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はらぺこサイクルキッチン<13>新しい出会いが安心感へ 自炊と、宿でのコミュニケーションをバランスよく実践した欧州遠征

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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 アメリカから始まった全5週間の海外遠征。後半は、ベルギーとドイツでの1週間ずつ滞在しました。前回はヨーロッパでのフィード奮闘記をお伝えしましたが、今回は私たちが経験した欧州の食事情を、たくさんの写真とともにご紹介します。

ドイツで見つけたマーケットで食材をゲット。新鮮な野菜が手に入りましたドイツで見つけたマーケットで食材をゲット。新鮮な野菜が手に入りました

キッチン無しの宿で試行錯誤

 ベルギーもドイツも、それぞれアメリカとはガラッと異なる環境でした。2人とも初めての場所で、土地勘がなく、予想以上の言葉の壁にもぶつかり、最初は正直とまどいました。売っているものも、食べているものも違います。それでも、1週間も滞在すれば、街を去る頃には寂しく感じるのですから不思議ですね。

 ベルギーで私たちを迎えてくれたのは、滞在するホテルのオーナーの奥様。併設するレストランを切り盛りするシェフでもありました。宿泊する部屋がキッチン付きでないことは分かっていましたが、お湯を沸かす機器、冷蔵庫、電子レンジもなし。思っていた以上に自炊は難しそうでした。

 早速ホテルのレストランで昼食を取りました。メイン料理は揚げ物が多かったので、サラダをチョイス。ところがサラダにかかっていたドレッシングやトッピングには控えたい油が多く、祐樹さんと相談し、できる限り自炊をしていこうということになりました。

部屋で作った具沢山のサラダ部屋で作った具沢山のサラダ
車内で持参したサラダを食べる池田祐樹選手車内で持参したサラダを食べる池田祐樹選手

 ホテルから近いスーパーマーケットは、車で20分程の場所に2軒あると聞き、さっそく訪ねてみたのですが、これがまたアメリカとは全然違う。グルテンフリー商品やオーガニック野菜と記された商品は見当たらないし、お惣菜やお弁当のようなものもありません。宿には包丁もお皿もお湯もないのだから、自炊と言ってもサラダ位しか無理ということでしょうか…。

 迷った末、お皿代わりにもなる大きな保存用タッパーとサラダの材料・電子レンジ専用のレトルトカレーを購入。オーナーに頼んで、ホテルの冷蔵庫を貸していただくことになりました。衛生上の問題で断られることもあるのですが、今回は清潔な袋に食材をまとめて保存しました。さらに、カレーは厨房の電子レンジで温めてもらいました。

心の豊かさを育む食事の時間を求めて

ベルギーでの試走を終えて景色を見ながら外で昼食ベルギーでの試走を終えて景色を見ながら外で昼食

 しかし、テーブルもない部屋で食べる食事は、気持ちの面でなんだか寂しいというか…複雑な想いにかられました。食事は、お腹が満たされるだけではなく、気持ちの切り替えや心の豊かさにつながります。ヘルシーな食事を重要視したはずが、結果的に満たされるどころかその逆となってしまいました。

 いくら良い食材を選んでも、どういうシチュエーションで食べるかで、場合によっては身体の中で有効な栄養にならない気がしてきました。環境が気持ちの安心感・安定感にどれだけ結びついているかを実感した夜でした。

ベルギーの宿では野菜スープがお気に入りでしたベルギーの宿では野菜スープがお気に入りでした

 ということで、部屋食は1日でギブアップ。ホテルには1日28ユーロで朝食・夕食が付けられるミールプランがあるとのこと。メニューはある程度相談できるというので、油を控えていることやサラダを付けて欲しいことを要望として伝えました。オーナーからも、「チキンがヘルシーかな」といった提案をしてくださいました。プロ選手が食事内容について相談できる、この時の安心感と言ったら!

