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TOJを沸かせた“メン・イン・ブラック”平均年齢20.5歳、イギリスの次代を担う選手が活躍 「ラファ・コンドールJLT」に迫る

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 長野県飯田市で21日開催されたツアー・オブ・ジャパン2014 南信州ステージ。雨に祟られたこの起伏に富む難コースで、リザルトには残らないが強烈な印象を残したチームがある。ラファ・コンドールJLT。黒づくめの男たちは4人で一斉にアタックを仕掛け、集団を崩壊させると、さらにエースを単独先頭に送り込んだ。コンチネンタルチームながら、格上のチームを相手に強さと印象深い走りを見せたその根源には、イギリスのサーキットに意識変革をもたらした名将の存在が浮かび上がる。組織的かつ積極的なレーススタイルを見せる通称「メン・イン・ブラック」ラファ・コンドールJLTとは、どんなチームなのか。 (文・写真 Rapha Japan)

南信州ステージ、先頭グループを積極的に牽引するラファ・コンドールJLTの面々南信州ステージ、先頭グループを積極的に牽引するラファ・コンドールJLTの面々

独走で逃げ続けたカーシーは19歳

 南信州ステージの朝。10年前のこのツアー・オブ・ジャパンでリーダージャージを着たことがある別府匠・愛三工業レーシング監督はこう語った。「飯田(南信州)ははっきりと足の差が出るステージ。シンプルに強い選手が前に残る、ごまかしの利かない一日になる」。この日は前夜からの雨が断続的に降り続き、選手たちはレインジャケットを着込んでスタートラインへ向かった。レースも必然的に、タフなものになると予想された。

南信州ステージ、6周目にラファ・コンドールJLTが4人掛かりでの奇襲アタックを仕掛ける南信州ステージ、6周目にラファ・コンドールJLTが4人掛かりでの奇襲アタックを仕掛ける

 序盤に形成された6人の逃げを容認し、ランプレ・メリダとドラパックがコントールするメーン集団は、しばらく静観するかに見えた。しかし中盤、レースを80km以上残した山頂付近で、突如として黒いジャージの4人が揃ってアタック。ロードレースの定石では無謀にも思える早めの動きはしかし、結果として集団を30人に絞り込み、この日の大勢を決することになった。

 すでに逃げに送り込んでいた1人と合流し、チームの6人中5人が先頭集団に加わったラファ・コンドールJLTは雨の中、集団をハイペースで牽引。インターネット配信もされた会場のライブ放映スクリーンはしばらくの間、黒い男たちが独占した。ここからさらに単独でヒュー・カーシーがアタックし、5周を独走で駆けたのがこの日のハイライト。カーシーが追走のデネグリ(ヴィーニファンティーニ・NIPPO)とルバ(ブリヂストンアンカー)に吸収されて力尽きるまで、ラファ・コンドールはこの日の主役だったと言える。

 驚くべきは、レース終盤に逃げを見せたカーシーは19歳であり、組織的な動きを見せたチームの平均年齢も20.5歳と若いことだ。格上のチームをも脅かす走りを見せたこのイギリスのコンチネンタルチームは、2010年大会でも終始集団をコントロールしてステージ1勝を挙げている。

南信州ステージの序盤の逃げに入ったエド・ラベラック。チームロゴをアピールする余裕も南信州ステージの序盤の逃げに入ったエド・ラベラック。チームロゴをアピールする余裕も
南信州ステージ、終盤で単独先頭を独走したヒュー・カーシー南信州ステージ、終盤で単独先頭を独走したヒュー・カーシー
ヒューの逃げは実らなかった。落胆を隠しきれないゴール後ヒューの逃げは実らなかった。落胆を隠しきれないゴール後

アタックを繰り返し、レースを出来る限りハードにする

チーム監督のトム・サウザム。ラファの着用モデルも務める多才ぶりチーム監督のトム・サウザム。ラファの着用モデルも務める多才ぶり

 監督として今回のレースを指揮を執るトム・サウザムは元プロ・ロードレーサー。ラファ・コンドールで3年間を選手として走った経験をもつ。キャリアの終盤にライティングを学び、現在はチームの広報として活躍している。今回はイギリスでも同時期にレースがあったため、総監督のジョン・ヘレティ(※)に代わって来日した。2010年大会では選手としてTOJに参加することになっていたが、直前のケガが原因で不参加に終わっている。初めての来日を喜ぶ彼に、チームのことを聞いた。

