ツアー・オブ・ジャパン2014 第2ステージウィッパートの鮮やかなスプリントでドラパックが2連勝 リーダージャージはクラークが堅守

ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)は20日、岐阜県美濃市で第2ステージ(美濃ステージ)が行われ、集団スプリントの末、ワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック プロフェッショナルサイクリング)が僅差で勝利した。好調のドラパックはステージ2連勝。個人総合リーダーの証であるグリーンジャージは、第1ステージを制した同チームのウィリアム・クラーク(オーストラリア)が守った。 (レポート 福光俊介)
各チームの戦略はスプリント勝負
移動日を挟んで行われた第2ステージは、今大会で最初の本格的なロードレースとなることから、各チームはそれぞれの目標や思惑を持ってレースに臨んだ。
スタート前に多くのファンに囲まれご機嫌だったフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ランプレ・メリダ)は、高まる期待をよそに「ボクも勝ちたいと思っているけど、さぁどうだろう…」と不敵な笑みを浮かべた。
個人総合首位のクラークを擁するドラパックのキース・フロリー監督は、「まず今日はスプリント。ただ、集団コントロールは今のところ考えていないし、ウィル(クラーク)のリーダージャージについても執着しない」。クラーク本人は、「集団でゴールできれば自然とリーダージャージが手に入るだろう。スプリントではワウテル(ウィッパート)に注目していてほしい」とコメントした。



ヴィーニファンティーニ・NIPPO・デローザのグレガ・ボーレ(スロベニア)は「タカシ(宮澤崇史)で勝負するから見ていて!」と宣言。その宮澤も「今日は僕が狙わなければいけないステージ。展開の中で臨機応変に対応したい」と意欲をみせた。一方、チームUKYOの片山右京監督は、「今日は落ち着いて走り、明日以降、ホセ(ホセヴィセンテ・トリビオ)や土井(雪広)でチャンスを作りたい」と、早くも次のステージを見据える声も。
レースは、美濃市のシンボルでもある「うだつの上がる町並み」を出発し、4.0kmのパレード走行の後、周回コースの途中からアクチュアルスタート(正式スタート)を切った。11.6kmを走ったのち、21.3kmを7周する合計160.7km。周回の途中に1カ所、長い上りがあり、2・4・6周目に山岳ポイントが設けられるが、上位を争うライダーにとっては問題なくこなせるレベルの坂だ。昨年は5選手の逃げ切りが決まったが、例年、ゴールスプリントの勝負となることが多い。
2人が協調してエスケープ、ポイントを分け合う
レースは序盤に抜け出した阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、アイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックス パワータグ)が終盤まで先頭をキープ。協調体制を築いた2人は、それぞれ確保したいポイントについても申し合わせができていたようだ。1・3・5周に設けられるホットスポット(中間スプリント)は阿部が、フェルナンデスは山岳ポイントをトップで通過する。


メーン集団は、2分から3分半のタイム差で終始コントロール。レース前のフロリー監督の言葉とは裏腹に、ドラパックが集団を牽引した。それもそのはず、逃げる阿部は総合リーダーのクラークから8秒差。このまま逃がしてしまえば、リーダージャージを失う可能性が高い。また、ランプレ・メリダも集団の牽引に加わり、この日、繰り上げでポイント賞ジャージを着たポッツァートが先頭に立つ場面も見られた。
残り3周を切ると、メーン集団がペースアップ。ドラパックとランプレ・メリダによるコントロールは変わらない。先頭の2人との差はみるみるうちに縮まり、残り2周の時点では、いつでも吸収ができる態勢になっていった。
逃げ続けた2人もさすがに消耗したのか、最後の山岳ポイントを前にフェルナンデスが先頭へ出ると、阿部はメーン集団へと後退。フェルナンデスは下りもトップで駆け抜けたが、平地に入ってメーン集団に飲み込まれた。
僅差のスプリントをウィッパートが制圧
ラスト1周はゴールスプリントに向けて各チームの位置取り争いが活性化。その中でも強さを見せたのは、やはりランプレ・メリダだった。ハイペースのまま最後の上りに差し掛かると、集団から脱落する選手が続出。最後は65選手がゴール前の争いになだれ込んだ。
先頭でスプリントに挑んだランプレ・メリダは、18日の堺国際クリテリウムを制したニッコロ・ボニファジオ(イタリア)で勝利を狙い、満を持して発射。しかしその脇からウィッパートやブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、アヴァンティ レーシングチーム)も伸びる。3選手が横一線に並んでゴールラインを通過したように見えたが、ウィッパートが勝利を確信しガッツポーズ。ドラパックがステージ2連勝を決めた瞬間だ。