 それまでは、現地に知り合いもいないためほとんど外部との接触はありませんでした。しかし食事をお願いするようになってから、食事中にオーナーご夫妻と会話することも増え、自分達が思っていた以上に気持ちがラクになりました。ご夫妻も私たちを気にかけてくれていることが伝わり、ホスピタリティを感じました。

ベルギーでの朝食タイム。コーヒーを飲みながらオーナーと話す時間が楽しかったベルギーでの朝食タイム。コーヒーを飲みながらオーナーと話す時間が楽しかった
ベルギーで食べたカリカリのアーモンドをのせた香ばしい川魚ベルギーで食べたカリカリのアーモンドをのせた香ばしい川魚

ベルギーでの一日の食事モデル

 ホテルでの朝食は、グラノーラ、パン、チーズ、ハム、バナナがテーブルに並べられ、自分で好きな量を食べられる方式でした。

フィード試走の合間に、市販のクレープの皮にバナナや生ハムを包んでランチ代わりにフィード試走の合間に、市販のクレープの皮にバナナや生ハムを包んでランチ代わりに
ライスが入ったタルト。エッグタルトに近いライスが入ったタルト。エッグタルトに近い

 昼食はレース会場近くのレストランやカフェを観察してみましたが、メニューはフライドポテトにハンバーガー、グレービーソース…全部ベージュ色で彩りがありません。それは、食物繊維もほとんどないということです。レーをが控え、人も集まっているというのに閉まっているお店が多く、数軒見て回ってその日は結局食べずに帰りました。

 翌日からの昼食は、車中でも食べられるスナッキングスタイルに。食材は、部屋で作ったサラダやナッツ、りんごやパンなどです。そこで大ヒットだったのは、市販の10枚入りのクレープの皮。生ハムやバナナを包めば、甘さとしょっぱさが両方堪能出来る軽食に早変わり! 皮そのものもおいしくいただけました。

 パン屋さんではライス入りタルトも発見しました。カスタードのようなクリームの中に、お米のつぶつぶの食感が新鮮です。

 夕食はスープ、サラダ、にチキンが入ったトマト味のショートパスタ。とてもおいしく、要望通りヘルシーなメニューでした。

 ただ、3日間連続でほぼ同じメニューだったので、終盤は少々飽きてしまいました。そこで最後の夕食に、魚やライスのチョイスがあるかどうか聞いたところ、返答は「YES!」。もう少し早く相談すれば良かったかなと反省しつつ、貴重な魚とライスを堪能しました。

ヨーロッパでは「Bio」マーク

ドイツではオーブン、電子レンジ、食器やキッチングッズ完備のキッチン付き。水道水もおいしいドイツではオーブン、電子レンジ、食器やキッチングッズ完備のキッチン付き。水道水もおいしい

 このころには、ヨーロッパではアメリカのオーガニック表示に近いものが「Bio」という表示になっていることに気が付きました。ベルギーで利用した2軒のスーパーマーケットのうち1軒では、自社製品にBio製品が豊富で、それは野菜よりもお菓子やミルクなどの製品に多く見られました。日本でもスーパーなどの自社ブランド製品に「オーガニック」と書かれているものが増えてきましたが、ここではほとんどのジャンルの製品で、Bioかそうでないかをで選ぶことができるほどだったので驚きでした。

 ドイツでは、一軒家の最上階を間借りしました。ホテル検索サイトに載っていないコンドスタイルの宿だそうで、ドイツに滞在している日本人の知人が見つけてくれました。宿代もリーズナブルでセンスのいい1LDK、さらにキッチンの設備も完璧といえるほど整っていて、すごくありがたい。オーナーが同じ家にいるので生活周りに関して教えてもらえることも多く、安心でした。

