新コースは「参加ライダーと地域への挑戦」“鬼脚”認定へのハードな道のり 獲得標高3547mの「ツール・ド・にし阿波」SSコース実走レポート

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 “秘境”というべき徳島県西部の豊かな自然を舞台に5月25日開催された「自転車王国とくしま ツール・ド・にし阿波2014」。今大会では、40~130kmの4コースに加えて、大会史上最長の166km、獲得標高3547mのSSコースを新設。完走者を“鬼脚”認定するこの難関コースに、徳島県在住の編集者・自転車ライターの福光俊介さんが挑戦しました。その実走レポートをお届けします。

スタートのときを待つSSコース参加者たち(福光俊介撮影)スタートのときを待つSSコース参加者たち

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“鬼脚”コースにチャレンジ!

 取材で訪れた大会とはいえ、現地まで足を運んでおきながら「がんばれ~!」なんて応援だけしているのは悔しい! ということで筆者も走ってきました、もちろんSSコースを。普段、徳島で生活をしている身としては、身近で行われる大会の新コースに出走しないわけにはいきません。

受付を済ませる参加者たち。ゼッケンや参加賞を受け取り、スタートに備える(福光俊介撮影)受付を済ませる参加者たち。ゼッケンや参加賞を受け取り、スタートに備える

 実は大会前日の5月24日までツアー・オブ・ジャパン(TOJ)に帯同取材していて、第5ステージ(伊豆ステージ)終了後、Cyclist取材班と分かれて大急ぎでクルマで徳島へと戻ったのでした。道中、眠くなったり、また眠くなったり、さらに眠くなったり…で、何度も休憩を入れているうちに、徳島へたどり着いたのはイベント当日の午前2時。SSコースのスタートが4時間後に迫っている…ほぼ一睡もせずに会場へと向かいました。

 会場までの移動では、完走できなかった場合の言い訳をどうしようか、ずっと考えていました。しかし会場へ到着すると、何だかみんなが優しい…「TOJ取材お疲れ!」「全然寝てないんとちゃう?」「いけるん?(阿波弁で“大丈夫?”の意)」といった声をかけてもらい、とても安心しました。元気を取り戻し、スタート地点の撮影もほどほどに166kmの長旅へと出発しました。

午前6時、SSコース第1組がスタート(福光俊介撮影)午前6時、SSコース第1組がスタート
序盤の平坦区間はトレインを組んで、ライダー同士協力して前を目指します(福光俊介撮影)序盤の平坦区間はトレインを組んで、ライダー同士協力して前を目指します
頂上までの残り距離表示を励みに、ライダーたちは難関山岳を上ります(福光俊介撮影)頂上までの残り距離表示を励みに、ライダーたちは難関山岳を上ります

 スタートして40kmほどはおおむねフラット。最初の山岳となる「京柱峠」を前に第1チェックポイントを迎えます。ここで筆者はミスを犯しました。トイレに時間をかけすぎた…。気が付くと、チェックポイントには誰もいなくなり、スタッフに聞くと「みんな行きましたよ!」。なんと最後尾からの再スタートとなってしまいました。

 上りは得意なのですが、あまりにも出遅れたことで、まったく前のライダーが見えないまま、中腹まで一人旅に。ゴールまでの制限時間を考えると、あまりゆっくりもしていられないので、頂上へと急ぎます。

チェックポイントごとに異なる地域色が感じられる。三好市東祖谷・栃之瀬では、「こんにゃくのから揚げ」や「祖谷のじゃがいも」などがふるまわれた(福光俊介撮影)三好市東祖谷・栃之瀬では「こんにゃくのから揚げ」や「祖谷のじゃがいも」などがふるまわれた

 山頂や麓など、コースの節目にはチェックポイントが設けられています。そこでは、菓子パンやゼリードリンク、水などを自由に補給できるほか、その地域特産の料理が振舞われます。