※イギリスナショナルチームの監督を務めたことのある名将で、ユーロスポーツのコメンタリーとしても著名。自転車競技への情熱と、選手を見抜くその伯楽ぶりは広く知られている。

――ラファ・コンドールのチーム哲学を教えてください

 「チームの哲学は毎年変わるんだ。2006年のチーム設立以来、毎年ね。2006年はチームのオーナーであるラファがイギリスで小規模のビジネスをしていた頃で、当時は広告塔としての側面が強かった。今のチームの基礎ができたのは2008年。チームにジョン・ヘレティ監督を招き入れ、国際的なレースへ出場する体制を整えた。折しも、ラファが国際的なビジネスを展開し始めた頃で、観る者に強い印象をもたらすチームにする、という理念で両者が合致したんだ。数年の成功体験を得て、2011年から若手ライダー中心のチームへと舵を切った。イギリスの有望な若手に、プロ意識と将来へのステップとしての経験を積ませることが重要になっている」

チームはレースの4日前に来日し、ラファジャパンのある長野県野辺山に滞在して調整を行なったチームはレースの4日前に来日し、ラファジャパンのある長野県野辺山に滞在して調整を行なった
堺ステージの前日は、カスタマーライドで堺市内を日本のファンと一緒に走った堺ステージの前日は、カスタマーライドで堺市内を日本のファンと一緒に走った
堺ステージの前夜、ファンとの交流パーティでリラックスする選手たち堺ステージの前夜、ファンとの交流パーティでリラックスする選手たち
ポールスミスがかつてデザインしたラファ・コンドール柄のスカートのファンと一緒にポールスミスがかつてデザインしたラファ・コンドール柄のスカートのファンと一緒に

――南信州ステージでの4人掛かりでのアタックと、その後の集団コントロールは印象的でした。これは予期していた戦略だったのでしょうか

 「雨が降りタフなレースになることは分かっていた。レースを早い段階で動かし、勝利を狙うつもりでいた。ヒューのアタックは少し早過ぎたが、チームの走りには満足している。我々は今回、スプリンターを連れてきていないので、堺と美濃ステージでは温存に務めた。この南信州、富士山、伊豆が我々のフォーカスするステージとなる」

――ラファ・コンドールJLTが目指すレーススタイルとは?

堺ステージの開幕前、店内をラファ・コンドールで装飾されたジェラートショップ、La Dolce Vitaで一休みする選手たち堺ステージの開幕前、店内をラファ・コンドールで装飾されたジェラートショップ、La Dolce Vitaで一休みする選手たち

 「全体的には、チームにいいスプリンターもいるしベテランライダーもいる。若手が多いものの、どんなレースでも勝利を狙える布陣のいいチームだ。戦術はその時の選手によって変わる。それでも変わらないのは、アタックを繰り返してレースを出来る限りハードなものにすること。昨日はそれが見せられたと思う」

――ラファ・コンドール以前と以後で、イギリスのコンチネンタルサーキットに起きた変化があれば教えてください。

 「ラファ・コンドールの前は、戦術というものがコンチネンタルのサーキットには欠けていた。チームの人数もまちまちで、レース自体はアグレッシブなものだったけれど、裏を返せば、選手たちはアグレッシブなレースをすることしか出来ず、コントロールという概念が存在しなかったことを表している。しかし2008年にジョン・ヘレティがチームに加わり、イギリスのレースシーンそのものを発展させた。チームはレースで何をすべきかを戦術的に理解し、より理知的になった。最初の10マイルでの逃げには選手を送り込むようにし、レースを組み立てる。これまでにアタックを繰り返したレースの数は何百にもなるだろう」

南信州ステージのスタート前、雨の天候と、決められたチーム戦略に緊張感が漂う南信州ステージのスタート前、雨の天候と、決められたチーム戦略に緊張感が漂う

 「2006年からのイギリスのロードレースシーンの進歩には目を見張るものがある。急激に発展したという印象があり、そこにジョン・ヘレティとラファ・コンドールが果たした役割は決して少なくない。そして今日では若手選手の登竜門的な立場で、さらにこの国のレースシーンに貢献していると思う」

