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はらぺこサイクルキッチン<14>植物の生命力を「丸ごと取り入れる」ベジタリアン生活 “菜食アスリート”を実験中

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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活きがいい地場産の有機栽培品を食卓へ。バットに乗せたのは脂肪燃焼スープの材料活きがいい地場産の有機栽培品を食卓へ。バットに乗せたのは脂肪燃焼スープの材料

 夫でマウンテンバイク(MTB)プロライダーの池田祐樹選手とともに、いま夫婦で実践しているのは、動物性の食品を摂らない「プラントベース(植物由来)」の食生活、ベジタリアンな日々です。「完全にプラントベースにしてみないと効果が判断できない」と言う祐樹さんに押され、肉・魚・乳製品は植物性のもので代用し始めてからおそよ2週間が経ちました。賛否両論があることは承知で書きますが、その理由は大きく2つ。ひとつは、消化に使うエネルギーを回復に回すため。もうひとつは、食の安全性について見直したためです。メニューを紹介しながらお伝えします。

転戦を見据えた“回復のための”食事

 動物性の食品は、消化にかなりのエネルギーと時間を要すると言われています。アスリートは回復が命。連日のトレーニング、ステージレースに対応できる身体づくりに加えて、スポーツニュートリション(補給食)は内臓を酷使します。大量に摂取するレースが終わった後にも消化をスムーズに行えるようにするために、植物性の食品は特に有効なのではないかと思います。筋肉疲労だけでなく、身体を造る内蔵の疲労も取る必要があるのです。

2014年春の米国遠征でサラダを皿に盛る池田祐樹選手2014年春の米国遠征でサラダを皿に盛る池田祐樹選手

 先のアメリカ遠征でプラントベースの食生活を実践した際も、身体の回復と、何ともいえない心地よさを実感しました。

 祐樹さんは、今年6月末に南アフリカで開催されるMTBマラソン世界選手権に日本代表として出場することが決まりました。また、出発前日の6月22日には、「セルフディスカバリーアドベンチャーシリーズ ヒルクライム・イン・おんたけ」へ参戦。さらに南アフリカの世界選後は、アメリカ・カナダ遠征のため9月まで転戦が続きます。

 再びベジタリアン生活を始めてみようと思ったきっかけは、まさにその転戦に次ぐ転戦で疲労しきった身体を少しでも早く回復させるため。「冷や奴にかけるオカカくらいはいいかな」と言う私に「100%プラントベースにしてみないと効果が分からない」と話す祐樹さんの希望もあり、一度完全に動物性を断つことで身体にどのような反応が出るか、実験してみることにしました。

レジェンド級のプロ選手は完全菜食主義者だった

 食事は「バランス」が大切です。でもそのバランスをどこから摂るかを考えた時に、例えば牛肉に含まれる栄養素がどれだけ素晴らしくても、残念ながら店頭に並んでいる肉のほとんどはホルモン剤を打たれたものだということに気が付きます。

 どのような環境で育ち、殺生され、加工され、保存され、口に入るのか。全てを知ることは容易ではありません。その点、有機野菜などは生産者が明確であったり安全の基準が設けられていたり、比較的安心です。栄養素だけを見るのではなく、環境を見ることもまた身体をつくることにつながると思います。

トレーニングなどからの回復や食材の育まれた環境を考えた食事をトレーニングなどからの回復や食材の育まれた環境を考えた食事を

 そしてその栄養は、フレッシュな状態で身体に取り入れたい。野菜や穀物は調理する直前まで生きています。その生命力を「できる限り丸ごと取り入れることでバランスも保たれる」というシンプルな考えです。

 「栄養素が足りなくなるのでは?」という心配もあるかもしれませんが、私が9年前に貧血で倒れた際、かかりつけの先生に「人間は動物性より植物性の方が体内に吸収されやすいから、鉄分強化に根菜を食べなさい」と言われました。ドイツでもハーブでつくられた鉄分の飲料が長く愛飲されています。

 そんな中、ウルトラトレイルランニング界のレジェンドとして知られているスコット・ジュレク選手が、完全菜食主義者であることを知りました。長距離を走り、数々の大会で優勝し、40歳になった今も現役で走っているということを聞き、彼の著書を夫婦で読みました。

 よくよく考えてみれば、牛や馬は草だけを食べて大きく育ちます。「動物性を摂らなければならない」という概念を少し外してみることにしました。

地場産の食材を使った彩りメニュー

 食べているのは、穀物・野菜・海草類・豆類。動物性に頼れない分、一層バランスに気を配るようになりました。「生活するためのエネルギーだけじゃない。アスリートの身体をつくるのだ」ということを念頭に、菜食アスリートに不足しがちなタンパク質、鉄分、ビタミン、アミノ酸を、1日のトータルできちんと摂れているかどうか…緊張感もありました。

