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栗村修の“輪”生相談<23>30代男性「修善寺のレースでアップダウンがきつく、1周目で集団から落ちてしまいました」

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 私はホビーレーサーで35歳の男です。平日は2日に1度のローラー台(最高心拍の80%を4分、最高心拍の85%を8分)を繰り返し3セット)と、週末は仲間で走っています。

 最近、クリテリウムのレースで表彰台まではいきませんが入賞した経験から少し自信がつきました。そして先日、修善寺のサイクルスポーツセンターで開催されたレースに出場したのですが、アップダウンがきつく、1周目で集団から落ちてしまいました。

 平坦のクリテリウムとアップダウンのあるロードレースは別物、と理解はしていたつもりでしたが、あまりにも別物すぎて今後どのようなトレーニングをすれば良いかわからなくなってしましました。

 自宅の近くには長さ600mで平均斜度10%の坂があるので、ローラー台よりもそういった坂を使った実走のトレーニングをした方が良いのでしょうか?

 是非、アドバイスをお願いします!

(30代男性)

 上りで重要になるのが、立ちこぎ、つまりダンシングの能力です。個人差はありますが、ダンシングの頻度は平地よりもずっと増えますよね。

 僕も本(『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』(洋泉社))などで常に強調しているのですが、座ったままペダリングするシッティングとダンシングは、ほとんど「別の行為」です。共通点はロードバイクが前に進むことくらいでしょうか。使う筋肉、ペダリング、上半身の使いかた…何から何まで違います。水泳に例えると、クロールと平泳ぎくらいの違いはあるでしょう。

 さて、ここでいったんトレーニングの基本概念に立ち返りたいと思います。これもまた本で強調してきたことなのですが、トレーニングは、予想されるシチュエーションに「順応」する作業です。高強度短時間のレースならば高強度短時間の、低強度長時間のレースならば低強度長時間のトレーニングが有効でしょう。

2013年のツアー・オブ・ジャパンの修善寺ステージ、ダンシングで上りをこなすジュリアン・アレドンド。今年はジロ・デ・イタリアに出場して活躍中だ2013年のツアー・オブ・ジャパンの修善寺ステージ、ダンシングで上りをこなすジュリアン・アレドンド。今年はジロ・デ・イタリアに出場して活躍中だ

 これはフォームに関しても同様です。特殊なフォームを要求されるタイムトライアルのレースを目標にするならば、タイムトライアルのフォームでトレーニングをする必要があります。同様に、ダンシングの能力を求められる修善寺でのレースを目標にするならば、トレーニングにダンシングを取り入れなければなりません。

 質問者さんは、平日はローラー台で練習されているということですが、僕はここに重要なヒントがあると思います。ローラー台の特徴は、ダンシングが難しい点です。心肺機能は鍛えられますが、ダンシングのフォームを洗練することは困難でしょう。

 先に答えを言ってしまうと、ローラー台でのトレーニングと修善寺のレースとの近似の度合いは低い。これが、修善寺で集団から遅れた理由だと思います。

 上りがあるレース、特に修善寺のように短くて急な坂が連続するコースは、ローラー台上でのトレーニングとはかけ離れています。修善寺に備えてローラー台ばかりでトレーニングをするという行為は、極端な表現をすればですが、サイクルロードレースのために毎日ランニングで走り込むようなものだと思います。確かに心肺機能は鍛えられるでしょう。けれど、本番とは体の使い方がまったく別物なんですよ。順応ができていなかった以上、結果が出なかったのも無理はありません。

 しかし、落ち込む必要はありません。ご自宅のそばに坂があるではないですか! 10%・600mという上りは、修善寺を狙う上では理想的です。何も考えなくても、ここを繰り返し走るだけでかなり修善寺に順応できるはずです。ここを、ローラー台ではできない、ダンシングを意識して走ってみてください。それほど長い時間はかからないと思うので、5本くらい反復してもいいかもしれませんね。

妄想力を最大限に発揮してトレーニングしよう妄想力を最大限に発揮してトレーニングしよう

 上りの基本ですが、頂上に向けて徐々に速度を上げるようにしてみてください。疲れてくるとフォームも乱れてしまいます。乱れた、効率の悪いフォームが身についてしまうのは危険です。反復する場合も、最初の1、2本で出し切って最後がヘロヘロになってしまうのはよろしくありません。後半になるほど、終わりが近づくほど速く、美しいフォームになるように走ってください。

 あえて心拍数やパワーの話はしません。それよりも重要なのは「妄想力」です。妄想力はフォームを美しくしてくれるんです。大歓声の中、大集団を率いて上る自分。あるいは、もっとも苦しくなるゴール付近では、ライバルたちがひしめく集団から飛び出し、先頭でゴールに飛び込む俺…。そんな時にカッコ悪いフォームじゃ、まずいですよね? 妄想力を発揮しつつ、美しく効率の良いフォームに順応してください。

(編集 佐藤喬・写真 米山一輝)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 「宇都宮ブリッツェン」テクニカルアドバイザー、「J SPORTS」サイクルロードレースレース解説者、「ツアー・オブ・ジャパン」副イベントディレクター。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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