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ツアー・オブ・ジャパン2014「苦いスープ」を飲んでより強く ブリヂストン アンカー サイクリングチームのTOJ参戦に密着

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 5月18~25日に開催された日本最大のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」(TOJ)に参戦した「ブリヂストン アンカー サイクリングチーム」。Cyclistでは、チームの欧州遠征のレポート<上><中><下>に続いて、TOJの後半戦でもチームに帯同して密着取材をした。激しいレースの中で、一体何が起こっていたのか? 選手たちの生の声とともにお届けする。

「ツアー・オブ・ジャパン2014」に参戦したブリヂストン アンカー サイクリングチームのメンバー。左から清水都貴、内間康平、ダミヤン・モニエ、トマ・ルバ、伊丹健治、初山翔、水谷壮宏監督「ツアー・オブ・ジャパン2014」に参戦したブリヂストン アンカー サイクリングチームのメンバー。左から清水都貴、内間康平、ダミヤン・モニエ、トマ・ルバ、伊丹健治、初山翔、水谷壮宏監督

チャンスをものにできなかった富士山ステージ

 TOJの前半戦で、ブリヂストン アンカー勢は総合上位争いに絡む絶好の展開をみせていた。22日の第3ステージ(飯田ステージ)でトマ・ルバ(フランス)が2位、清水都貴が7位に入り、総合順位でもそれぞれトップと12秒差の2位、3分45秒差の8位につけた。ところが24日の第4ステージ(富士山ステージ)では、総合首位に立つことを期待されたがルバが振るわず、チャンスをものにすることができなかった。

 逆に富士山ステージで好調だったのはダミヤン・モニエ(フランス)で、40分17秒と自己記録を更新するタイムでステージ3位に入った。清水も自己ベストを更新する好タイムをマーク。ただ、この結果であっても、清水には残念なことが多かった。

会場ブースなどで配られるブリヂストン アンカー サイクリングチームのポストカード会場ブースなどで配られるブリヂストン アンカー サイクリングチームのポストカード
富士山ステージのスタートを振り返る清水都貴。「ミスのない状況下で戦いたかった」富士山ステージのスタートを振り返る清水都貴。「ミスのない状況下で戦いたかった」
総合争いに敗れた富士山のゴール後にインタビューを受けるトマ・ルバ総合争いに敗れた富士山のゴール後にインタビューを受けるトマ・ルバ

 まず、スタートでのハプニング。スタート位置につく前にピストルが鳴り、レースが始まってしまったのだ。「音が聞こえた瞬間、青ざめた。追いつくためにだいぶ足を使ってしまった」と話す清水。さらに、集団に追いついたものの、イランチームのタブリーズペトロケミカル勢が「ふざけているのかと思うくらいの、尋常じゃないアタックを仕掛けていて、絶望感に襲われた」のだという。

 タブリーズのポルセイェディゴラコールは、2位に1分19秒差をつける38分51秒のコースレコードで富士山ステージを上り切り、他のチームに圧倒的なパワーを見せつけた。そしてその存在感は、伊豆ステージでも変わらなかった。

“いつも通りの分量”で足りなかった補給食

 「完敗だね」――24日の第5ステージ(伊豆ステージ)終了後に水谷壮宏監督がチームカーの車内で繰り返したつぶやきが、チームの悔しさをすべて物語っていた。

伊豆ステージ前夜のチームミーティング伊豆ステージ前夜のチームミーティング
総合首位にかかわるゼッケンナンバーを記したテープをステムに貼っていく監督総合首位にかかわるゼッケンナンバーを記したテープをステムに貼っていく監督

 この日、ラストチャンスとばかりに、全員で“決戦”と覚悟を決めて挑んだレース。幸い、1周目から逃げグループへ清水を送り込むことに成功した。

 清水は、146.4kmで争われたレースの中盤まで、ほかのチームの4人と共に逃げ続けた。この逃げグループの5人はいずれも力があり、人数の面でも不足はない。水谷監督が「おいしい展開」と言うほどのチャンスだった。