 プラントベースの食生活を始めるにあたっては、グルテンフリーからローグルテンとすることにしました。一例ですが、最近はまっているモロヘイヤヌードルには、小麦が入っています。

 また、食材には、とっても活きのいい地場産の有機栽培品をチョイスしています。プラントベースではほとんど和食ですが、栄養素だけではなく、やはり味も見た目もきちんと満足感のあるメニューにしたいと考えています。そんなメニューを写真とともにいくつか紹介します。

ひじき、豆、コーン、トマト、スプラウトなど20品目近いサラダに市販のモロヘイヤヌードルをのせて。ぬか漬けで腸内環境もバッチリひじき、豆、コーン、トマト、スプラウトなど20品目近いサラダに市販のモロヘイヤヌードルをのせて。ぬか漬けで腸内環境もバッチリ
オーガニックメキシカンチリビーンズも有効なたんぱく質源。黒米とも相性が良い。白滝と野菜の中華風炒めも、ニンニクと生姜で香り豊かにオーガニックメキシカンチリビーンズも有効なたんぱく質源。黒米とも相性が良い。白滝と野菜の中華風炒めも、ニンニクと生姜で香り豊かに
ウドをトッピングした豆腐ステーキ。赤ワインで煮込んだソースで味にもバリエーションを。小松菜のおひたし、たんぱく質が含まれるアボカドも便利な食材。味付けはレモンを搾って、岩塩・胡椒をかけただけ。カットしてのせたレモンは無農薬国産のため皮まで食べられるウドをトッピングした豆腐ステーキ。赤ワインで煮込んだソースで味にもバリエーションを。小松菜のおひたし、たんぱく質が含まれるアボカドも便利な食材。味付けはレモンを搾って、岩塩・胡椒をかけただけ。カットしてのせたレモンは無農薬国産のため皮まで食べられる
アスリートフー丼のベジタブルバーション。発芽玄米の上に、豆腐やごま、海苔、大根葉や胡瓜のぬか漬け、紅生薑をトッピング。豆やパプリカなどたっぷりの野菜が入ったサラダやトマト、味噌汁に加え6つの野菜が入った脂肪燃焼スープもアスリートフー丼のベジタブルバーション。発芽玄米の上に、豆腐やごま、海苔、大根葉や胡瓜のぬか漬け、紅生薑をトッピング。豆やパプリカなどたっぷりの野菜が入ったサラダやトマト、味噌汁に加え6つの野菜が入った脂肪燃焼スープも

選手の気持ちを知るためにMTBはじめました

 実は私、「選手の気持ちを少しでも体感できれば、支える側として改めて気が付くことがたくさんあるだろう」と考え、人生で初めて自転車レースに出場します。夫が出場する「セルフディスカバリーアドベンチャーシリーズ ヒルクライム・イン・おんたけ」に、私もエントリーしました。食事と運動の兼ね合いを知るだけでなく、精神面でも共感することも大切でしょう。選手にとって何が必要か、そうでないかを理解し、先回りして行動できるようになりたいのです。

「ヒルクライムおんたけ」出場に向けて東京西部の峠でトレーニングする池田清子さん。ボトルの中身は細切りにした昆布を一晩水に浸した昆布水。アミノ酸とナトリウム補給にもなる「ヒルクライムおんたけ」出場に向けて東京西部の峠でトレーニングする池田清子さん。ボトルの中身は細切りにした昆布を一晩水に浸した昆布水。アミノ酸とナトリウム補給にもなる

 MTBについては素人同然の私ですが、御嶽山を登るためのトレーニングを開始。本番では標高890mから2180mまで駆け上がります。

 トレーニングでは、たとえ土砂降りの雨が降ろうとも、舗装路の坂を決めた数だけ登り降り…かなり辛いですが、これも選手が何を思うのかを共有するための方法のひとつ。プロの比にはなりませんが「この辛いトレーニングの後には何を食べたいだろうか」と考え、自分が欲するものを昼食にすることもあります。私は、酢が効いたものが食べやすいと感じました。疲労回復を望めるクエン酸(酢)かぁ…理にかなっていて面白い!

 トレーニングを終えた後は、疲労が残っていないか、回復が追いついているかなど、夫婦で身体の状態を報告し合います。プラントベースの食生活を実践していると、ハードなトレーニングの翌日でも、疲労が残っていない、パワー数値も良好、目覚めがよい、お通じもよい…など、今のところなかなかいい感じですよ。

 今の食生活は、“体を張った実験”と言えるかもしれません。私たちに合った食生活を見つける旅の途中駅。まずは私も登れる体力と身体づくり、かなり急ピッチですが進めています。またご報告できることを祈って!

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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