります。なるべく控えましょう。

 イタリアで「知らない」を体で表現したい場合、唇を下にゆがめながら、目を大きく見開き、胴体にひじをつけ、手のひらを広げましょう。

日本の「知らない」は、イタリアでは「あほか」に日本の「知らない」は、イタリアでは「あほか」に
イタリア式の「知らない」はこのジェスチャーイタリア式の「知らない」はこのジェスチャー

【食べる】

つまんで食べるようなしぐさはイタリアでは「何か用!?」につまんで食べるようなしぐさはイタリアでは「何か用!?」に

 「食べる」を表現する時、つかむように指先を閉じて、口に運んでいくジェスチャー。実はイタリアでけんかを売るために使われる仕草に似ています。「何か用!?」といった表現になります。

 お腹が減ったら、胃袋の前で手のひらをあてて、回しましょう。

【ちょっと失礼】

人の前を通る時に使うジェスチャー。イタリアでは「近づいたらぶん殴る!」になってしまう人の前を通る時に使うジェスチャー。イタリアでは「近づいたらぶん殴る!」になってしまう

 人の前を通る時に、手を軽く延ばして「ちょっと失礼」と上下に空気を切るジェスチャー。これはとても危険で、イタリアでは大変なことになります。

 「やるのか、コノヤロー!」「近づいたらぶん殴る!」というジェスチャーによく似ています。もし交差点を渡る時に使ってしまったら、無事に反対側にたどり着けないかもしれません。念のために控えましょう。

【ボーノ!】

 日本のジェスチャーとは少し違いますが、もうひとつご紹介しておきましょう。

 イタリアのレストランや友達宅での食事で、実においしいパスタが出てきたとします。イタリア人を喜ばせるため、人差し指をほっぺたにあて、手首を回転させながら「ボーノ、ボーノ」とおいしさをアピール。

 このしぐさは確かにイタリアで使います。しかし、離乳食を食べる子どもの前でしかしません。大人の前でやったら、滑稽に見えてしまうでしょう。日本の芸能人のグルメリポートのようなオーバーアクションも好まれません。食べ物の前で騒ぐと、下品とされるからです。あれは誰が考案したのでしょう?

 どうしても体を使って「おいしさ」を表現したいのであれば、指先を口に当てて、それに軽くキスをしたら、空に向けて指を開きましょう。

 「(あなたの料理を触ったこの手にキスするほど)おいしかった」を意味します。大人ですね。

◇         ◇

 さて、紹介してきたジェスチャーを動画にまとめてみました。危険なジェスチャーはうっかり使わないよう気をつけてくださいね。

 面白い身振り手振りはまだまだたくさんありますが、ここまでにしましょう。イタリアへ行ったらぜひ観察してみてください。イタリア人の情熱が伝わるはず!

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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