――今回のチームメンバーを紹介してください

 「OK、きのう最初の逃げグループに入ったエド・ラヴェラックは、ジュニアカテゴリーから上がってきた若い選手の一人。才能に恵まれていて、レースのセンスを持ち合わせている。2年後が楽しみなライダーだ。長身のルーク・メラーはタフなレーサーで、早くもプロ意識を持ったしっかり者。きのう最後に独走を見せたヒュー・カーシーはクライミングとタイムトライアルに才能があり、ステージレーサーとして有望株だ。リッチ(リチャード)・ハンドリーはこのチームの最年長で25歳。あらゆるコンディションに対応するバランスのとれたレーサーで、経験もある。チームのステージレース布陣では欠かせない存在だ。今シーズン、チームは多くの負傷者を抱えており、急遽チームの増員として3週間前に契約をしたばかりのダニエル・ホワイトハウスは、才能に恵まれたクライマー。チームで走るレースはこれがほぼ初めてとなるので、残るステージでさらに経験を積むことを期待している。トム・モーゼズはチームで最強のライダーのひとりで、今季はツール・ド・ノルマンディとサークルクラシックで優勝している。将来ビッグチームで彼の名前を見ることになるかもしれない」

堺ステージ、スタート前にファンと交流するエド・ラベラックとルーク・メラー堺ステージ、スタート前にファンと交流するエド・ラベラックとルーク・メラー
美濃ステージで10位に入ったトム・モーゼズ美濃ステージで10位に入ったトム・モーゼズ
チームをまとめる最年長、リチャード・ハンドリーチームをまとめる最年長、リチャード・ハンドリー
新加入のダニエル・ホワイトハウス新加入のダニエル・ホワイトハウス
ファンが持ってきたかぶり物におどけてみせる選手たち。恥ずかしさをこらえきれないのはヒュー・カーシーファンが持ってきたかぶり物におどけてみせる選手たち。恥ずかしさをこらえきれないのはヒュー・カーシー

――残るステージでの戦略は?

 「富士山ステージでは、ヒューとダニエルの2人のクライマーに期待している。厳しいステージだが、いい走りができればいい。競輪学校のステージ(伊豆)は、2010年にクリスチャン・ハウスがステージ優勝したコースだね。ここはトムで狙う。起伏の激しいコースで、アタックに次ぐアタックが繰り返されるような展開を非常に得意としているからだ。チームとしての走りにも期待していてほしい」

――(ラファがスポンサーを終了する)チームの来年の展望は?

 「チームが変わるのは間違いないね。スポンサーとしてのラファとコンドールは心強いパートナーシップで結ばれていて、JLTもこの2年、熱心なサポートをしてくれた。来年は、チームにとってエキサイティングな機会だとも言うことが出来る。違ったやり方でチームを構成していくという、ね。より強いイギリスのチームとして、若い選手が向上していくためのチームとして、新しいスポンサーと共に次のステージへと進むことになるだろうね」

現地観戦の際にはスタート地点のチームテントへ

 レースでの統率のとれた走りと、あどけない表情とのギャップ。弱冠20歳そこそこの『メン・イン・ブラック』は、残る日程で再び鮮烈な走りを見せてくれるだろうか。選手は自身のポストカードを携えているので、ぜひ現地観戦の際にはスタート地点のチームテントに近づいてほしい。ジョン・ヘレティ監督の教える、プロであることの振る舞いを見せてくれるはずだ。

会場ではRaphaオリジナルの選手ポストカードを配布中会場ではRaphaオリジナルの選手ポストカードを配布中
堺ステージ、スタート前にポストカードを配るルーク・メラー堺ステージ、スタート前にポストカードを配るルーク・メラー

 またツアー・オブ・ジャパン2014の開催期間中、Rapha JapanのFacebookページ(https://www.facebook.com/RaphaJapan)では、チームにフォーカスしたレースレポートとフォトギャラリーを更新している。選手の情報も豊富なので、こちらも合わせてチェックしてほしい。

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