ウィッパートはゴール後の表彰式で、美濃ステージでおなじみの法被や提灯をプレゼントされて満面の笑みを浮かべた。レースを振り返り、「最後がものすごくきつかったが、チームメイトが前を走ってくれて、残り1kmのところで自分をリリースしてくれたおかげで良い走りができた。本当にチームメイトに感謝している」と述べた。この勝利でポイント賞ジャージを獲得したほか、新人賞(25歳以下)争いでも首位に。第3ステージはブルーのポイント賞ジャージを着用する。

リーダージャージを着て、レースをコントロールする役割もこなしたクラーク。スタート前のコメント通り、ウィッパートを勝利へと導いた。ゴール前の状況については、「ランプレ・メリダのトレインの後ろに位置し、スプリントに備えた。最後は上手くワウテルを前に送り出すことができ、彼も上手くランプレトレインを利用した」と説明している。

日本勢では西谷泰治(愛三工業レーシング)の5位が最高。最後の上りでチームメートがバラバラになってしまったといい、UCIポイント(4点)は獲得したものの、記者会見では悔しさをにじませた。西谷は、「昨年とは出場選手のレベルがひと味違う。ワンランク上の選手が来ていると感じている」と述べ、レースが洗練されているとの感想も語った。
◇ ◇
第3ステージ(南信州ステージ)は21日、長野県飯田市で、148.0kmのコースで開催される。7.3kmのパレード走行後、12.2kmの周回コースを12周し、ラスト1.6kmは周回を外れて飯田市松尾総合運動場前にゴールする。周回コースは最初の3kmが上り坂で、10%を超える勾配が待ち受ける。頂上通過後は、南信州名物のヘアピンカーブ“TOJコーナー”が登場。アップダウンによるペースの上げ下げはもちろん、バイクコントロールも要求される厳しいステージだ。
レースの模様は、地元の飯田ケーブルテレビがインターネットライブ中継を行う。中継時刻は午前8時30分頃~午後1時30分頃の予定。視聴は、飯田ケーブルテレビWebサイト(http://www.iidacable.tv)または飯田ケーブルテレビ USTREAM サイト(http://ustre.am/Bg21)。また同局では応援メッセージなどのコメントを募集している。「twitter」からのコメントは、ハッシュタグ #iidacatv を付けて投稿する。
第2ステージ結果
1 ワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック プロフェッショナルサイクリング) 3時間47分36秒
2 ニッコロ・ボニファジオ(イタリア、ランプレ・メリダ) +0秒
3 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、アヴァンティ レーシングチーム) +0秒
4 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニ・NIPPO) +0秒
5 西谷泰治(愛三工業レーシング) +0秒
6 宮澤崇史(ヴィーニファンティーニ・NIPPO) +0秒
7 セバスチャン・モラ(スペイン、マトリックス パワータグ) +0秒
8 畑中勇介(シマノレーシング) +0秒
9 黒枝咲哉(日本ナショナルチーム) +0秒
10 トム・モーゼス(イギリス、ラファコンドール・JLT) +0秒
個人総合順位
1 ウィリアム・クラーク(オーストラリア、ドラパック プロフェッショナルサイクリング) 3時間47分36秒
2 ワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック プロフェッショナルサイクリング) +1秒
3 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、アヴァンティ レーシングチーム) +1秒
4 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、ランプレ・メリダ) +3秒
5 ジャック・ベッキンセール(オーストラリア、アヴァンティ レーシングチーム) +5秒
6 ニッコロ・ボニファジオ(イタリア、ランプレ・メリダ) +6秒
7 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ) +7秒
8 西谷泰治(愛三工業レーシング) +7秒
9 アンドレア・パリーニ(イタリア、ランプレ・メリダ) +7秒
10 テイラー・ガンマン(オーストラリア、アヴァンティ レーシングチーム) +8秒
ポイント賞
1 ワウテル・ウィッパート(オランダ、ドラパック プロフェッショナルサイクリング) 25pts
2 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、アヴァンティ レーシングチーム) 22pts
3 ニッコロ・ボニファジオ(イタリア、ランプレ・メリダ) 20pts
山岳賞
1 アイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックス パワータグ) 15pts
2 阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン) 8pts
3 トマス・ラボウ(オランダ、OCBCシンガポール コンチネンタルサイクリングチーム) 7pts
チーム総合順位
1 ドラパック プロフェッショナルサイクリング 11時間32分41秒
2 アヴァンティ レーシングチーム +7秒
3 ランプレ・メリダ +8秒