ドイツでの調理例その1。牛肉、カプレーゼ、サラダ、ドイツパンドイツでの調理例その1。牛肉、カプレーゼ、サラダ、ドイツパン
ドイツでの調理例その2。チキンのミルク煮、サラダ、豆の味噌汁ドイツでの調理例その2。チキンのミルク煮、サラダ、豆の味噌汁
レース前夜は発芽玄米と新鮮なサーモン。リンゴと紫キャベツ、ケールにビーツを加えて蒸し焼きにレース前夜は発芽玄米と新鮮なサーモン。リンゴと紫キャベツ、ケールにビーツを加えて蒸し焼きに

 ドイツでもさっそく、宿から1km程の所にあるスーパーマーケットへ行きました。とても広くて清潔感があり、肉やチーズ、魚の量り売りコーナーがあったほか、オーガニック製品やお米は10種類近くそろうなどアジアの食材もたくさん売っていました。

 スーパーマーケット以外にも、道の駅のような直売所やファーマーズマーケットで旬のホワイトアスパラやイチゴ、そしてフェンネルや豆など日本では珍しい野菜を手に入れることができました。オーガニック専門のスーパーマーケットでは、日本語で書かれた製品が並ぶマクロビオティックコーナーもありましたよ。

新鮮な野菜が手に入るドイツのマーケットでカゴを持って買い物新鮮な野菜が手に入るドイツのマーケットでカゴを持って買い物
日本の道の駅のような直売所日本の道の駅のような直売所
ナマのフェンネルを調理するのは初めて。ハーブとして使われるだけあって香りがよいナマのフェンネルを調理するのは初めて。ハーブとして使われるだけあって香りがよい
お米で出来た麺。フェンネルを入れてフォー風にしてみましたお米で出来た麺。フェンネルを入れてフォー風にしてみました

 宿を紹介してくれた知人から聞いていた「ドイツの野菜は生き生きとしていておいしい」という言葉どおり、香りがよく、新鮮で、実もしっかりとしていました。

初ドイツビール、ここへ来たら飲まないと! 苦みがおいしい初ドイツビール、ここへ来たら飲まないと! 苦みがおいしい

 つかの間の休養日には、宿のお父さんに教えてもらった「ドイツ人から見たドイツ料理のおいしいお店」にも立ち寄る機会もありました。ここではとにかくドイツらしいものが食べたいと、豚のカツを選びました。ショートパスタと言われた付け添え(シュペッツレ)が炒り卵の様な味と食感で面白い。ドイツビールも堪能しました。おいしい!

 自炊に切り替えた際の祐樹さんの変化は、「胃への負担が減り、食事を自分達でコントロールできる安心感は大きい」ということでした。遠征中は体重計に乗ることができなかったものの、「身体が軽く感じられた」そうです。

新しい体験を喜びに

宿のご家族とのディナー。お父さんは終始ドイツビールをお供に宿のご家族とのディナー。お父さんは終始ドイツビールをお供に

 ドイツから帰国する前夜、宿のお母さんに夕食へ招いていただいたことは、渡欧中に嬉しかったことのひとつです。ご家族とポテトサラダ、豚のハムなど伝統的な料理を囲みながら、お互いの国のことを話したり、マウンテンバイクの質問を受けたり、自然環境の課題について話したり…気が付けば夜も更けていたほど、楽しくあっという間に時間が過ぎました。

 「地元の方と、マウンテンバイク以外の話で長い時間を過ごすことができたのは新鮮だった」と祐樹さん。何よりご家族に温かく迎えていただいたことが、泣けるほど嬉しい経験でした。

 今回、ベルギーではやむを得ずキッチンなしのホテルとなりましたが、そんな環境の中でもホテルの方が協力してくださいました。帰る場所がある安心感とともに、何気ない会話が気持ちの切り替えになる大切さを感じました。大げさかもしれませんが、ファミリーのような新しい出会いでした。

 新しい場所で新しい発見と体験をすることを、喜びに変換する術や価値を教えられた遠征でした。次の海外遠征は南アフリカ。ここでもまた、沢山のことを教えてもらう旅になりそうです。

春の遠征もこれで終わり。また戻ってこられることを祈って!春の遠征もこれで終わり。また戻ってこられることを祈って!
池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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