 地域の人々との交流も楽しめるのが「ツール・ド・にし阿波」の魅力。筆者も徳島県西部で1年間生活したことがあるのですが、人々の温かさがこの土地の誇るべきところでもあると思っています。

フィードゾーンでは、パンやエナジーゼリー、地域の特産品などがふるまわれた(福光俊介撮影)フィードゾーンでは、パンやエナジーゼリー、地域の特産品などがふるまわれた
東祖谷地域の味を堪能する参加者。休憩もほどほどにライド再開へ(福光俊介撮影)東祖谷地域の味を堪能する参加者。休憩もほどほどにライド再開へ
2つ目の山岳「落合峠」へ。この峠で多くの参加者が地獄を見たとか見なかったとか…!?(福光俊介撮影)2つ目の山岳「落合峠」へ。この峠で多くの参加者が地獄を見たとか見なかったとか…!?

 「京柱峠」までは調子が良かったのに、再び走り始めると、次の山岳「落合峠」で大ブレーキ。約12kmで高低差1000mの上りはさすがに堪えました。いつ脚が攣ってもおかしくないような状態に陥り、思うようにペダリングができなくなってしまいました。何とかたどり着いた頂上ですが、再び休憩に時間をかけすぎて、他コースのライダーが続々と到着する事態に。またしても後方から追い上げることとなってしまいます。

 「落合峠」の下りからしばらくは吉野川流域の平地です。その間、アイスが配られるフィードゾーンや、特産のうどん・そばが食べられるチェックポイントが設けられたりしていたわけですが、到着早々にタイムアウト時間が迫っていることを告げられ、何も食べることができずに再出発を強いられてしまったのでした。

エイドステーションではアイスの配布も。火照った体をいやして再出発(福光俊介撮影)エイドステーションではアイスの配布も。火照った体をいやして再出発
徳島の郷土料理「そば米雑炊」でライダーたちをおもてなし(福光俊介撮影)徳島の郷土料理「そば米雑炊」でライダーたちをおもてなし

平坦路で山越えのダメージが…

 この時点ですでにスタートから100kmを超えているのですが、ここから3つ目の山岳となる「西山(雲辺寺山)」までは約30kmの平坦。参加者に聞くと、この平坦路で山越えのダメージが出てくるとのこと…。この区間で後れを取り戻したかったのですが、案の定、脚にきてしまいました。しかも眠い。前夜のツケが出てしまったようです。

はるか先の頂上を目指します。自然を満喫する余裕はありません…(福光俊介撮影)はるか先の頂上を目指します。自然を満喫する余裕はありません…

 途中リタイアをしようと、何度心の底から思ったことでしょうか。収用車が来ないかと後ろを振り返るも、見えるのはボクと同様に消耗しきったライダーたちばかり…。どうにか西山の入口へと到達したわけですが、ここからゴールまでは距離が近いこともあり、ショートカットしてゴール取材に切り替えようかとも考えました。ただ、不思議なことに、体調が良くなっていくように感じ、気を取り直して「再スタートしよう」と決意します。

3つ目の山、西山に設けられたSSコース最後の休憩所。ゴールまで残り16km(福光俊介撮影)3つ目の山、西山に設けられたSSコース最後の休憩所。ゴールまで残り16km

 恐らく、途中で口にしていたエナジーゼリーの効果だと思います。劇的に復活したわけではありませんが、3つ目の山は、ゆっくり上る分には何とかなるくらいに回復しました。それでも、タイムアウトの不安は常に付きまといます。下りで飛ばすのは好きではないのですが、時間が迫っている以上、ある程度トライするしかありません。大会のために交通規制はされていないので、信号待ちも避けては通れません。

 それもあって、制限時間内のゴールを確信できたのは、残り1kmを切ってから。サイクルロードレースでは、グランツールなどでグルペットがタイムアウトを免れようと必死にタイム差を調整すると聞きますが、その時のスリルを少しばかり感じられたような気がします。そして、やっとの思いで166kmゴールすることができました。