伊豆ステージで逃げに乗った清水都貴(中央)伊豆ステージで逃げに乗った清水都貴(中央)
伊豆ステージで集団を牽くブリヂストン アンカー サイクリングチーム伊豆ステージで集団を牽くブリヂストン アンカー サイクリングチーム
第5・伊豆ステージのゴール後、テントに戻ったメンバーの顔は暗い第5・伊豆ステージのゴール後、テントに戻ったメンバーの顔は暗い

 誤算は、疲れることを知らないタブリーズペトロケミカル勢だった。清水はレース後、「コンディションがなにも悪くない中で敗れた。総合首位を守るために全力で挑んだヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザでさえ、あれだけ崩壊したことからもわかるように、セオリーどおりにはいかないレースだった。レベルの差を見せつけられた…」と振り返り、悔しさをにじませた。

 ルバはゴール後、周囲からは見られないよう、チームカーの陰に座り込んでガックリと肩を落とした。その落ち込みようは、声をかけることがはばかられるほどだった。しばらくして、「補給をうまく摂れなくて、力が入らなくなってしまった」と、ハンガーノックだったことを明かしたが、補給を担当していた安見正行マッサージャーによれば「いつもどおりの分量」を摂取していたのだという。それではエネルギーが足りなくなるほど激しい展開だったということか。水谷監督は「優勝候補と言われながら、何ひとつ成し遂げられなかった」と残念そうに語った。

補給ドリンクを受け取るトマ・ルバ補給ドリンクを受け取るトマ・ルバ
トマ・ルバは伊豆ステージ後、ハンガーノックだったことを明かしたトマ・ルバは伊豆ステージ後、ハンガーノックだったことを明かした

 結局、後れを取ったグルペット(完走目的の集団)の選手らは、タブリーズ勢に周回遅れにされて軒並みタイムアウトに。逃げで魅せた清水と、最終日の第6ステージでスプリンターとしての活躍が期待された内間康平がレースを去ることになった。

逃げ続けたモニエの表情に悔いはなし

 25日の第6ステージ(東京ステージ)では、残り9周で飛び出して逃げグループに合流したモニエが快走。沿道から見守った清水が、その勇ましい姿を「まるで馬みたい」と興奮気味に語ったほどのアツい走りだった。最後にはメーン集団に吸収されたものの、ゴール後、モニエの晴れやかな表情に悔いはなかった。

東京ステージで逃げ続けたダミヤン・モニエ東京ステージで逃げ続けたダミヤン・モニエ
東京ステージの出発前、ブースには多くのファンが訪れた東京ステージの出発前、ブースには多くのファンが訪れた
ゴール後にトマ・ルバ(左)、ダミヤン・モニエをねぎらう内間康平(右)ゴール後にトマ・ルバ(左)、ダミヤン・モニエをねぎらう内間康平(右)

 ブリヂストン アンカー サイクリングチームにとって、TOJは目標とする結果を得られないレースとなったが、チームに密着した記者の目には、終始積極的に仕掛け、かっこいい走りを展開しているように映った。総合上位争いに加わり、逃げに乗り、あるいはチーム揃って集団を牽く――彼らが実践しているのは、清水が「セオリーどおり」と話した、勝負どころで攻め続けるロードレース。それは、観客の目に美しく映り、記憶に刻まれる走りだ。

東京ステージの出発前、ブースには多くのファンが訪れた東京ステージの出発前、ブースには多くのファンが訪れた

 今年4月にフランスのチーム拠点で取材した水谷監督へのインタビューで、監督が語った「普段、苦いスープを飲んでいれば、ほかが甘く感じる」というフランスのことわざを思い出した。

 願わくは、彼らがスープを甘く感じる日が訪れてほしい。ブリヂストン アンカー サイクリングチームは、5月29日から6月1日の日程で和歌山県で開催される「ツール・ド・熊野」に参戦している。

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