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栗村修の“輪”生相談<24>17歳男性「腰の痛みはプロの選手でもよくあるケガなのでしょうか」

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17歳の高校生です。大学に入ったらロードレースを本格的に始めようと思うのですが、ここ一年間ほど腰痛を患っています。

 腰の痛みはプロの選手でもよくあるケガなのでしょうか。また、レースにどれほどの影響を与えるのでしょうか。

(17歳男性)

 選手が痛めやすい場所というと、やはり膝と腰ですね。高校生の質問者さんは腰を痛めていらっしゃるということですが、若手の選手でも、膝や腰の故障に悩んでいる選手がたくさんいます。故障した場合、何をおいてもまずは専門家であるお医者さんの判断を仰ぐことが大切です。自己判断は危険です。

 さて、膝と腰は密接に関係しています。膝を痛めた選手が膝をかばいながら走ったせいで腰痛が出たり、その逆のパターンもあります。また、ヘルニアなど、生まれ持った要因がある場合も少なくないでしょう。全身は連動しているのです。

昨年高卒プロ1年目ながら大活躍した西村大輝選手(シマノレーシング)。今年は腰の手術のため戦列を離れている昨年高卒プロ1年目ながら大活躍した西村大輝選手(シマノレーシング)。今年は腰の手術のため戦列を離れている

 人間は、自転車に乗るように設計(?)された生物でありませんから、自転車に乗るという行為にはいろいろと無理があります。そうですね、たとえば、クリートのフローティング機構を思い起こしてください。「ペダルを回す」ことだけを考えれば、力が逃げるフローティング機構は必要ないはずですよね。でも、人間の下半身はペダリングのために作られているわけではありません。ペダリング中に、足が微妙にねじれたりする。そこで、個人差はありますが、体に問題が生じないように無理なくペダリングをするためにはフローティング機構が必要であるということです。

 無理をしている以上、どうしても痛みが出ることはあります。その原因は多様だと思います。フィジカルの強化が不足している場合もあれば、生まれ持った原因による、どうしようもない場合もあるはずです。後者の場合、残念ですが、対策はあまりないのかもしれません。

 しかし僕は、体の痛みは、強化によって克服できるものも少なくないのではないかと思っています。特に、若い選手の場合です。

 自動車に例えて考えてみましょう。エンジン(動力源)は心肺機能や筋肉系でしょうか。一方、痛みがでる腰や膝は、フレームや足回りなどのシャーシですね。

 一般論ですが、僕の経験にかんがみると、欧米人と比べて、日本人はこのシャーシが弱い気がします。アスリートに限らず、あっちの人って、そもそもがごついですよね。脚もまっすぐに見えますし、前傾姿勢も深い。つまり、シャーシが強靭で、自転車向きだということです。

今年のツアー・オブ・ジャパンで活躍したヒュー・カーシー選手(イギリス、ラファ・コンドール・JLT)。普段は長い手足が華奢さを感じさせるが、自転車に乗るとこの安定感今年のツアー・オブ・ジャパンで活躍したヒュー・カーシー選手(イギリス、ラファ・コンドール・JLT)。普段は長い手足が華奢さを感じさせるが、自転車に乗るとこの安定感

 日本の若手選手が膝や腰を痛めがちなのは、このせいではないかと思います。エンジンは強くても、シャーシが弱い。大馬力のエンジンをもろいシャーシに搭載したら、どうなるかはっきりしていますよね。心肺機能以前に、その土台が弱いんじゃないかと。

 しかし、シャーシは鍛えられます。心肺機能はほとんどが生まれ持った才能で決まってしまいますが、シャーシは違います。きちんとしたケアやスポーツ科学によって、強化や保守が可能であるはずです。

 ところが、今の日本ではこの部分を、個人の資質に委ねてしまっているのが現状です。心肺能力(エンジン)が強ければ、国内ではとりあえず結果が出ます。しかし、いざ海外で強力なシャーシを持った選手たちを相手に戦うと、話が違います。膝が痛い。膝をかばって走ったら今度は腰が痛い…ああ、俺には才能がないんだろうか? しかし、それは才能不足ではないのかもしれません。

 最近よく考えるのですが、自転車選手はボディビルを学ぶべきです。ビルダーになろうというのではありません。体の構造や、狙った箇所に筋肉を付ける方法を知るべきだと思うのです。漠然と筋肉を付けることはできても、特定の場所を鍛えるのは簡単ではありません。バランスよく筋肉を付けるのも難しい。そのためのノウハウは、ボディビルの世界にはたくさんあります。

 エンジンなど才能によって決まる領域と、シャーシなど強化可能な部分とははっきりと区別すべきです。現に、今、日本選手が活躍しているスポーツは、強化できる領域をきちんと強化した競技です。もちろん、新城幸也選手のように、すべてを持って生まれてきた選手もいるのですが…。

 繰り返しますが、シャーシの痛みに悩んでいる質問者さんは、まずはお医者さんとよく相談し、どういう種類の故障なのかをよく見極めてください。そしてもし、原因が生まれ持った疾患ではない、つまり強化が可能であるならば、シャーシのケアと強化に力を入れてみてください。エンジンよりも、まずはシャーシです。シャーシが弱い選手は、上には行けません。

(編集 佐藤喬・写真 米山一輝)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 「宇都宮ブリッツェン」テクニカルアドバイザー、「J SPORTS」サイクルロードレースレース解説者、「ツアー・オブ・ジャパン」副イベントディレクター。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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