title banner

田中苑子のTOJフォトレポート<後編>NIPPOに「感謝」と語るボーレ、実は気さくなイランチーム TOJを席巻した外国人選手たちの素顔

  • 一覧

 5月18日に開幕した日本最大のステージレース、ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)は、25日開催された東京ステージで閉幕。イランからやってきたアジア最強チーム、タブリーズペトロケミカルが群を抜いた強さを発揮し、ミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン)が個人総合優勝を飾った。また、イタリアに拠点を置く日本籍のチーム、ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザも、第3ステージで優勝したほか、第4、5ステージで総合リーダージャージを着るなど活躍した。フォトグラファー田中苑子さんによるレポート<後編>は、この2つのチームの選手に迫ります。

ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザは南信州ステージを終えた時点で総合とポイントの2枚のリーダージャージを獲得していたヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザは南信州ステージを終えた時点で総合とポイントの2枚のリーダージャージを獲得していた
タブリーズペトロケミカルチーム、富士山ステージを前にタブリーズペトロケミカルチーム、富士山ステージを前に

◇      ◇

 今年のTOJは、終盤に激しい総合優勝争いが繰り広げられ、23日の富士山ステージ(第4ステージ)でグレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザ)が総合リーダーとなりましたが、24日の伊豆ステージ(第5ステージ)ではタブリーズのポルセイェディゴラコールが逆転する形となりました。

オールラウンダーが見せた強烈な登坂力

富士山ステージを6位でこなし総合トップに立ったボーレ富士山ステージを6位でこなし総合トップに立ったボーレ

 この2つのステージを取材して驚かされたことは、まずグレガ・ボーレが富士山で見せた強烈な登坂力。昨年はヴァカンソレイユ、それ以前はランプレと過去4年間にわたってUCIプロチームに所属し、去年の今頃はジロ・デ・イタリアを走っていたと言うとおり、世界の第一線で活躍してきた選手ですが、彼はまったくもって山岳スペシャリストではありません。脚質はスプリントを得意とするオールラウンダー。それでも富士山の難コースを「期待していた以上の好成績」と振り返るように41分台で走りきって、ステージ6位でゴール。この日に総合リーダージャージを獲得したのです。UCIプロツアーで活躍する選手の実力の高さを目の前で見ることができました。

伊豆ステージのスタート前、取材を受けるグレガ・ボーレ伊豆ステージのスタート前、取材を受けるグレガ・ボーレ
伊豆ステージにはNIPPOコーポレーションから大勢の応援団が駆けつけた伊豆ステージにはNIPPOコーポレーションから大勢の応援団が駆けつけた

 しかし、その実力をもってしても、昨年末は所属していたヴァカンソレイユのチームの解散に伴い、所属先を失ってしまいました。長いオフ期間を経て、ようやく所属先が見つかったのは4月上旬のこと。ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザは将来的にプロコンチネンタルチームへの昇格を考えているとはいえ、あくまでも日本籍のコンチネンタルチーム。それでもチャンスを求めて「またレースの世界に戻れる機会を与えてくれたチームに感謝している」と契約し、アジアツアーのレースでも貪欲に勝ちを狙う姿から、厳しいトッププロの世界や、彼のそこにかける熱い想いが読み取れます。

伊豆ステージのスタートラインに並んだボーレ。戦いを前に笑顔を見せた伊豆ステージのスタートラインに並んだボーレ。戦いを前に笑顔を見せた

 伊豆ステージでは、そんなボーレのリーダージャージを守るために、ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザが必死の走りを見せました。結果的にアシスト選手をすべて失うまで攻めたものの、イラン勢の圧倒的な攻撃にはかなわず、前日の富士山ステージを制したポルセイェディゴラコールが、ベテランのチームメート、ガーデル・ミズバニとともに逃げ切りを決め、個人総合での逆転に成功します。

伊豆ステージのレース中盤にアシストを全員失い、単騎で奮闘するグレガ・ボーレ伊豆ステージのレース中盤にアシストを全員失い、単騎で奮闘するグレガ・ボーレ
ゴール後、チームメートの宮澤崇史と握手するボーレ。宮澤のいた集団は先頭にラップされタイムアウトにゴール後、チームメートの宮澤崇史と握手するボーレ。宮澤のいた集団は先頭にラップされタイムアウトに

3000m級の山へ イランチームの強さの秘訣

伊豆ステージを3位でゴールするポルセイェディゴラコール。総合優勝を確信し、ガッツポーズを見せた伊豆ステージを3位でゴールするポルセイェディゴラコール。総合優勝を確信し、ガッツポーズを見せた

 世界トップクラスと思われる登坂力をもつイラン人選手たち。一体どんな練習をしているのか質問すると、チームメートのなかで「山の練習は週に1日か2日だ」「違うよ、毎日だ!」と、何やら意見が割れました。どういうことなのかとよく聞いていくと、1000〜1500メートル級の山は毎日、3000メートル級の山は週に1日か2日なのだとか。イランは市街地での標高も高く、選手たちは常に高地トレーニングをしているような状態で、それが山岳での強さの秘訣だと話します。

富士山ステージ前、静かに集中するポルセイェディゴラコール富士山ステージ前、静かに集中するポルセイェディゴラコール
伊豆ステージのスタート前、リラックスした表情のポルセイェディゴラコール伊豆ステージのスタート前、リラックスした表情のポルセイェディゴラコール

 彼らの強さはUCIプロチームでも戦えるレベルで、数年前に2人のイラン人選手が、アジアツアーで稼いだポイント欲しさに声をかけてきたUCIプロチームに移籍したことがありました。1人は、今回も来日しているメヘディ・ソフラビで、ベルギーのロットチームに所属しましたが、彼の非常に明るくフレンドリーな性格をもってしても、ベルギーの環境に馴染むことはできず、「練習する場所もないし、もう嫌だ!」と1年でイランのチームに戻ってきてしまいました。彼らは、圧倒的な強さを誇りながらも、世界チャンピオンになることや、ツール・ド・フランスで優勝することを目指しているわけではなく、イランに住んでアジアのサーキットを回り、賞金を獲得していくことが性に合っているのだとか。

伊豆ベロドロームをバックに疾走するミズバニ(手前)とポルセイェディゴラコール伊豆ベロドロームをバックに疾走するミズバニ(手前)とポルセイェディゴラコール
圧倒的な強さを見せてリーダージャージを獲得したポルセイェディゴラコール圧倒的な強さを見せてリーダージャージを獲得したポルセイェディゴラコール

 今回、久しぶりに日本のレースにやってきたイラン人選手たち。半分の選手は初来日でしたが、日本食も気に入って、すっかり日本が好きになったとか。なかなか踏み込みにくい雰囲気があるものの、話してみると皆、とても気さくでフレンドリーな選手たちです。しかし、イラン勢の驚異的なペースアップにより、伊豆ステージは85人出走したうち44人が周回遅れでDNF(失格)となってしまいました。このステージを終えて、多くの外国人選手や監督がその強さを「ありえない!」と憤慨していたことも事実。彼らの神がかり的な強さが本物であることを願うばかりです。(レポート 田中苑子)

田中苑子
田中苑子(たなか・そのこ)

1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。


関連記事

この記事のタグ

TOJ2014・サイドレポート ツアー・オブ・ジャパン2014 田中苑子

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載