166kmを走りきり、ゴールを果たしたライダーたち(福光俊介撮影)166kmを走りきり、ゴールを果たしたライダーたち

 スタート時に数人のライド仲間が先行していたので、彼らに追いつこうと密かに考えていたのですが、とてもそれはできませんでした。もっとも、ゴールでグッタリするボクの横で、にこやかにお接待のうどんを食べているところを見ると、彼らはきっと余裕でゴールまで走り切ったのだろうなと思うのでした。

無事にゴールし安堵の参加者たち。ゴール地点では、うどんやそばが無料でふるまわれた(福光俊介撮影)無事にゴールし安堵の参加者たち。ゴール地点では、うどんやそばが無料でふるまわれた
パンクや落車にめげず、がんばって完走しました!(福光俊介撮影)パンクや落車にめげず、がんばって完走しました!

昨年までとは比較にならない難しさ

 SSコースを完走したライダーたちは、一様にコースの難易度の高さを口にしていました。特に多かったのが「昨年までとは比較にならない」という感想。ツール・ド・にし阿波プロジェクトの田埜泰弘理事長は、「徳島県西部ならではのライドコースを県内外のライダーに堪能してもらうこと」を前提に、これまで以上にハードなコース設定をコンセプトに据えたといいます。

にし阿波地域の人々の暮らしが垣間見えるのが、このイベントの良さの1つ(福光俊介撮影)にし阿波地域の人々の暮らしが垣間見えるのが、このイベントの良さの1つ

 最難関コースにチャレンジするライダーの多くは、日頃から鍛え上げている猛者たち。彼らはこれまでのにし阿波のコースに対して「思いのほか簡単だ」「いまひとつ物足りない」といった思いを抱くことも少なくなかったそうです。そこで田埜理事長を筆頭に、プロジェクトの面々は「にし阿波地域でこれだけのコースができるんだ!」との思いを具現化。今大会は、いわば参加ライダーと徳島県西部への大きなチャレンジでもあったといえそうです。

沿道では地元の人々が声援を送ってくれます(福光俊介撮影)沿道では地元の人々が声援を送ってくれます
SSコース完走者に配られる「鬼脚ステッカー」。今回は191人が出走し、129人が“鬼脚”認定を受けた(福光俊介撮影)SSコース完走者に配られる「鬼脚ステッカー」。今回は191人が出走し、129人が“鬼脚”認定を受けた

 大会には徳島県外からの参加者も増え、年々広がりを見せています。プロジェクトでは今後のビジョンについて、「四国の中央部に位置する地理的な利点やアクセスの良さを生かして、四国四県はもとより、四国の外からの参加者も迎え入れたい」としています。そして、多くのライダーを苦しめたコースについては、今回をベースにさらに成熟させたいとも。もしかすると、来年はもっと厳しいコースがわれわれを待ち受けているかもしれません!

 徳島県は地理的に大きく3つに分けられます。平野部や周囲に海を臨む北東部や南部と異なり、ツール・ド・にし阿波が行われる西部は、四国山地と吉野川水系の川がいくつも流れる雄大な自然が自慢。さらに山間部では、冬に雪で閉ざされる地域もあることから、古くから独自の文化が栄えてきました。そうした独特の風土や、徳島県西部地域の結束力を示すイベントとして、回を重ねるごとに認知度や人気の高まりが期待されています。

SSコース2つ目の山岳・落合峠頂上チェックポイント。厳しい山を上ると、美しい景観が望める(福光俊介撮影)SSコース2つ目の山岳・落合峠頂上チェックポイント。厳しい山を上ると、美しい景観が望める

 きっと来年は、今年以上に洗練されたオーガナイズのもとで、充実したライドを楽しめることでしょう。今年参加した方も、参加されなかった方も、来年はぜひ徳島へ! 一緒に“鬼脚”を目指しましょう。

(レポート 福光俊介)

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